コーチで教師で恋人!?
「実はね……」
言葉をチーちゃんが紡ぐ。ゴクリと生唾を飲み込む。失礼だけど、怖い。チーちゃんが。
「明日学校無くなった」
「は?」
あまりの発言に、俺は言葉を失った。明日は金曜日。つまり、明日がなくなったってことは3日間の連休になる。とはいっても、部活はあるはずだ。
「部活も中止。大鉄くんたち塾らしいから」
「は?」
本日発言2回目。先輩達って、塾行ってたっけ? 俺の記憶では行ってないでしょ。
「いや、センター試験だっけっかなぁ?」
「センター試験、か」
俺にはほとんど関係のない試験。それがセンター試験。3年生になれば嫌でも受けるしかない。でも。
「大鉄先輩達はあるとしても、荒木先輩と森崎先輩は無いんじゃないの?」
「生徒手帳見直して」
チーちゃんはそう言って俺の生徒手帳を取り出した。つか、どこから持ってきた?
『 第32条。推薦入学の生徒、および大学受験を控える第三学年の生徒は原則センター試験を受けること。また、推薦入学の生徒は第二学年からとする 』
困ったな。明日、オフか。 俺の思考回路は休日の休み方に持っていった。
「センター試験は日曜日。その2日前からの部活動も原則として禁止だからね。トシ1人じゃぁ、できないでしょ? だから」
「勉強しよ」
これでも高校生。勉強は大切だ、うん。チーちゃんの発言の前に発言をしてしまえばこっちの勝ちだ。
「だから!」
うわっ。無理矢理話戻したよ、この人……」
「何?」
「旅行行こ?」
はい? 今、何と仰いました? 尊敬語だか謙譲語だか分からない言葉遣いで、俺は考えた。リョコウ? リョコー? ryokou? りょこう? 旅行……。ふむ。 俺の頭がやっと変換しなおした結果、漢字で表すのは『旅行』しかなかった。
「マジ? 俺、嫌だよ」
こうゆう時は本心をそのまま表すのが一番いい。15年間の経験上はそういった感じで終了する。よし、明日からは勉強漬けだな。
「ダーメ! もう反抗期は終わったでしょ? だったら反抗する理由なしっと」
「は?」
マジで分からない。チーちゃんの理由って、何なの? 俺は大きなため息をついた。
「どこ行くの?」
一応の確認。
「初デート……ていうか初夜? だからねぇ、」
「待て」
ここはこれでいいでしょ? 有り得ない単語出てきたんだからさ。
「初夜っておかしいでしょ、いや本当に」
「えぇ!? その反応おかしくない?」
「いや、チーちゃんの方がおかしいよ、常識的にさ」
「常識って、誰が考えたんですかぁ~!?」
子供かよ……。
「いいや、話戻すよ!」
さっきまでも話を戻しに戻していたような気もするが、俺は敢えて何も言わなかった。チーちゃんの目は本気だった。
「明日は、塚百合草原行きます!」
「何で? 馬鹿?」
塚百合草原とは、北の方にある草原地帯のことで、観光名所ではない。森林や山もあって、正直な所、修行ってイメージだ。
「いいじゃん! 何処だって! マイナスイオン感じよーよ♪ ね?」
「……まぁ、チーちゃんが満足するならいいけどさ」
「やった~~~~~~!!」
「わっ、うっさ」
チーちゃんは、公共の場ということを忘れたように、騒いだ。つか、本当に教師でコーチ? なんて、考えたくもなる。
「何やってんの?」
何時の間にやってきたのか、荒木先輩が俺達に声をかけた。
「荒木、邪魔しちゃ悪いだろ……」
大鉄先輩! 誤解ですって! つか、何で誤解してんの?
「村井、手」
服部先輩の助言のお陰で、俺は自分の行動を見た。 チーちゃんの胸部に、手が当ってる。
「あっ……、チーちゃん、いや、あの、その……」
「もうっ、トシって強引……」
いや、顔を赤くしないでって……!
試合の後のテンションって、なぜか壊れる。でも、このテンション、好きだ。勝利の後の乾杯みたいでさ。 皆もない? 嬉しい時ってさ。
と、いうわけでございまして。次の話は旅行です! 正直な所、そろそろラブも始めないとって思ってます。少しずつ増やしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。あっ、因みに、塚百合草原は僕の空想上の場所です。本当は故郷をモデルにしようって思ったんですが、少しムリそうなので、止めました 。もし、塚百合草原あったら嬉しいです。 では、次の話からは『チーちゃんとトシの旅行篇』です。