凍話6-裏社会の情報入手…そして刺客再来-
充は、亡くなった森村の葬儀の帰りに非通知の着信に出た。その相手は…、闇の“裏社会”で権力を奮っている謎の男からだった。男は充達にこの事件から手をひけと言われるがそれを無視する。
充は事件の情報を得るためにある街の情報屋に入った。そこには、とても信憑性のない胡散臭そうな青年がいた…
充は、意識が戻り目を開けるとそこは病院のベッドの上だと解った。隣のベッドにはまだ意識が戻らない零葉が眠っている…。
充は起き上がろうとするが、激しい痛みが全身に伝わり出来なかった。
「青葉さん…。」
零葉は意識を取り戻した。次の瞬間、ワッと大泣きしていた…。
充は、さっきの爆発事件の詳細を知るために看護師を呼び、ラジオをつけてもらった。
「キュイ…キュイ……今日、午前11時47分頃に東京・豊洲のドック跡地の倉庫で爆発が起こり、倉庫は炎上。焼け跡から男性の遺体が発見されました。被害者は森村隼人さん21才と判明。警察は事故と事件の両方で捜査を進めています…」
充は、静かにラジオを切った。
「森村…ホントに死んじまったのかよ…」
充は、何も出来なかった自分に不甲斐なさを感じた。隣の零葉を見ると、布団にくるまってさめざめと泣いていた…
森村隼人の葬儀に、二人は何とか出席出来た。二人は彼の最後の雄志を見て、斎場を後にした。
斎場から出てからすぐ、充の携帯に非通知の着信が掛ってきた。充は、恐る恐る電話に出た…
「もしもし…、青葉充だな。」
声から人物を判断するのは難しいが、年齢は4〜50代ぐらいの渋みが掛った声だ。しかし、充は瞬時に思った。何故、自分のフルネームを知っているのかと。
「誰だ…アンタ。」
「ふっ、まぁ…あの豊洲の倉庫爆発を命令した裏社会の者と言えば良いか。あのガキは私らの周りでチョロチョロして目障りだったからな、ちょっくら消したまでさ。まぁ、重要な“モノ”を失いたく無かったんでね…。さて、君らもこの事で良く解ったろ?この事から早く手をひきなさい、そうしないとどういう事になるか…解るよね?」
それぐらい充は承知だった。裏社会で権力を奮う人間は、何をしでかしたとしても力で揉み消せる…例えそれが犯罪だったとしても。しかし、充は言い放った。
「嫌だね、これでも漢だから諦めが悪いのさ。真実を明かし、お前らの正体を暴いて警察のブタ箱(監獄)の中にぶち込ませてやるよ。」
中年男は鼻で笑いながら言った。
「ふっ…君なら解ってくれると思っていたが…。知らないぞ、どうなったって。後が無いのは君達の方だからね。それじゃ、少しでも生き延びられる事を神にでも祈っておきな。」
そこで、電話は切られてしまった。とりあえず、充は解った事を挙げてみる。犯人は裏社会の人間で巨大な権力を持っている。そして重要な“モノ”がバレないように死守している事…
充は事件の情報を手に入れる事にした。まず、隼人の件で衰弱しきっていた零葉を一旦彼女の実家に帰し、埼玉のある街の噂で流れていた情報の確実な情報屋を捜すため、現地の路地裏を果てしなく歩き回りようやく見つけた。
外観は情報屋だとは解りにくくなっている。情報屋ならそりゃそうだなと充は思った。とりあえず充は中に入ってみた…。
中はあまり片付けられておらず、大量の書類などが棚やテーブルなどが覆われていた。充は人が居ないのを気付き、呼んだ。
「あのー、誰かいませんかー!」
充は声が良く響いた、防音ガラスだから外に聞こえない分、通るんだなと思った。すると突然奥から、
「うぉぉぉぉぉ!!!」
と雄叫び声的な声を上げながら、一人の青年が現れた。充は唖然とした…彼の風貌は一般人から考えて有り得ないほどダサいのだ。しかも、今起きたのか髪をボリボリと掻いて面倒臭そうに立っているのだ。とてもじゃないけど信用性ゼロに見える。ホントに大丈夫だろうか…充は段々と不安になってきた。青年は口を開いた。
「お客さん、困り事ですな。しかも事件系の事で…」
「えっ?!」
充はひどく驚いた。何故、一言も事件と言ってないのに俺が事件の情報を欲しがってると解るんだ、と。
「お客さん、ありますよありますよ!汐留の事件と豊洲の事件の情報をぎっしりと!いやぁ、情報を手に入れるまで時間が掛りましたよー。」
何者だよ、アンタ?エスパーか?ヒトの心を読み取れるのか?それともストーカー?…充はこれ以上考えるのを止め、青年に言った。
「そうです、俺が欲しいのはその二つの事件の情報なんです。」
すると、青年はニヤリと笑い、
「やはり。やっぱりそう思いましたよぉ…情報料は少々値が張りますよぉ。」
ゴクリ…一体幾らなんだ、うん百万単位か…いや、裏社会が関係してるからざっとうん千万を越えるか…。それだと一生掛っても払えない額だなと充は思った。すると、青年は言った。
「今回は50万で手を打ちましょう。」
安っ…充は拍子抜けしてしまった。こんな危ない事件なのに情報料が安いんだ、と疑問に思った。
「えっ…そんなに安くて良いんですか?」
と、充は問い掛けた。青年は、
「見たところ…あなた学生だし、そんな法外な料金なんて採れませんよぉ。」
と、ヘラヘラと笑いながら言う。
ここはホントに情報が正しいのかと充は信憑性を疑ったが、この後彼から聞いた情報に充は信憑性があると判断出来た。充は、情報屋に感謝し、
「金は八幡ビルに請求しといて下さい。」
「あいよ。」
最後まで面倒臭そうに見えた青年に別れを告げ、外に出た。
充は情報屋から情報をたんまりと貰い、アイツらに勝てる確証を導き出していた。充は、急いでその情報を零葉に伝えようと駅に向かおうとした瞬間…
「おい、やっと見つけたぜ…充!」
後ろを振り返ると、そこにはあの草間がバタフライナイフを持ち、ガムをクチャクチャと噛みながらつっ立っていた…
次回、充は草間と遂に勝負をし、そして裏社会のボスに直接対決しに行く…。果たして事件の黒幕とは誰か?




