皆知っていることを必死で隠すことは本当に恥ずかしい。そして、虚しい。(タイトルが長いと読む気がなくなる)
タイトル長くてすみません。
「トォ~シくぅ~ん」
あれ? 近くで、チーちゃんの声がする。……あっ、俺、鼻血出したんだ。恥っ。
「……」
俺は無言で起き上がった。
「あ、起きた」
チーちゃんの声を無視して、周りを見渡す。 俺の部屋だな。
「なんで俺の部屋わかったの?」
「なんでって、昔はここでしか遊んでないじゃん」
「……だね」
俺は昔のことを思い出して頷いた。つーか、何か俺大事なこと忘れてないか……?
「風呂、入った?」
「入った。トシのことここに運んだ後」
「ふぅ~ん」
「何? 一緒に入りたかった? うんうん、若いなぁ」
チーちゃんの妄想が変な方向にもっていかれる前に、止めとかないと。
「はいストップ。俺はチーちゃんと一緒に入りたくない。もういい大人じゃん」
俺は発言終了後に自分の発言をおもいっきり後悔した。
「おっ。やっぱ、気になっちゃうお年頃?」
「はいはい。そうですよ、僕は気になりますよ!」
開き直った俺を見て、チーちゃんは何か物足りなさそうだ。
「……つーか、学校、どうすんの?」
俺は一番の疑問を思い出した。
「どうするって、普通に通うに決まってるじゃん」
「いや、そうじゃなくて……。一緒に出ると、バレるよ?不味いんじゃないの。一応コーチと生徒なんだからさ」
別に、俺は周りからどんな目で見られてもかまわないが、プライドの高いチーちゃんのことだ。気にしてしまうだろう。
「何何? 一緒に行きたかったの?」
「ハァ。もういいよ、面倒だし。明日考える。じゃ、チーちゃん。俺は寝るから」
そういってチーちゃんに手を振る。
「うん、お休みね。明日、朝練いくでしょ」
「うん……」
駄々をこねると思っていたけど、チーちゃんは意外とすんなり部屋を出て行った。やっぱり、時間の流れは凄いと思う。あの、チーちゃんをここまで進化させるんだから。
翌日。俺はケータイの目覚まし機能のおかげで目を覚ました。
「ん~……」
朝は中々頭が働かない。時間的には5時30分に起きれば間に合うんだけど、人より頭の回転が遅い俺は5時に起きないといけない。
「……」
ただボーッとするだけの時間は退屈なはずなのに、朝のこの時間はめっちゃ短く感じる。朝、怖っ。
「……何か、忘れてる気がする」
俺はこのとき完璧に忘れていた。『あの人』のことを。
「やべっ!どうすっか決めないと」
俺は完全じゃない頭をフル回転させると、寝室に足を運んだ。
「むにゃー……ブフッ。グフフフフフフフ」
こんな気持ちの悪い鼾(いびき)を響かせているのは、そう。チーちゃん。
「どうすっかなぁ」
俺はそこである策をとった。
――朝早く行こう!!
俺はそう思いつくとすぐに荷物の整理を初めた。
「朝飯は……朝練の後でいっか」
俺は1人言を言うとリビングに書置きを残した。
『Dearチーちゃん 今日は先行くね。関係バレたくないでしょ? 俺はばれたくない。つーことで、先に行くね。学校で。 利信 』
俺は変な誤解をされないか心配な文面を読み直すことなく、玄関に向った。
「いってきま~す」
多分チーちゃんは聞いてないだろうけど癖で言ってしまう。
「おはようございます!」
俺は部室に着くと元気に挨拶をした。中では、真剣な空気が漂っていた。
「何かあったんですか?」
俺は大鉄先輩を始めとする部員の先輩に挨拶を交わしながら聞いた。
「あぁ、村井か。実はな。今度の全国高校総合体育大会卓球競技予選大会のトーナメント表が出たんだけどな」
大鉄先輩の言葉を聞いて、俺は少し疑問に思った。全国高校総合体育大会卓球競技大会は、1年に1回。春と夏の間に行われる日本高校大会最大の大会だ。それなのに、秋風が少し吹いているこの時期にもう予選? それに、大鉄先輩、服部先輩、寿先輩は来年の春には卒業するし……。
「村井、お前、なんでこの時期に予戦会をするんだ? って思ってるな。いいか。この地区は特別でな。今の代で本戦のトーナメントを決めるんだ。結局、先輩が弱ければ話にならないってことだな」
「あぁ。だから今なんですね」
「そーゆーこと」
「おのぉ、俺は大鉄先輩に聞いたんですけど」
大鉄先輩に聞いたのに荒木先輩が答えたのでついツッコんでしまった。
「うっせーぞ、村井ぃ」
荒木先輩は俺の首を掴むと緩く締めてきた。
「痛いですって! すみませんって!」
「よろしい」
俺が誠意を込めて謝ると意外なほどまでに簡単に離してくれた。
「つーか、城峰コーチまだ?」
森崎先輩が俺に向って聞いてきた。俺は一瞬動揺したものの、上手く隠すことにした。
「なんで俺に聞くんですか? 俺知らないですよ」
「?」
俺の答えに、先輩達は全員頭に『?』をつけていた。
「知らないって……一緒に住んでるんでしょ?」
小さな声で服部先輩が俺の緊張感をMAXにする発言をした。
「なん、で?」
俺の疑問に、大鉄先輩が答えた。
「城峰コーチが来る前に言っただろ。城峰コーチがここに来るのはお前のお母さんの代理とコーチをするためって。じゃないと帝國大学専属コーチが、高校に来るわけないだろ?」
は……? 俺、初耳ですよ。何言ってるんですか、大鉄先輩?
「いや、俺聞いてないですよ」
「そだっけ? なら悪い! 言うの忘れてた。ハハハッ」
「笑い事じゃないですって! 俺、どうやって隠すかって必死になって考えてたんですからぁ」
俺がそんな弱音を吐くと、先輩達は声を上げて笑った。
「そうだよ! 酷いじゃん! 置いていくなんて! 村井くん!!」
そこには、笑い声とともに聞きなれた声が聞こえてきた。
「チー――城峰コーチ……」
俺はもう隠す必要がないといわれても何となく気になって『チーちゃん』と呼ぶのは止めた。
「「「「「おはようございます! 城峰コーチ」」」」」
「うん、おはよう」
俺を取り残して、皆は回っていた。
えっと、やっと恋愛観に入ったと思います。
ベタベタな話になると思いますが、よろしくお願いします。
メッセージ待ってま~す!