祝賀会
「ふぁ~あ……。あっ、言っとくッスけど。俺、初戦から本気なんか出しませんから。いや、違うかな? 出せないのか」
ブツブツ独り言を呟く寿先輩。
「どっちでもいいーよ。オレも、やる気ねぇしさ」
相手は相手で反発してくる。いや、ホントもう初めてください。審判の人も困ってますよ?
「うざっ。いいや、一回逝っとけ」
卓球で逝くって……。先輩達、漫画の見すぎじゃぁ……?
「早いとこ終わらせないとさ。まぁ、設定上、飽きも来るらしいッスから」
へ? 設定? 先輩、何を言ってるんですか? もしかして妄想狂?
――寿 流。勝利――
うんと、何だか先輩の戦ったところの記憶が無い気もするけど。ま、それは次の次回にとっておこう。
「お疲れさまっ! 見事だねぇ」
ニヤニヤ顔で俺達を舐め回すチーちゃん。本当に顔を舐められるみたいだ。 そう、俺達は勝った。星鐘高校意外には1敗もすることなく。俺も齋藤さん意外には勝ったってこと。進化は止まらないって本当だね。
「んじゃま、今日は貴方達の勝利を祝わないとね。どこがいい? カラオケ? ボーリング? ファミレス? ホテル? 居酒屋? ゲームセンター?」
いやいや、皆気にしてないようだから俺が言うけど、
「チーちゃん、完璧に変なの混じってたよ?」
「大丈夫だって! トシとしか行かないって――」
「はい、何処にします?」
変なことを言われる雰囲気が充満してたから、一気に話題を変えた。
「う~ん、俺はどこでもいいけどな」
と、大鉄先輩。
「俺も暁に賛成ッスね」
と、寿先輩。
「う、ん。大丈夫だよ、何処でも」
と、服部先輩。本当にこの先輩は試合時と印象違うよな……。
「俺「俺も!」も!」
ほぼ同じタイミングで森崎先輩と荒木先輩。
「皆どこでも、ですか。じゃ、ここは大鉄先輩、ビシって決め手くださいよ」
「うん? とりあえず、ファミレスで」
大鉄先輩の発言で、祝賀会の会場が決定した。
ファミレス。広く清潔な店内に人が疎らに座ってる。あんまり混んでない。まっ、4時30分前後に混んでてもおかしいけどさ。
「今日は皆の自腹だからね。私の給料袋も寂しくなったもので……」
ワザと涙ぐむチーちゃん。その横でみんな笑顔だ。
「大丈夫です。城峰コーチも自腹ッスから」
皆の気持ちを変わって寿先輩が発言する。
「トォ~シィ~」
「ダメ! 俺だって小遣い少ないんだからさ」
俺はため息をつきながらハッキリと言った。
「村井、絶対厳しい親になるな」
森崎先輩、止めてくださいよ。
「ハァ……。仕方ないから今日だけだよ」
「でも、甘やかすのも上手いのな」
もう、何でもいいです。
宴(?)も後半に差し掛かった当りで、チーちゃんが外に出た。俺を呼んでるみたいだった。
「すみません、少し席はずします」
「分かった」
隣に座っていた大鉄先輩にそれだけ言うと、チーちゃんの所に向った。
「どうしたの?」
「トシ、今日は本当にお疲れね」
「う、……ん、ありがとう」
いつも変な発言しかしないチーちゃんなので、少しの警戒心くらいは持っておく。それくらい普通だよね?
「実はね……」
そう言って、チーちゃんは言葉を増やしていった。
次話は、ラブもある予定です。