もぉ、いいや。
空中高く放り出された球は、すぐに俺のラケット面に落ちてきた。カッ! という音がして、ボールは齋藤さんのコートに投げ込まれる。
「所詮、1年坊主か……」
さっきまで無言だったくせに、急に悪口を言いやがった。俺の出したサーブは下回転。試合で最も多く使われるであろう球種だ。
「馬鹿、だな」
「うんうん♪」
後ろで、森崎先輩と荒木先輩が話しをしている。もし、齋藤さんと戦うのが初めてじゃなかったら、そんな油断することもなかっただろうに。齋藤さん、ゴメンなさい。
「おりゃ!」
俺は掛け声と共に帰ってきた球をドライブ《上回転強打》を放った。
「Don't mind」
高校生になっての公式試合での、初得点は、最高で綺麗に決まった。
「なかなか、やるな」
齋藤さんはまだ冷静さを保っている。なんか、ムカつく。
数分後には、1セット目が終わっていた。もちろん俺の勝ちで。
「お疲れ様。11対5。まぁまぁだね」
チーちゃんが冷静な分析で俺を迎える。
「でも、何か先輩達が言うほど、体力勝負になりませんね?」
俺がそう聞くと、大鉄先輩が笑いながら俺に呟いた。
「まっ、ここからだよ」
意味深そうなその言葉は、2セット目で俺を慎重にさせた。
「セカンドゲーム、ラブオール!」
審判の声と共に、齋藤さんはサーブを打つ。さっきと何ら変わらない右回転の少し掛かったサーブだ。当然、ツッツキ《下回転レシーブ》で返す。んで、次にきたらドライブを打てば、いい。
「油断、したな?」
「は?」
不意に、そんな声が漏れる。 ――やばっ――そう気がついたときにはもう遅かった。ドライブのフォーム《姿勢》に入った俺は、ドライブの範囲ではないところに来た球を拾えなかった。
「くそっ」
小さな声が漏れる。
「もう1球」
そう言って、齋藤さんは横回転のサーブを出す。下回転。また戻ってくる。学習した。4球目じゃ打てない。またツッツキで返す。戻ってくる。ツッツキ。それを何回くり返しただろう? ツッツキ合戦が始まった。集中力の勝負。そして、体力勝負。そうゆーことッスか、先輩方。ツッツキ合戦でも、集中力は抜けない。何時ドライブを打たれるか分からないから。
「ちっ」
汗が目に入り、集中力がなくなった。当然、球はネットを越さない。
「最悪だ……」
次は俺のサーブ。
「もう、許さねぇ。先輩、倒させてもらいますよ」
「集中勝負なら、負けない」
もぉ、いいや。アレを使おう。
そうして、俺は秘儀のサーブを打った。
本当は、1話で試合を終わらせようと思ったのですが。テストがあったりと、時間がなかったので。でも、キリが良かったのでは? と思う今日この頃です。
もしよろしかったら、感想待ってます。
ここえ告知させていただきます。【ユッケさんという、友達の1作品目が連載中です。ケイトで探してください。元々は僕の作品なんですが、共同ということで、任せました。一回、読んでみてください。】
では、また。