月曜日 after school.
学校の知らせを聞いても、何も変わらずに時間は回っていた。
「なぁなぁ。この問題どう解くの?」
「知らねーよ。つか、次移動っしょ」
近くの生徒の何人かは、次の英語の授業の用意に移っている。
「おい、利信、行こうぜ」
病的な程おかしかった憲吾もどうにか元に戻り、俺を誘う。
「あぁ、分かった。待ってて」
「オーケー」
憲吾は携帯を開いてサイトを確認した。多分、最近流行っているブログだろう。俺なんて、そんなに書くことないっつーのに。
「オッケ。行こ」
「うん」
憲吾は俺に返事を返して携帯を閉まった。今更ながら、この津貫高等学校は携帯持込は禁止していないが、授業中の使用は禁止だ。もちろん、生徒曰く「バレなきゃ結構」らしい。俺もその内の1人だけどな。
「これから、英語の授業を始めます」
今日の日直が号令をかける。英語の教師はもちろん、チーちゃんだ。
「Let's enjoy Eglish! Please open tetextbook page 43」
チーちゃん恒例の掛け声で皆は一斉に教科書とノートを開く。疎らだが、教科書の内容をすでに写している生徒もいる。あいにく俺は移していない。遠藤は、……移していた。まっ、当り前かな。
「では、教科書の内容整理をします。えっと、では、CDに続いて発音をしてみましょう」
チーちゃんの日本語が途切れたと同時に、スイッチを押す。 チーちゃんの前では死んでも発言できない言葉を発言しよう。「授業は面倒だ」だ。英語は好きでもなく嫌いでもない。だからこそ、授業時間が妙に長く感じる。でも、チーちゃんになってから幾分授業の内容はわかるようになった、気がする。意地でもチーちゃんのお陰だなんて言わない。
放課後、俺と憲吾はゲーセンに行く約束をした。俺の頭には、もう隅っこにも『通り魔』の出来事は無かった。憲吾も同様に、だ。
「なぁなぁ、可愛い子いたらどうする?」
憲吾が意味不明な質問をする。
「いたとしてもどうもないだろ」
「ハァ……!?」
憲吾のため息でもなく俺をバカにしたでもないこの発言は、俺をムキにさせた。
「だったら、何すんだよ?」
だが、俺もバカだった。憲吾は、この質問を待っていたに違いない。顔を輝かせて答えた。
「もちろん、ナンパでしょ?」
「今どきやることか、それ?」
「ナンパに今どきも昔どきもねぇ! ようは、可愛い子がいればする。いなきゃ無視だ、無視!」
「いや、そんなに大声で言わなくてもいいだろ」
「ん……それもそうかな?」
憲吾も少し元樹の性格が移ったかな? と俺は感じた。 話を一旦終え、俺は教室を見渡した。教室にまだ掃除から帰っていない生徒の鞄はまだあったが、もうすでに終えている生徒の鞄はない。俺と憲吾だけだ。
「んじゃま、そろそろ行こうぜ」
憲吾が言葉を発した。
「分かった」
俺は短く返した。
「つーか、なんで部活休みなんだっけ?」
憲吾が質問する。そーいや、何でだっけ? 俺は自分に質問をした。
「シラネ」
「たまには休めってか?」
「そうかもな。俺は休みたくねぇけどな」
「このこの! 調子良い奴め!」
俺と憲吾は笑いながら校門を通った。目的は、ゲームセンター『ミッツ』。