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渉の過去

 「行ってこい」

「あれ? 村井と城峰コーチいないのに、行っていいの?」

「大丈夫だ。普段通りやれよ?」

「村井には悪りぃけど、んなことはしないですって」

ラケットと、タオルを持って一歩ずつ進む。いよいよ来た。予選、1回戦……! 俺の、次期部長の見せ所! 一発決めないとな。

「お願いしますね」

相手は俺と同じ2年か……。大丈夫、俺は強い。負けは、ダメだ。

「お願い、します」

俺も返事を返してやる、それが礼儀っつーもんしょ?

「ふぅ〜〜!」

息を一気に吐き出す。緊張が解れる。

「ジャンケン!ポイ!」

負けた。……まぁ、ようは試合で勝てば良いってことで。

「渉……」観客席から聞こえる声。声は細くて、微かだ。彼女が来るのは、当たり前っしょ? でも――。

「サンキュな、蘭」

俺は、観客席にいる彼女、榎田 蘭(えのきだ らん)に視線を走らせる。

「ファーストゲーム、ラブオール!!」

声が嫌に大きく聞こえる。マジ、勘弁。今は、試合に集中しないとさっ。 じゃぁ、始めっか。荒木渉の、試合をね。

 

 「ふぅ」

5分後には、試合の結果は出ていた。11対0。ラブゲーム。最高(サイコー)! でもま、此処で調子には、乗らない。

「あのドライブは打たないのか?」

暁先輩の問いかけには、あえて答えよう。

「まだ、十分」

「そうか、でも、油断はするなよ?」

「大丈夫、大丈夫。相手は気づいてますから」

そこで一旦の呼吸。俺、こうゆうところはロマンチストなんだ♪ 

「長引かせちゃ、不味い……って」

余裕の笑みを見せる。

「セカンドゲー「ありがとうございましたっ」

こう表すのが一番良いと思う。だって、本当にそんな感じ。コイツ等は、俺をキレさせた。可愛い可愛い後輩(村井)を、泣かせたんだからさ。解るさ、先輩だから。

 

 試合後。俺は1人観客席と試合会場とを結ぶロビーに向った。もちろん試合は勝ったし、全部ラブオール。……でもなぁ、最後の暁先輩の言葉が気に掛かる。

「――今日も、見せてくれないか」

そう、俺は部内でも、本気は出さない。試合では、相手にしかどうゆうサーブ、レシーブ、ドライブを見せない。暁先輩には失礼だけど、唯一本気で出したのは『俺専用ドライブ』くらい。だから、先輩はドライブしか言わなかったのかもな。

「渉、まずは、おめでと」

座っていたソファから立ち上がって、後ろを振り向く。

「蘭。どうだ? 俺の伎は?」

「うん、凄かったよ。でも――」

最後の2文字は、とても悲しい顔をする蘭。

「止めてくれ、言わないで。思い出したくない」

つい、口調が荒くなる。

「うん」

何で、そんな悲しい声で、目で、表情で言うんだよ? 俺は、俺を壊したくない。コレなら、誰にも壊されないキャラなんだ。

「……私、もう気にしてないよ? 武藤くんだって、反省したじゃん」

「止めろっ! 名前を言わないでくれ」

あのときの記憶が、過る。――裏切り――情報――負け――蘭の退部――責任――武藤 龍司(むとう りゅうじ)――。

嫌な単語が、戻される。

「渉……」

「うん?」

後ろを振り向いた。蘭の細い腕が絡む。静かにキスをされる。

「大丈夫だから、好きだから。不安に、1人にならないで……?」

「……あぁ、分かってる」

視線が、どうしても蘭にいかない。糞っ。 そっと外を見る。城峰コーチと村井が帰ってる。ったく、良い顔しやがってよ。こっちは、厄介なのが、いるってのによ。 そういえば、次は、ダブルスだな。だれだっけ? 茂と、勇介先輩? そうだな、そうだ……。

「俺も、大好きだよ」

俺はそういって柄にもなく、静かなキスを交わした。

試したい事第二弾!

違う人目線でした。


次の話も、頑張ってやりたいと思います。

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