渡邊 諒
俺と憲吾は、あれから大部屋に移された。ま、元々あの部屋が大部屋らしいんだけど、緊急階から通常病室に移った。最初の方は刑事だのなんだのの質問責めがあったが、俺と憲吾はどっちも先輩が犯人だってkとおを言わなかった。まだ、時ではない。
「いや、そうじゃないんですよ~」
憲吾は同じ部屋の大学生、渡邊諒さんと話している。何の因縁か、諒さんは帝國大学だった。でも、卓球部だけが俺たちの敵。諒さんは関係ない。
「君達、津貫高校だっけ? あそこって、卓球強いんでしょ?」
「そうなんですよ、っても、俺の自慢にゃなりませんけどね。コイツ! コイツが卓球部です」
「へぇ……」
「あっ、ども」
俺は軽く頭を下げた。今までずっと憲吾が話をしていたから、急に話を振られると困る。しかも、諒さんの目は何かを見透かしたような瞳をしていた。
「俺は高校の時は野球だったから、そこまで興味なかったけど。結構有名だったね」
「いや、俺はあんまり試合で活躍してませんから……」
自分の下げたのではなく、率直な意見だった。事実がそうなんだから仕方がない。
「憲吾くんと、利信くんは、もう大学目指してるの?」
「俺は、まだですけど」
「俺もです。つか、もしあkすると就職かも」
俺が前者で憲吾が後者。実に簡単だ。俺も、最初は帝國大学を狙っていたんだけど、もう目指すことはないだろうな。なんか、悲しい気分が込み上げる。
「そっか。まだ高校1年だからね。ゆっくり決めるといい」
「ありがとうございます」
そこからは、もう憲吾と諒さんの会話だった。俺の入る隙間なんて、1ミリも空いてない。
少し時間がたって、諒さんが病室を出た。
「俺、なんか飲み物かってくるけど、いる?」
「大丈夫です」
俺の意見もまとめて、憲吾が伝えた。
「そっか。じゃぁ、すぐ戻るから」
「はい」
ドリンクコーナー。諒の姿が1つあった。諒は携帯電話を取り出し、電話を掛けた。
「あっ、俺です。お久しぶりです」
諒は、電話の相手に、嫌なほど低姿勢だった。
「久しぶり。で、膝の具合はどうだ?」
相手の男は、少し渋めの声だった。
「ぼちぼちです。大丈夫、計画には間にあいそうですので、桐谷コーチ」
「そうか、よかった。で、今日は何用だ?」
「例の、津貫高校の件です」
そこからは、諒の声が小さくなって、誰にも聞こえなくなっていった。
『渡邊 諒 帝國大学3年。Sチーム所属』