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朝食

 何かがおかしい。さっきまで、先輩(仮)と会っていた。で、チーちゃんに摩訶不思議なことを呟いた。でも――。

「……ぅ~ん……」

隣では寝ているチーちゃん。俺の服装はパジャマ。起き上がる。窓から外を見ると、綺麗な月が浮かんでいる。今は夜。そんなの、見れば分かる。

「またか……」

先輩(仮)と会うと、記憶が無くなる。何をしたか、何を言ったのか。分からなくなる。思い出したくなくなる。

「寝よ」

そう誰に呟くでもなく、俺は呟いてから、ベットに寝入った。

 翌日。朝。さっきまで見ていた景色が、明るく変わり、山々が見えた。

「行っくぞ~~!」

ベットからいきなり立ち上がったチーちゃん。俺はそれを横目で見る。因みに、いや、分かっているとは思うけど、ベットは2つだ。

「うるさいよ、チーちゃん……」

寝起き。真夜中に起きる『寝起き』とは違う、朝の『寝起き』。しかも、無理矢理、騒音で起こされたとなったら、俺の機嫌はそっぽを向く。

「なぁ~に? 一緒に寝れなかったから、怒ってるのぉ?」

「うざい……朝食まだ?」

でも、いつもと違うテンションの低さだっていうことは分かった。試合で負けたときにもここまでテンションが落ちたことはなかった。枕慣れしてないからか? 俺は自分の体温がまだ残っている枕を見つめた。

「……」

理由は違う。そう分かっていた。でも、自分でも理解できない理由に、枕のせいにするほかない。そんな気がした。

「今日の朝食は……1階だね!」

親指を立たせて『グット!』のポーズをとるチーちゃん。正直、今は面倒だ。

「行こ」

俺はパジャマから私服に着替えた。もちろん、風呂場で着替えた。

 朝食はよくあるバイキングスタイルだ。好きなものを取っていいのはありがたい。俺はオムレツと味噌汁

、ご飯、お漬物、鮭、ケチャップを取り皿にとって席についた。席についてから、ヨーグルトを取るのを忘れたことに気がついた。

「どうっすかな?」

食べてから取りに行こうと考えていたところで、横からヨーグルトに甘めのイチゴジャムが乗っている子皿を出された。

「はい。取り忘れたでしょ?」

チーちゃんだ。

「ありがと」

もうそろそろ機嫌も直ってくる頃だ。さっきまでよりはマシに扱っていると思う。

「いっただっきまぁ~~す!」

チーちゃんは一気に食べ始めた。

「汚いし行儀悪いし、太るよ?」

俺は一応の注意を促した。

「ふぇ!? チーちゃんは行儀悪い娘嫌い!」

サラダを口に咥えながらチーちゃんが叫んだ。それが行儀が悪いってこと、本人は気がついているのだろうか? それに、朝からよく食えるよな……。人間ポリバケツ。

「ぷっ……!」

俺じゃついつい声を出してしまった。

「何よ、「ぷっ」って?」

「いや、よく食べるなって思ってさ」

よし、機嫌は完璧だ。

「……」

チーちゃんは自分が食べた皿の姿をみて少し考えたあげく、

「ダメ?」

と瞳を、うるうるさせながら聞いてきた。

「いや、尊敬するよ。それに、チーちゃんが太っても、俺には関係ないからね」

「いや、あるでしょーよ。100人中100人があるっていうよ」

いやと言い出しをパクられたのは気になったが、俺は静かにツッコんだ。

「関係ない」

そんなこんなで、朝の食事は終わった。部屋に戻る途中で、俺は聞いた。

「今日、何するの?」

「観光」

「それは分かるけどさ。具体的には?」

「じゃぁ、ココでもいい?」

チーちゃんはそう言ってパンフレットを渡してきた。

『年中無休の祭り街! 今だけ江戸時代を再現した町並みにどうぞお越しください。江戸時代の住人になって祭りやお稽古、忍者修行を楽しみましょう!!』

と。

「いいね。俺、こういうの好き!」

俺は即答だった。

「よかったぁ♪」

チーちゃんは安堵の息を1つついて、笑った。

 俺、本当に江戸時代と昭和って好きなんだよなぁ。なんか、楽しそうじゃなん? 最も、本当に暮らしたいとは思わないけど……。楽しいトコだけ体験できるって、未来人の特権かな?

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