修行模様
俺は、4つあるうちの2つめ修行(?)『第2の修行:獲物落しの場』を受けた。修行の内容は実に簡単。吹き矢で5つある的を打ち落とす。それが成功すれば巻物をもらえる……手はずのはずだ。
「では、制限時間は2分! 矢の数は10個となります! それでは、頑張ってくださぁ~い♪」
イモリさんとはまた違った女性の係員が俺に説明をする。だいたいルールは分かった。吹き矢で撃つ。簡単だ。でも、難しくするためか、最後の1つだけは上下に動いている。
「ふっ……! ふっふっ」
連続で3つを当てる。卓球で鍛えた命中力を舐めちゃ困る。
「おりゃ! ふっ!」
4つ目を当てる。制限時間に目を見ると、残り1分5秒。マジかよ。もう55秒も……って、考えてる暇もないか。
「……――ふっ!……くそっ」
外した。残りの矢を確認。5個。考える時間はない。動いているんだから、すばやく行動、集中する。
「ふっ!」
ダメ。
「ふっ」
マジかよ……。動いてる的って、難しい。射ってから、あっちに着くまでのロスを考えてみよう。
「……」
ダメだ。今まで考えてないから、想像できない。とにかく、
「今だけだ。 ふっ」
一発打ってロスを見つける。
「的が一番上にいったときにやれば真ん中に当る……」
頭で理解できたことを実行する。残りは2つ。できるか? いや、やる! もしダメだったら、チーちゃんに「えっ? やっぱり、トシは私がいないとできないんだぁ!」って馬鹿にされるに決まってる。それだけはいやだ。
「……ふっ」
狙いを見つける。今のもダメ。追い詰められた。もしかすると、アフリカでライオンを目の前にしたシマウマって、こんな気分なのかな?
「………………………………」
今までで一番の神経を口に当てる。タイミングは分かった。あとは、間違えなければいいだけだ。
「――!」
一瞬のタイミングを見て、俺は吹き矢を射た。
「おめでとうございます! 全5個中5個の命中となりました! では、印を押させて頂きます!」
女性はそう言うと、さっき俺が渡したカードにスタンプを押した。
「あっす(ありがとうの意)!」
俺はそう元気良く告げてその場を後にした。つーか、ここの修行場も細部まできっちり作ってある。凄いだろ、これ。
俺は忍者之里に戻った。そうすると、すでにチーちゃんは待っていた。
「遅かったね。で、成功した?」
ストレートで聞いてくる部分はチーちゃんらしい。
「まぁね。チーちゃんは?」
「もちろん!」
チーちゃんも満面の笑みで俺に返してきた。 ってことは……。
「終わり、だよな?」
「そうだね! イモリさんとこ行こうか」
チーちゃんはそう言うと、イモリさんが指定した副村長の部屋に向った。
「イモリさぁ~ん♪ 終わったよぉ」
「そうですか! では、ここでの戯は終わりとなります! おめでとうです♪ これが今回の報酬となります」
そう言うとイモリさんは500『EDO』を俺とチーちゃんに渡した。
「これは当会場にて使えますので」
イモリさんは言いたいことだけ伝えると、出口に連れて行った。 っていうか、さっき買った『回復薬』って何時使うの? 中身もただの金平糖だし。
「いいじゃん、お土産で♪」
チーちゃんはチーちゃんで2、3個食べてるし。
さぁ~て、次はどうしよっかなぁ。 俺は次の体験を考えていた。そして、地図を手にとる。すると、俺の興味を一気に引くものがあった。
『江戸の町並み体験! 江戸時代の住人になって愉しもう!』
いいね。こういう平凡なのが愉しいんだ。
「チーちゃん! 俺、ここ行きたい」
チーちゃんに俺の用件を伝えると、
「いいよ♪」
こうゆうノリの良さは良い人だとおもうんだけどなぁ。