ゴメン
ベンチ側。大鉄暁と城峰千鶴は、静かに会話を交えた。
「気づいてたんだね」
「はい」
今までこんなに真剣にこの人と話したことがあるのだろうか? 暁はそんな感想を持っていた。
「あのサーブは危険です。横回転で相手のラケット範囲では届かない程度に曲げる。一番理想のサーブですね。でも、その分ラケットの振りが複雑になって、肘にダメージが残ります。それだけならまだ救いはあります。ただ」
「トシはサーブの時に、膝を下げる癖があるからね。その分のダメージも大きいのよねぇ」
他人事。でも、千鶴には自分のことのように感じていた。正直な所、自分でも好きかどうかは分からない。微妙なところだ。だからこそ、今の定位置は『弟』であって『息子』でもある。千鶴は、利信をそう考えていた。
――お願いだから、ムリはしないでよね。
心配ばかりが優先して、試合に集中できていない。
「城峰コーチ、村井、自分で気づきますかね?」
「分からない。でも、今はトシを信じなくちゃね。キミだって、信じてるんでしょ?」
「はい、もちろんですよ」
千鶴の問いに、迷いなく答える暁。その2人の視線は、台に一直線で向っていた。
その時、俺の耳に2人の会話が聞こえるはずもなかった。大鉄先輩の言った意味が、今になって分かった。
「痛てぇ」
肘と膝。卓球をする上で一番大事と言ってもいい場所に、俺は痛みを感じ始めた。でも。
「負けらんねぇ」
点差は5分で酷いほど広がった。サーブのキレがなくなった俺のクリーンボールは何度となく返され、ツッツキ合戦で負ける。齋藤さんのサーブでも同様。9対2。それも、2点は齋藤さんの簡単なミス、同情だった。
「ほら、いくぞ?」
嫌なことに、齋藤さんは俺に声を掛ける。サーブがくる。目に神経を集中させればラケットを振るタイミングが遅れるし、目に集中させなさ過ぎても見切れない。その微妙な調整が俺にはできなかった。
「嫌だ」
本当に、蚊の泣くような声で、俺は叫んだ。
負けた。セット数3対2。どうやって残りの2セットを取られたかは覚えてない……。
俺の高校初試合は、無残なほどまでに後悔の爪あとを残した。『先輩の指示を聞いていれば』。そんな後悔、しても遅いのに。
気づいたら俺は、外の広いコンクリートの広場に、チーちゃんと1対1で向かい合っていた。
「次、荒木先輩の試合でしょ?」
やっと声が出た。チーちゃんの口が動く。何? 何を言ってるの? 怒ってるの? 励ましてるの? 嘲笑ってるの? 分からない、皆のことが。
「大丈夫、皆を信じて」
やっと聞き取れた言葉がそれだたった。
「うぅ……。ゴメン、ゴメン……!」
「頑張った。頑張った」
はい。
試したい事第一弾!
第三者目線でした。最初だけですけど・・・・・・。
次の話でも、やってみたいことがあるので、一読をお願いします。(最近、一読って言葉にハマっています)
感想も随時お待ちしていますので、宜しくお願いします。