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辛い

 卓球人生初めての壁。俺にとってそれが、富樫拓だった。

「どうしたの? もぉ終わり? 心の奥底から残念だ♪ キミは昔からそうだ。弱いくせに強がって。その小さな牙に光を当てて大きく見せる。心の奥底から醜かったよ♪ だから潰してあげたのに♪ 今だって、反抗をみせたのは一時だけ? 面白くない」

最後の文だけ、力が篭る。卓球を本当に愛するがために身に付けてしまった力。相手を失望させる。

「いやだなぁ、先輩(仮)。俺は、先輩(仮)に潰された気はさらさらありませんし。醜い気もありません。今はただ、卓球を楽しんでいます」

「楽しんでいる人間が、負けるかね? 心の奥底から、負け犬決定♪」

心が、沈む。負けを経験しない人間の言葉は、重い。

 俺はこのとき、2、3日前の新聞を思い出した。

『天才!? 大学一年にして全国制覇を成す青年を追う!』

スポーツ面の記事。卓球は、野球やサッカーと比べれば大きな記事は少ない。だが、この記事は大きかった。今までの卓球界の中で、大学1年生が大学1位になることは珍しい。そこの名前は『富樫拓』となっていたが、俺はその時点で思い出せなかった。この人の気持ち悪さは、機械なんかが打ちだした文章じゃ、表せない。現に、記事の最後にはこう綴られていた。

『今回、私は彼を取材するに当って、変な悪感を覚えた。彼には失礼かもしれないが、彼を例えるなら悪魔がふさわしいだろう。これが、大学で1位を勝ち取る人間の雰囲気かと思うと、私は楽しみに思う。だが、それと同時に感じたのは、恐怖だった。』

と。 新聞にふさわしくない文章だった。記事にするのに、相手を『負』で書くことは有り得ない。

 

 先輩(仮)は、俺の心を読み明かしたかのように、嘲笑った。

「だぁかぁら……! 俺の意見に反論は? 心の奥底から、求めます♪」

言えない。正しいんだ。先輩(仮)の意見は。俺は中学1年の時にこの人はもう居なかった。だが、この先輩(仮)が高校に入って少したってから、部室に顔を出した。俺はその時に軽い試合をして、卓球を止めようと考えた。この人の卓球は、何も生まれない。

「俺は、貴方と倒せない。……それが分かっているのに、なんで反論しないといけないんでしょうか?」

ピクッ。先輩(仮)の右眉が一瞬だけ痙攣するのが分かった。この人のこの行為は、怒っている証拠だ。

「俺は、もう、無駄な卓球はしないって決めたんです。分かったら、消えてください」

あぁ……。光が消える。また、中学1年の時の俺に、逆戻りだ。

 俺は、卓球場を出て行った。チーちゃんが、俺に声をかけてくる。

「待ってよ、なんで? 何で逃げるの?」

優しく声をかけているつもりなんだろうけど、無駄。俺には遠くて聞こえやしない。

「……それでも、トシ? それでもいいの?」

無駄。無駄。無駄。無駄。ムダ。MUDA。

部屋に着く。俺は、部屋に入って今まで篭っていた空気を一気に吸う事で、何とか口を開いた。

「聞いて……」

それしかいえなった。大丈夫だろうか? チーちゃんは、残っていられる? 俺は、……。

 そうして俺は、重い口を着々と開いた。

本日から3日間連続更新を始めます。実は、もう書き終えています。この3話で、一旦拓さんのお話は終了です。次からは本格的な恋愛ですので。 でも実は、拓さんが出てからアクセス数が増えたんで、もう少し出したかったです。でも、本場はこっち(恋愛)なので。 今日から4日間、休みたいと思います。では。3日 間、お楽しみください。2011年1月29日23時11分。

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