んじゃま、いきますか。
「ただいまより、校総合体育大会卓球競技予選大会を始めます。顧問の先生、及びコーチの方に予選表は渡してありますので、その指示に従ってください。Aブロック……」
広い会場の体育館で、マイクで大きくされた声が告げる。
つーか、まだ実感がない。もう12日間が過ぎたんだ。今までの練習って、ちゃんと生かされてるよな? そーじゃないと困る。
「大丈夫か? 村井?」
「あっ、はい」
大鉄先輩は、ワザと聞いているんだ。今日のバスで、あんな事決めたんだからさ。
「リラックス、リラックス♪ 予選大会なんて、いままで何回も体験してんだろ? だったら楽にいこーぜ」
荒木先輩の声が、俺の身体をほぐす。
「んじゃ、そろそろ下降りるッスか」
寿先輩の言葉がスイッチになって、皆が立ち上がる。 ――震える。自分の足が、震えている。まるで助けを求めているかのように。
「一回戦目から星鐘高校だからさ、緊張しても構わない。でも、試合になったらそうじゃ困ります。まっ、いつも通りをすれば勝てると思うから。さっ、並んで」
チーちゃん……おれ、初っ端なんだけど。緊張、解けないんだけど。
「はい、分かりました。ほら、いくぞっ!」
大鉄先輩の声を聞いて、俺だけラケットを持つ。
「お願いしますっ!」
大鉄先輩と共に挨拶する。相手校、星鐘高校も挨拶をしてきた。
「お願いします」
「……」
つい、いつもの癖で相手に挨拶をしてしまう。いくら挨拶するルールが無いからって、挨拶返さないって、なんか、人間的にどうかと思う。……やっべ、俺、緊張で文章おかしくないかな? まぁ、今はそれどころじゃないんだけど。
「トシ、ちょっと」
練習が終わってラケット交換をした後すぐに、チーちゃんが俺を呼んだ。
「ん、何?」
チーちゃんは俺の耳元で小さく、でもハッキリと言った。
「ブチかませ!!」
「うん、Sure」
もちろん、と俺は返す。んじゃ、行きますか。
「ファーストゲーム、ラブオール……!!」
審判の声が聞こえて、俺はボールを上に放った。 今回の俺の相手は、齋藤 雄介(さいとう ゆうすけ)さん。俺の、2コ上。