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やっぱりここが一番の場所!

 ダンッ! そんな効果音が一番似合うであろうチーちゃんの立ち位置。教卓の後ろに椅子に座って俺らの監視。正直、変な強面教師よりも威圧感はあるかも知れない。

「はじめてください」

そのチーちゃんの言葉に反応して、俺らはシャーペンを右手――もしくは左手――で持ち、紙を裏返す。

『 2学期中間テスト~数学~』

そう書かれた紙。もう分かりましたよね? そうです、今日はテストです。チーちゃんの話を聞いてから、俺の勉強ははかどらなかった。そんなのは昨日の話。今はテストに集中しないとね。

「……」

誰も話さない教室は、なんか雰囲気が違う。テスト、早く終わるといいなぁ……。

 

 終わった。

「ふぅぅぅぅ」

「お疲れ様」

大きな息を吐く俺に声をかけてくれたのは、憲吾だ。

「お疲れ。……余裕、だったのね?」

「え? いやいやいや! そんなことないって。満場一致でいつも通りです」

そのいつも通りが羨ましい。つーか、満場一致で何人一致したんだよ? 憲吾は、簡単に言えば勉強がかなりできる。親が医者かなんかで、めちゃくちゃ頭が良い。もちろん、勉強もしたんだろうけどさ。

「いや~、俺、今日ガンバった!! 今日は遊び尽くそうぜ、相棒!!」

そう言って、元樹は憲吾に抱きつく。

「誰が相棒だ、馬鹿。それに、いつも遊んでんじゃねーかよ」

うん。ナイスツッコミだ、憲吾。

「じゃーいーよ、今日はナンパでさ」

「成功したら、いいですね」

「えっ!? 他人事?」

「だって他人事だもん」

ハハ。コイツら、ますます芸人化してんじゃね~の?

「……ノブも、行く? 今日くらいいいんじゃないの?」

「……」

こないだも遊べなかったし、今日くらいならいいかな? 

「ば~か、全国狙う俺は、休めないんだよ」

「そっか、練習頑張れよぉ」

「分かってるつーの」

元樹は俺を笑顔で送り出してくれた。サンキュな、元樹、憲吾。俺は、良い友達を持ったよ。

 そうゆうわけで、俺は部室に行った。

「……」

「……あのぉ、城峰コーチ」

大鉄先輩をはじめとした先輩達がチーちゃんと向かい合っている。

「こんにちわぁ」

「おっ、おぉ。村井。城峰コーチが話があるらしいんだけど……」

「黙り込んでいるワケですね?」

大体の予想はついたので、スムーズに会話は続いた。

「そうなんッスよぉ!! んで、ここは、同居人の村井にッスねぇ」

「分かってますよ」

俺は寿先輩の発言が終わる前に堂々と前に立った。

「チーちゃん、アレは話さないといけないでしょ? 緊張するのはわかるけどさぁ」

「? なんだ、村井も知ってるのか。だったらお前が話してくれ」

「へ?」

チーちゃんが発表しなければいけない問題だと思っていた俺にとって、大鉄先輩の発言は意外なものだった。

「いや、その、ね? 部活の重大発表的なものは顧問かコーチがするものじゃないかとぉ」

「でもさ、コーチがこんなんじゃ、仕方ねぇじゃん」

荒木先輩の発言はズバリ的を得ている。

「チーちゃん……?」

俺は唯一の助け舟ともいえるチーちゃんに求めた。

「トシ、任せた!」

任されたぁ!!? 仕方、ないのか? 俺は覚悟を決めて息を1つ吐いた。

「今から言うことは、本当のことなので、言い終わった後にボコボコにするとかいう、漫画的テンションは止めてくださいよ」

俺は注意事項だけ告げると、昨日聞いた内容を先輩方にお知らせした。

「「「「「……」」」」」

やっぱり。言葉にならないよな。俺だって、数秒は言葉をなくしたしな。でも――。

「俺らより一番責任を感じているのは、多分チーちゃんです。この高校に赴任して最初の大会であの星鐘高校と当るんですからね。それに、」

「負ける気はなぇしな!!」

今度は俺の言葉を荒木先輩が止めた。

「まっ、何とかなるでしょ」

森崎先輩……。

「ま、負けられないなら、練習するから」

服部先輩……。

「それにさぁ。負けたら俺が恥ずかしいッスからね」

寿先輩……。

「うん! 負けたら俺が悔しいし、お前達も悔しい思いをする。それだけは避けたい」

大鉄先輩……。

「村井は何か言うことねぇの?」

森崎先輩に進められて、

「試合に、出れたら、勝ちますけどね」

「「「「出させねぇよ!!」」」」

「俺も、頑張るから」

俺の生意気発言――?――に、先輩達は背中を押してくれた。

「先輩達はやる気だよ? チーちゃんは、どうするの?」

チーちゃんがやる気にならないと、次のステップには進められない。

「……。皆、外に出て」

チーちゃんは小さな声でそれだけいうと、部室を後にした。

「? なんだろうな」

大鉄先輩が直球で疑問を言葉にした。

 外。風が吹いていて意外と涼しく感じる。

「今日から本格的に全国高校総合体育大会卓球競技予選大会の、練習をはじめます。相手の星鐘高校は基本的に体力作りを主にしています。技術面では、負けていないと思うけど、やっぱり体力は必要よね? と、いうわけで! 今から残りの11日、今日を含めると12日は、1時間分以上をランニングに当てます。いい?」

「「「「「はい!」」」」」」

チーちゃんは本当に凄い。選手の気持ちが切り替わるとすぐに自分の気持ちも切り替える。そんなこと、人間ってできるんだ。

「コーチ、何キロですか?」

「ん~と……」

まぁ、せいぜい10キロくらいだよね? その後に練習もあるんだから。

「最低で15キロは走ってもらいます。それに加えて! スピード測定も行って、平均的な分速250メートルを維持できか測定します。バランス的な体力をつくることを目的としています。質問ある人?」

誰も手を上げない。分速250メートルがどれくらいか想像できないからか? でもこの後、分速250メートルって、不可能じゃね? って思うことを、俺らはまだ知らなかった。

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