月曜日
翌々日。つまり、月曜日。まぁ、なんだ。昨日はこれといって思い出がなく、特に書くことでもないので省略させていただく。で、今日は月曜日。学校だ。
「おはよ」
憲吾が俺に近づいて挨拶をしてきた。
「よっ。なんだよ、隈できてんぞ」
憲吾の目下は黒かった。
「マジかよ……。睡眠時間を考えなければ」
「何やったんだよ?」
「いや、ネットゲームという名の柵に……」
なんだか大変そうな憲吾を横に、俺はバッグからお土産を取り出した。そう、一昨日買ったキーホルダーだ。
「ほらよ、土産だ」
「おっ、サンキュ」
憲吾は早速包みを開けた。
「いいねぇ。よく俺の趣味がわかったな、利信さんよぉ」
「お前、話し方おかしいぞ」
「そうか……自分では気づかぬものだな」
本当に大丈夫か? 憲吾の心配をしながらも、俺は目線だけで元樹を探す。
「おい、元樹は? セットだろ、お前と」
「まぁな、異世界でも一緒だったでござる」
……まぁ、憲吾のツッコミは置いといて、元樹の捜索に当らないと。
「元樹と一緒だったって。何時まで?」
「今日の7時」
俺は時計の時刻を確認。時刻、8時13分。
「さっきまでか。電話してみようぜ」
「いいよ、どうせまだ異世界だ。家出る前いチャットで話した。『もう少し居ます』ってな」
そうか、まだネットゲームの世界か。じゃぁ、元樹にはまだ渡せないっと。
「おい、そろそろホームルーム始まるぞ」
「ん? あぁ。まさか、今のお前からそこまで真面目な言葉が聞けるなんてな」
俺は感動に目を潤した。人間、性根は根本的に変わらないか。じゃぁ、先輩(仮)も……。 なんて、そんな変な想像は止めておかないと、また、壊れる。
「おはよう、村井くん」
席に着くと、遠藤が声をかけてきた。
「どこに行ったの?」
「塚百合草原。結構いいとこだったぞ」
「そっか。今度行こうかな?」
「おぉ、いいぞ。楽しいしな」
「誰と行ったの?」
「えっ……?」
遠藤の言葉に、俺は言葉を止めた。危ない、後少しで『チーちゃん』って言うとこだった。
「もしかして、彼女?」
「いや、そんなんじゃねぇよ」
遠藤の言葉は間違えだ。だが、それ以外の言葉もなかったのも確か。俺は、自分で自分の答えを無くしてしまったようだ。
「誰でもいいだろ」
「そっか。それもそうね」
遠藤って奴は引き際がいいのか悪いのか……。皆、連休明けで少しテンションがおかしいんだな。木曜の俺みたいだ。
「みんなおはよう! 今日も元気よくホームルーム始めるよ!」
元気な声でチーちゃんが教室に入ってきた。俺の記憶によれば、昨日家についてチーちゃんは「私、もダメ。明日学校元気なし」と発言していた。でも、今目の前にいるチーちゃんは元気の塊だ。まぁ、担任教師にはそれくらいの元気がほしいけど。
「じゃぁ、出席とりまーす。青柳くん」
「ういっす」
チーちゃんが出席を取り始めたところで、今日のホームルームは大体が終わったことになる。だが、今日は違った。
「あっ、今日の連絡ね。今日は通常通り、特に変化はありません。でも、通り魔がいるから各自気をつけるように! うちの学校でも何人かけが人が出ています。まだ犯人の特徴もつかめていないので」
チーちゃんの言葉に、教室がざわついた。通り魔? 変化ないって、少し違うでしょ。通り魔って、完全なる犯罪じゃん。
俺の不安は、一気に広がった。
「それと、今日は全部活動停止。緊急指令です」
この発言も、俺いとっては恐怖になることを、知らない。