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24:02:10 鎖

三人称視点


 「おら、ちゃきちゃき歩けよ」

 「そ、そんなことおっしゃられましても、服が……」

 「あぁ? 何言ってんだよ、誰がてめぇに服着せるなんっつた?」

 「そんな!?」

 「ったくよぉ……おめぇは、オレと二十時間一緒じゃねぇと、首がぶっ飛ぶんだろ? だったらよぉ、オレがいなけりゃおめぇは死ぬんだ。別にいいんだぜ、死にたきゃよ?」

 「ぅ……」

 「四つん這いにして歩かせてねぇだけでもありがたいと思って欲しいぜぇ。服なんてもう使い物にならねぇんだから、べつに持ってる理由もねぇしな」


 口論をする男と女。

 男の名は、女郎花おみなえし和彦かずひこ。女は、鈴白伊菜穂。

 優位に立っているのは和彦であり、一方的なその要求を、伊菜穂は呑むしか無かった。


 ――『20時間以上別プレイヤーと行動を共にする。なお、対象のプレイヤーと50m離れた状態で1時間たった場合、やり直しとなる。行動を共にするプレイヤーを登録するには端末同士を接続すればよい』


 というものが、伊菜穂の首輪の装置を解除する条件だった。

 あの夜の後に、和彦が勝手に女の端末にチップをインストールしたのだろう。その結果として、伊菜穂は和彦から離れるということが出来なくなったのだ。

 いくらそれが意図したものではないといえ、あまりにも不遇。運が悪いとしか、言えなかった。


 「わかり……ましたわ」


 現状では、どうしようもない。

 何も持たされず、何も纏わず。

 端末も食料も和彦に取り上げられ、彼の腰に提げられている拳銃が鈍い光を反射している。

 力で勝つなど不可能な事であるのに、さらに銃を持っていてはどうしようもない。

 さらに、生きるためには和彦と一緒にいなければならない。

 そしてその状態を、この男が利用しないわけがない。

 伊菜穂は、思い出したくないことを思い出し、吐き気を覚えた。

 たった一夜にして、自分の中から何かが失われた。そして今この状態からも。

 従うことでしか生きる術を見いだせず、反抗すれば何がまっているかわからない。

 恐怖故に、伊菜穂は逆らうことが出来ず、またその結果は和彦の望んだものだった。


 「それにしても、この建物には俺以外のヤツ等もいるんだよなぁ」

 「っ!?」


 にやにやと笑う和彦の言葉に、伊菜穂は羞恥に顔を紅く染める。

 そうだ。この建物には、自分とこの男以外にも人はいるのだ。もし、その誰かに見られるなど……。


 「加えて、これはゲームなんだってなぁ? っつうことは、夜の事も、今この状態も、誰かに見られてるってことなんだよなぁ?」


 さらに続けられた言葉に、伊菜穂の心は挫けそうになった。

 見ているのは、和彦だけではない。どこからで、誰かに見られている。

 それを自覚して、手を、腕を、出来る限り使って、自分の大事な部分を隠す。

 今更遅いとも言えるし、逆にこういった行動をすることで、インモラルを醸し出してもいるのだが、今の伊菜穂にそんなことは考えもしていなかった。


 「おい、何隠してんだよ?」

 「ひっ」


 獣を思わせる和彦の眼が、伊菜穂を射抜く。

 さながらライオンに睨まれたウサギか。圧倒的に強者と弱者は今、生まれてしまっている。


 「腕を外せ。確信じゃねぇ」

 「………………」


 銃をちらつかせる和彦に対して、伊菜穂に拒否権など存在しなかった。

 羞恥に身をやつし、腕を下げる。

 本当に、今すぐにでも消え去りたい。それが、今伊菜穂の内心を埋め尽くす。

 和彦の瞳が、伊菜穂を捉え、その表情は嗜虐的だった。


 「あー、やっぱ我慢なんねぇなぁ。ちょっとよ、今から咥えろよ」


 立ち止まると、和彦はベルトをはずし、ソレを取り出した。

 赤黒いソレが、猛々しくそそり立っている。

 伊菜穂はそれを目にして、小さな悲鳴をあげて後退る。しかし、それだけであった。


 「早くしろ」

 「はい……」


 言われるがままに、伊菜穂はするしかなかったのだった。

 跪き、己のソレに顔を寄せていく伊菜穂を見る和彦の顔は、愉悦に塗れた男のものだった。



伊菜穂の端末――番号は『Q』。

和彦の端末――番号は『7』。

首輪の解除条件――伊菜穂の首輪の解除条件は『20時間以上の別プレイヤーと行動を共にする』。

ソレ――有性生殖を行う生物に必須なモノ。会話などでは羊の腸詰肉などか銃器に例えられていることもある。

食糧――主に乾パンだとかの保存食や水。このゲームにおいては非常に重要。


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