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 「どうした? もう、終了か? 最も、これだけでも頑張ったっていえるけどな」

大鉄先輩の言葉が、今は本当に怖い。卓球は好き。大好きだ。でも、今日は、嫌いだ。相手が、大鉄先輩が、怖い。身震いが身体を襲う。

「まだ、終わってませんから」

今はそうでも考えないと、すぐに呑まれる。大鉄先輩の圧迫感に……! 点数は絶望的だった。3セット先取の試合で今が3セット目。2セット大鉄先輩が取ってて、今は10対2で俺が負けている。正直、ここまでの差があるなんて、想像もしていなかった。

「良い、考えかただ」

ザッ……。 最後の球は、その音だけだった。

「11対2で、暁の勝ち。ありがとうございました」

服部先輩の声が、聞こえた。

「ありがとう、ございました」

俺は小さな声でしか大鉄先輩に伝えることができなかった。今までも、服部先輩、寿先輩、森崎先輩、荒木先輩とは試合をしてきた。そんで、2セット、ダメで1セットは取れた。でも、大鉄先輩には、完膚なきまでに落とされた。

「ハァ……」

椅子に座ると同時に、最後の球のことが頭を過った。どんな球種だったかも、分からなかった。今までの、球は何とか返せた。でも――。

「気になるか? 最後のサーブ」

大鉄先輩が、隣に座った。

「……はい」

ここは正直に。『負けた人間が勝った人間に噛み付くほど、愚かな行為はない』。誰かの本に書いてあった言葉だ。俺は、作者も分からないその本の言うとおりにした。

「アレはな。俺の……大好き、憧れだった先輩のサーブなんだ。でも、その先輩からは、結局、教えてもらえなかった。自分で、見つけたんだ。だから」

と、大鉄先輩はそこで言葉を一旦止めた。

「お前にも教えられない。いいか? ここで落ち込めば、荒木や森崎にはなれない」

「もしかして、森崎先輩と、荒木先輩も?」

「もちろんだ。だから、お前には、この球を知ってほしかったんだ。最終的に、帝國大学とヤる。お前にはな」

大鉄先輩は、それだけ言うと無言で、台に戻った。そしていつもの明るさで俺にこう言ったんだ。

「村井! 試合は、近いんだからな」

「はい……!!」

 【全国高校総合体育大会卓球競技予選大会まで:12日】

 【帝國大学Dチームとの試合まで:??日】


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