凍話1-出会い-
頭脳・容姿共に優秀だが周囲から嫌われ者扱いを受ける主人公と、おっとりしていて一見、馬鹿そうに見えるが独特な雰囲気を醸し出す一人の女子大生…。二人の出会いは偶然であり、必然なのかもしれない…
日本に寒波が押し寄せ、凍てつく12月の中旬。
東京・汐留のビル街では、クリスマスシーズンに向けて巨大なツリーへの豪華な飾り付けが行われており、美しいイルミネーションが近々完成されようとしていた。
クリスマスに近付くにつれて、沢山の恋人達がその完成間近のクリスマスツリーの周辺に溢れていた。
???:
「…クリスマス、か。」
そう呟く、一人の青年。
彼の名は、青葉 充。 都内の大学に通う21才である。
頭脳明細、運動神経も文句無しだが、特には何事もやってこなかった。 顔はいわゆるイケメンの部類に属し、188cmと長身で、学業と共に容姿面が一目置かれている存在だった。
しかし、性格に難があり、周りの人からも嫌悪され、次々と彼から人が離れていくのだった…。
彼の性格、それは人を信用せず、冷たくあしらい、時には自分の良いように利用する。 更に、リアリズム(現実主義)であるので、普通に人の夢や希望を幻想などと言って貶し、相手の精神を無碍もなく傷つける。 そして、自分より下と思う者を陰で嘲笑するなど、冷酷極まりない性格だった。
彼は元々、そのような性格では無かった。ある事件によって彼の性格、及び彼の人生観が大きく変わったのだった。
華やかなイルミネーション達が彩っているが、夜が深くなるにつれて、また一段と冷え込む。ツリーを一蔑し、青葉はゆりかもめの駅に向かった。
その途中、不意に誰かとぶつかってしまった。 青葉は倒れなかったが、相手方は尻餅をついている様子だった。
青葉は相手への気遣いを、心底面倒臭いなと感じていたが一応、
青葉:
「大丈夫ですか?」
と、声を掛けた。 良く良く見てみると、自分と同じ学生だと気付いた。
???:
「私は大丈夫ですぅ、ごめんなさい。私、大学に提出するレポートを歩きながら見ていて、それでよそ見してしまい…。あなたこそ、怪我はありませんでしたか。」
その女子大生が顔を上げた瞬間、充は衝撃を受けてしまった…。
青葉の心の声:
「嘘だろ? とても良く似ている、お袋の顔と…。」
???:
「あのー、どうしました、私の顔に何か付いてますか?」
彼女の言葉に、ふと我に返った青葉。
青葉:
「いえ、何でもありません。」
何事も無かった様に振る舞った。
???:
「そうですかぁ。」
そう言った女子大生は、路上に散らばったレポート用紙を拾い始めた。 悪気を感じたのか珍しく、青葉は拾うのを手伝っていた。 そして、拾い集めた用紙を彼女に渡した。
???
「助かりましたぁ、ありがとうございました! 私、茅場 零葉って言います。 あなたは…。」
青葉:
「別に、名乗る必要は無いと思いますので失礼します。」
冷たく答え、青葉は一方的に話を終わらせて駆け足でその場を去った。
青葉の心の声:
「茅場零葉…、どこかで聞いた事がある名だな。」
そう考えながら、青葉は帰路に就こうと汐留駅へと向かった。




