表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/60

認められた。

 「もぉ、ムリ……です……!」

最初に我慢が出来なくなったのは、服部先輩だった。元々体力ないからなぁ……でも、それは服部先輩に限ったことじゃない。分速250メートルは全員、諦めた。まず、最初のテンションで走った時点で俺らの敗北は決まっていた。

「先輩、あと、何周ですか?」

「ん? 5周だ。服部、辛かったらムリするなよ?」

「う、うん」

服部先輩は、大鉄先輩の言葉に従ってスピードを落とした。津貫高校の周りは750メートル。だから、20周走れば15キロになる。あと、5周か……。短いのか、長いのか。

「ほら~! 集中しなさ~い。この後の練習考えて動くのよぉ」

チーちゃん曰く、この辛さの後に通常メニュー、チーちゃんが個人個人に与えたメニューを行うらしい。そうすることで、自然と体が体力と時間のバランスを整えるらしい。

「ハッ! ……きっちぃ、どころじゃねぇよ……!!」

次にスピードを落としたのは荒木先輩だ。

「卓球人は元々体力、ないし……」

次は森崎先輩だった。森崎先輩、俺、結構体力自信ありますよ? 足腰を鍛えるために走りまくったし。

「おいおい、後は、俺に暁に村井ッスかぁ。まだまだダネ。村井も、無茶すんなよ?」

「先輩にも、負ける気しませんけどね……!!」

「言うようになったなぁ、1年のくせにっ」

大鉄先輩は、いつも以上に元気を振りまいていると思う。こんな状態で、これだけの声を出せるなんて、凄い。

 「はいっ。終了ぉ~~!!」

「「「ハッ、ハァァァァァァァァァァァ!!!」」」

俺達は、息をこれでもかってくらい吐き出した。少しでも、体を軽くしたかった。

「これから、毎日体力トレーニングだな……」

大鉄先輩、さっきチーちゃんが言ってたこと、言わないでくださいよ。今は、現実逃避中なんで。 でも、予想以上に辛い。走り込みって、こんなにキツかったっけ?

「よしっ。練習するよ」

チーちゃんも……。なんで皆、休まないの? 寿先輩も、大鉄先輩も、もう立ち上がってる。やっぱ、格が違うよ。

「じゃ、今日の練習相手発表します」

チーちゃんの声に反応して、俺はチーちゃんを見つめる。

「今日は、服部くんと荒木くん。寿くんと森崎くん。大鉄くんと、トシです。メニューは各自でいつもどおり練習してくれれば結構です」

チーちゃんは言いたいことだけ言うと、さっさと部室を後にした。 大鉄先輩と、卓球……。嬉しい、それが第一に湧き上がった感情。それで、次に来た感情が……『不安』。今の時点の俺でどの辺りまで通用するのか。それが気になる。今までだって、大鉄先輩とは練習を幾度となくやった。でも、今回は違う。

「大鉄先輩、よろしくお願いします」

「あ、あぁ。負けねぇぞ」

試合。

「もちろんです。俺も、勝つ気ですから」

大鉄先輩との試合は初めてだ。チーちゃんがいつもどおりの練習、と言ったのだから間違いない。この時間なら、もう試合の時間だ。

「じゃんけんぽんっ」

俺がグーで先輩がパー。勝った。けど、

「じゃぁ、レシーブで」

あえて、サーブは選ばない。まずは、相手の球質を見る。それが、俺の、中学時代に日本1位に輝いた、村井利信の、戦術!!

「ファーストゲーム。ラブオール」

大鉄先輩の口から、流暢な英語が流れる。先輩の左手のが上がった。トス。ボールが上がる。……来る!!

「ぐっ」

正直、サーブでここまで重い球は初めてだった。本当に、返すだけで、言葉が漏れる。

「悪いな。ここからが、俺の、戦法だ……!」

大鉄先輩が笑った……? 

「嘘……ですよね?」

「出たッスねぇ♪ 暁の、得意戦術。サーブで相手の動揺を誘って、ドライブ|(回転がかかった強打)で決める」

ドライブ……? それこそ、嘘だろ。今の感触は、スマッシュ|(強打)。これが、

「高校1位実力、ッスかねぇ?」

寿先輩が横で解説をしてくれていなければ、間違いなく、俺はスマッシュと判断して、また同じ過ちを繰り返すとこだった。有難う御座います、寿先輩。

「ビビったか? 少しくらいは」

「……先輩には悪いですけど。全然ですよ」

わざと強がる。相手が強ければ強いほど、俺は、高みを目指せる。

 シュンッ……! ラケットが、風を切る音。冷静になって考えてみれば、それが下回転ってことが分かる。だから……俺はツッツキ|(下回転のレシーブ)を、的確に、俺からみて右。先輩からみると左に返す。 

「ふつうなら、ムリですよね?」

でも、先輩は普通じゃない。絶対に、拾うはずだ。ボールを。

「普通だよ。執着心くらいな」

先輩は、ドライブのモーションに入った。 ラケットがボールを捕らえた瞬間、先輩の口が緩んだ。

「甘いですよ。先輩」

ダンッ!! もしかすると、『ダンッ!!』よりも『カンッ!!』の方が良かったかもしれない。でも、今は『ダンッ!!』って聞こえたんだから仕方ない。

「おぉ……!」

大鉄先輩が、初めて俺を認めてくれた日だった。

ラブが最近ない気がしますね(スミマセン)。

どうしても、卓球と恋愛を結びつけると、僕の性格上、卓球に偏るような気がします。

でも、大鉄先輩との試合が終わったら、ラブにいく予定なので! もう少しまってくださいね?

それでは、また次話で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ