二人の行進曲2
自分でも馬鹿らしかった。
男が男に恋するなんて。
自分でも呆れてしまう。
世の中にはあれほど女が溢れかえっているのに。
男を、恋愛対象として見ていた。
悠佳がそちらの道に興味があるのか、麻央は知らない。
まず年齢的に女に興味があるはずなのにない悠佳が、そもそも恋愛に意欲があるのか全く判らない。
故に、『もし嫌われたら』、などという考えが頭を支配して離さなくなっていた。
いつの間にか、知らないうちに自分は悠佳に惹かれていた。
「…どうした?麻央。眠れないか?」
麻央が布団に寝転んだのに目を開いたままなのに気付いたのか悠佳がそう声をかけてきた。
「ん……眠れない」
麻央は寝返りを打って悠佳の方を向いた。
「眠れるように何か話してよ」
そう、ソファの上の悠佳に声をかければ。
悠佳は、
「…幼稚園のガキかお前は」
と言って小さく笑った。
ガキ、と言われて麻央はうるさいな、と少し頬を膨らませた。
「じゃあもういいよ、寝る」
「…眠れるのか?」
「うん、寝る。おやすみ」
麻央は布団を肩まで引っ張り上げた。
「…おやすみ」
まもなく、悠佳がそう答えて、毛布を引き上げる音がした。
麻央は寝返りを打って、悠佳に背を向けた。
「……………………」
――――……眠れないから、手を握って。
そんなふうに素直にいえたら、どんなに幸せだろう?
いや、むしろ、そんなことを当たり前に伝えあえるのなら、他には何もいらない気がした。
………バカだ。
―――――否定。
自分の感情が馬鹿みたいだ。いや、本当に馬鹿だ。
男に恋するなんて。馬鹿だ、本当に。
「………………」
麻央はそれを認めるつもりで、ぎゅ、と目を閉じた。
それから10分以上たった後に、ようやく部屋の中に二人分の寝息が聞こえ始めた。
―――――――「………っ、さみ……」
それから数時間が経った頃、悠佳は突然目を覚ました。
目を覚ましたわけは、トイレではなかった。
いきなり肌寒さに襲われた。
やれやれ、と悠佳は息をつく。
また窓を閉めるのを忘れていた。
そこから入り込んだ夜風が、毛布から突き出した肩に冷たかったのだ。
ソファから体を起こして、悠佳は窓を閉めようと立ち上がった。
時計を見れば、午前6時。
二度寝ができない派の悠佳は、そろそろ起きても良い頃か、とソファに寝転がるのを諦めた。
ふと、使用権利を有しているが占領されているベッドに目を向ければ、麻央はまだ気持ちよさそうに眠りの中に足をつっこんでいた。
「……………」
麻央の無防備な寝顔を見つめながら、悠佳は小さく息をついて麻央に近付いた。
「…んな無防備な顔で寝るんじゃねぇよ……」
聞いてんのか、おい。
そう言って、軽く麻央の頬に指を滑らせて。
聞いてるわけないか、と苦笑した。
それから、はっとしたように麻央から手を離す。
―――――「……良い年して何やってんだろうな、オレは」