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心理戦。

 先生の瞳を、ジッと見つめる。どう見ても、動揺しているのが分かる。

「思い出した……っていうわけでもないみたいね、その表情だと……」

最近の教師は心理学を習っている、と聞いたことがるが、三里先生もそうなんだろうか? とにかく、三里先生は俺の心を読み取った。

「はい……」

「なんで、黙っていたの?」

やっぱり、その質問がきたか。

「もっと早く教えてくれれば、解決も早いかもしれないのに……」

「すみません。でも、今から話します」

「話をしてくれるのならばいいわ。お願い」

俺は、生唾を飲み込んだ。

「犯人は、簡単に言えば、この学校の生徒です。俺たちから見れば、先輩に当たります。名前は、五条 裕太(ごじょう ゆうた)先輩です。俺、倒れるときに確実に見ました! 絶対です。それに、多分、俺に因縁があります。色々な人を狙ったのは、捜査を拡散させるためだと思います」

「因縁? あっ、こなだの、遠藤さんが告白されて……」

「はい。まだ、推測の段階ですが。十分だと思います」

「……」

三里先生は、少し悩んでいるようだった。だけど、俺にとっては好都合だ。まさか、学校の教師である三里先生が俺の言葉を、たとえ真実だとはいえ、ここまで信用してくれるなんて……。

「もしかして、次に狙われるのは、」

「遠藤だと思います」

「でも、それを警察の方に言っても、まだ何も怒っていないから扱ってすら貰えない……」

この先生、推理小説好きだな。俺はそう思った。

「そうです。だから、俺たちは警察に言えませんでした」

「正直、あの子は、五条くんはそこまで因縁深い生徒かしら? 少なくとも、先生方の信頼は大きいわ」

「そりゃないっしょ先生! 俺のことはすぐに疑うのに、その、五条とかいう奴は疑わなってこおかよ!?」

憲吾が、大きな声で叫んだ。

「そうは言っていないわ。ただ、この学校の生徒が犯人という仮定もなかっただけ。……五条くんに直接聞いても、無駄よね?」

なぜ、無駄だとわかっているのに、?、をつけるんだろう? 俺は先生という職業に疑問を感じた。だけど、それは俺も考えていたことなので、すぐに答えは出た。

「はい。俺もそう思います。だから、一旦この件は俺に任せてくれませんか? ちょっと、先生にも協力してもらいますけどね……」

「協力?」

「はい。ここに、五条先輩を呼んでください。自白させます」

「できるの?」

やっぱり、そこは疑問に感じるらしい。俺自身、まだ可能性の段階だ。

「可能性はあります。そのかわり、失敗したら終わりですけど……」

「けど?」

「先生、知ってますか? 卓球って、頭も使って、心理戦なんですよ?」

「……え?」

俺は、今頭で描いている作戦を、2人に話した。

「憲吾は、外で待っていてくれ。1対2じゃ、スポーツマンシップにならない」

「スポーツじゃねーじゃん」

「これは、心理戦だからさ」

俺は、五条先輩のクラスを選択した。

 少し時間が経って、五条先輩が教室に入ってきた。

「……なんでお前がここにいるんだ?」

「先輩こそ、なんでいるんですか?」

俺は心理学にそこまで詳しくないからわからないけど、人間ってのは驚いているときには冷静な判断が若干鈍る。今、五条先輩は驚いているはずだ。自分の忘れ物があるから取りに来いと言われて、教室に入れば自分が刺した相手がたっている。

「俺は、……忘れ物を、しただけだ!」

「まぁまぁ、そう怒らなくてもいいじゃないですか?」

「怒ってねぇ!」

完璧に冷静な判断ができていない。最初に自分で出した質問を軽く無視している。

「そぉいえば先輩。最近、通り魔出ていませんね。俺と憲吾の被害以降……」

「それが何かあったのか?」

「いや、それだけです。でも、嫉妬しますねぇ。俺たち以外にも被害があったなんて。まるで、俺たちを狙ったからもう終わりにしよう、みたいなのに」

「何が言いてぇんだよ?」

俺は自分の口調が相手を怒らせる口調だということを理解していた。そうしなければ、誘導尋問にならない。

「犯人、捕まったすですよ。今日」

「!? マジ、かよ?」

「どうして驚くんですか? 捕まったんだから、普通は安心いてからの驚きでしょ? まるで、犯人を知っているみたいな動揺っぷりですね」

五条先輩の動揺はどんどん強くなる。犯人である自分は捕まっていないのにも関わらず、捕まった。そんな未知の情報は、人間を興奮させる。

「でも、その人は犯人じゃないんんですよ。だって、先輩が犯人でしょ?」

「……だったら、なんだよ?」

あれ? こんなにも早く認めるとは思っていなかった。俺の原稿も、まだまだだな。

「先輩、認めるんですか?」

「う、うるせぇ!!!」

怒りに身を任せたか。それは予想外……だけど、準備はある。

「憲吾!」

「おっしゃ! 任せろ」

憲吾が廊下から飛び出し、五条先輩を殴る。

「痛っ!」

「まさか、本当に五条くんが、犯人だったなんてね……」

「あっ……あぅ」

五条先輩は、学校にいた先生方を見て、諦めたらしい。外からは、サイレンの音も聞こえる。

「利信! お前、やっぱり凄ぇよ!」

「いや、こんなに上手くいくなんて、思ってなかったけどな。バカで良かったよ」

「だったら、頭が良くなるように、もう1回、ぶん殴るか?」

「したら、今度は憲吾が捕まるぞ?」

「ありゃりゃ。そしたら今度こそは少年院行だわ」

友達に、そういう奴はいてほしくないな。

 俺と憲吾は、役に立たなかった警察に

「なんでもっと早く言わなかったんだ!?」

と言われた。そのときに、憲吾が

「役立たずだったくせに文句言うなよ」

といったが、警察は聞く耳持たず、だった。

 次の日。学校に向かい、席に座る。まだ、みんなは犯人を知らない。捕まったことは知っているんだろうけど。

「遠藤」

俺は遠藤に声をかけた。

「良かったな」

「? なんで?」

まぁ、そうなるわな。

「なんでも」

遠藤はまだ不思議がっていたが、チーちゃんが入ってきたので、追求はされなかった。

「はい。今日はビックなニュースがあります。昨日捕まった通り魔は、この学校の生徒、五条くんでした。今日は終わり!」

そんなんでいいのかよ……。こんな、ホームルーム、校長が見たら、驚くだろうな。

「ありがと」

隣で、遠藤が小さく言った。たぶん、聞こえないように言ったのだから、何も言わない。

 追記。昨日、家に帰ったらチーちゃんに嫌になるくらい褒められた。まぁ、褒められて嫌な人間なんて、いないんだろうけど。

 これで、やっと帝國大学との勝負に本腰を入れられるようになった。そして、カレンダーは12月の中旬を少し超えた頃だった……。


小説なので、こんなに簡単に白状したことには突っ込まないでください。でも、初めての心理戦を書いた気がします。これで、少しくらいは面白くなってほしいものです。

さて。これで本当に帝國大学との勝負になりましたけれども……。季節感全くなくてすみませんでした。これを始めたときにはキチンと秋だったんですけれど。何時の間にか春になってしまいましたね。

では、次回はもう少し早めに更新しますので。 2011年3月16日12時17分。

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