プロローグ5
悠佳が言っていた待ち合わせ場所。
それは町外れにある広場のことだった。
昔は路上ライブが行われる場所だったその広場は、今ではすっかり寂れて野良猫が住み着いている。
その場所は悠佳のお気に入りの場所だった。
寂れた広場にはもう誰も来ない。
静かな場所が好きな悠佳は、そういう人気のない場所を探しては行きたがる。
麻央も決して人混みが好きなわけではないから、悠佳の意見に賛成して二人の待ち合わせ場所はその広場になった。
――――――広場についた。
でもそこには悠佳も居なければ人っ子一人いない。
時間が時間だけに、人気のなさにより拍車をかけていた。
広場に幾つかあるベンチの1つに腰を下ろして、麻央はふぅ、とため息をもらした。
悠佳から連絡をもらって、慌てて家を飛び出した結末がこれだ。
時間に呑気な悠佳は滅多に待ち合わせの時間までに来ない。
ドタキャンを食らうことはないが、かなり待たされるのが悠佳との待ち合わせだった。
麻央は視線を空へ泳がせた。
雲一つ無い夜空は、わずかな星をちりばめて、静かに麻央を見下ろす。
そういえば、悠佳に初めて会ったときも、こんな風に星の少ない静かな夜だった。
雲一つない、絶好の天体観測日和の空なのに、惜しいことに見える星がとても少なくて。
悠佳と一緒に、顔を見合わせて笑ったあの日を、麻央は昨日のことのように覚えていた。
……そう。
一年前のあの日、悠佳と初めて会った日のことを。