金魚
金魚
私は一匹の金魚を飼っていた。名前は特になく、金魚と呼んでいた。
いつから飼っていたのか覚えていない。多分小学生低学年の頃からなのだが、はっきりとは判らない。
その金魚は長生きした。何にもない、小さな水槽に水だけ入れて、餌も忘れる日があったものの、長生きした。飼い主である私自身、その生命力には驚かされていた。事実、その粗末な水槽で飼われてきた幾匹もの金魚たちは、その一匹を除いては例外なく数日ほどで息絶えてしまったのだから。
それ故に、私はその生き残った金魚に対し、深い愛情を抱いていた。
ある時は絵に描き、ある時は意味もなく長時間眺めた。
しかし、どれだけ語りかけても、その瞳を覗いてみても、金魚が何を考えているかは判らなかった。
私は罪悪感に駆られていたのだ。
他の家で飼われる金魚は、もっと整備の整った水槽に入れられているのに、ごめんな――と。
そして……いつだったろうか。ある日、金魚は苦しそうにもがき始めた。
水槽の下に沈んでしまい、力の限り上がってくるのだが、ふ、と屍のように動かなくなり、底へと落ちてゆく。そういったことが何回も繰り返され、果てには、もう上がってくることはなくなった。
金魚はほぼ一生を過ごした檻の底で、痙攣するかのように泳いでいた。
何度も何度も、止まっては私は張りつめた。
死んでしまうのか? なぁ、金魚。
そして金魚は死んだ。あまり詳しく覚えていないが、私がカップラーメンを昼飯として食べているとき、死んだ金魚の入った水槽を父が手に庭へと向かったのだ。私は言いようのない感情に支配され、ただただカップラーメンを口に運ぶことしかできなかったのだ。この金魚の死については、当時、日記に記したはずだから、もっと詳しい状況は、日記を見れば確認できる。あとで見てみよう。
金魚が死んでからというもの、いつもそこにあったはずの水槽はなく、私はさびしい思いをしたものだ。本当に悲しかった。何せ、十年ほどの付き合いがある金魚がいなくなったのである。違和感はしばらく消えなかった。
何故だか、今、ふと思い起こしたのだ。
私の最愛のペット、金魚のことを。
どうもみなさん。raki&竜司の竜司のほうです。
結構前に一気に書いたこの小説。偶然発見したのと、最近新作が投下されていないとのことで、投稿しました。
おちはありませんでしたが、これは私の実話です。
忘れることはないでしょうね。私はあの金魚のことを。