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チーちゃん?

 「どはっ」

俺は家に着くとリビングに城峰コーチを下ろした。

「あれ? ここはどこ?」

やっと酔いが覚めたらしい城峰コーチがキョロキョロしながら辺りを見回した。

「ここは俺の家ですよ、城峰コーチ」

「あぁ、トシの家か」

「……」

突然の発言に、俺は言葉という言葉を失った。

「なんですか? それ」

「何って、幸子さんから聞いてないの?」

「は?」

俺は状況がわからず混乱した。なんで城峰コーチが俺のことをトシって呼ぶのか、何でお母さんのことを知っているのか。

「私のこと覚えてない? 帝國大学付属病院第三外科医チームA 村井幸子班副班長兼帝国大学卓球部元コーチですよ」

「……あぁーーーー!!」

俺はその人のことを思い出して絶叫した。そうだ、この人はお母さんの班の副班長だ。前にも家にきたことがある。確かそんときに――

「いやぁ、懐かしいねぇ。一緒にお風呂に入ったりしたトシがもう高校生かぁ」

「……言わないでくださいよ、それ。記憶抹消してたんですから」

「記憶抹消って……。というよりも! 敬語は止めてよね。この家ではさ」

「……うん」

この人は自分よりも弱い人間には凄く強い。そして、幼き頃よりこの人と一緒にいるから分かる。この人は、俺には最強だ。この人の命令には逆らえない。

「あっ。今日から私、幸子さんの代わりになったから」

「はぁ?」

「全く、さっきから疑問符ばかりだね。トシはさ。幸子さん、大阪の病院で働くことになったの」

え? 今何と仰りました? 大阪の病院って……。

「えぇーーーー! 嘘でしょぉ?!」

「はい電話」

城峰コーチ改め千鶴さんは――

「あっ、私のことは昔みたいに『チーちゃん』って呼んでね」

「……うん」

チーちゃんは、俺にケータイを渡した。

『もしもし』

電話越しに、お母さんの声が聞こえる。

「もしもし、じゃねぇよ! 何で大阪の病院に転勤すんだよ?!」

『あぁ、きいたの。ということは、千鶴ちゃん着たんだね』

ノホホンとお母さんはいうが、俺にとっては重大なことだ。

「あぁ来たよ。コーチとしてね」

『うん。コーチ兼お母さん、ね」

「どうゆうこと?」

『本当に疑問符多いわね、利信は』

「さっきチーちゃんにも言われた」

『私が転勤している間は千鶴ちゃんに任せたから。よろしく。私、会議入っちゃったからさ』

「うん、お休み」

『お休みって、今から会議だっつーの。それと! 千鶴ちゃんはナイスバディだからって犯しちゃダメよ――』

お母さんの言葉が終わる前に俺は電話を切った。 電話が終わった俺がチーちゃんにケータイを返すと、今までの通話を聞いていたのか、チーちゃんがニヤニヤしていた。

「犯す?」

「犯すわけないでしょ。チーちゃんは、お姉ちゃんみたなものなんだからさ」

「お姉ちゃんじゃなくてお母さんでしょ?」

「そんな歳じゃないじゃん」

「嬉しいこというなぁ」

チーちゃんは満面の笑みで言った。

「俺、疲れたから風呂入るね」

「あれ? もう沸いてるの?」

「今日学校来る前にタイマーにしといた」

「偉い!」

そんなチーちゃんの言葉を受けながら、俺は風呂場に向った。

 風呂に入ると、今日の疲れがドッと出てきた。

「ふぅ。今日は色々ありすぎ」

俺は今日の出来事を思い返してみた。

「そーいや、チーちゃんって何歳だ?」

俺は計算した。確か、チーちゃんのお父さんが俺のお母さんと研究発表したときにはじめて会ったんだから……俺はあの時5歳で、チーちゃんは……14歳だったなぁ。

「つーことは、今は24歳かぁ」

俺はそんなことを考えていると、近くで物音がした。

「もしかして……チーちゃん?」

「バレちゃった?」

「何してんの?」

「お風呂、昔みたいに入ろうと思ってさ」

チーちゃんはバスタオルを着けた状態で、お風呂に入ってきた。 普通、エロゲーとか、エロ漫画とかだったら、ムハムハ的な展開になるんだけどさ……。

「ブハッ!!!」

俺は初めて鼻血を噴出した。

「キャー。どうしたの、トシ! トシィ!!」

気が遠くなる一方で、チーちゃんの声が聞こえた。

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