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チーちゃんとのデート?

 翌日。昨日なかなか寝付けなかったからか、体が重い。今の時間は8時15分。チーちゃんとの約束まで45分もある。

「シャワーでも浴びっかな……」

ベットから降りる。風呂場に行こうとするけど、体が言うことをきかない。ただボーっと立っているだけの時間が過ぎる。 数十秒後、やっと体が動いた。ドアを開け、階段を下りる。

「バスタオルは……っと」

風呂場について、バスタオルを探す。バスタオルは棚の2段目に入っている。いつも使っている黄色のバスタオルを持った。

「ん?」

バスタオルを開くと、紙が入っていた。

「洗濯の、後だよな?」

いつも洗濯をしているのはチーちゃん及びお母さんだから、よくは分からないが、手紙を入れるとしたら故意的なはずだ。つい好奇心に負けて紙を開いた。

『今日はどんな日にしたい? 私は、トシの笑顔がいっぱい見れれば嬉しいな。帝國大学の試合をみた後も、笑顔でいてください』

その文字は、間違いなくチーちゃんの字だ。

「チーちゃん……」

チーちゃんは、俺が風呂に入ることを予測していたのだろうか。だとしたら凄いと思う。

「試合を見たくらいで無表情になるかっつーの!」

俺はそう『チーちゃん』と『自分』に言い聞かせると、シャワーを浴びた。

 9時になると、リビングにチーちゃんの姿が見えた。

「おはよ」

「おはよう、トシ」

笑顔でそうチーちゃんは言ってくる。

「お風呂、入ったの?」

「うん」

俺は、チーちゃんに悪いことをしたなと改めて反省した。俺は結局、バスタオルを黄色ではなくてピンクのを使った。それを読んだと思われたら顔をどう合わせたらいいか悩みそうだったから。

「じゃぁ、行く?」

「うん!」

満面の笑みで返答するチーちゃん。この人、普通に可愛いのな。まっ、今となっては普通に見えるんだけどね。

 最初に向ったのは近くにある大型ショッピングモールだ。チーちゃんのリクエストでゲーセンってのも入っていたから、ゲーセンもショッピング店もあるところを選んだ。

「わぁ! 私、こうゆうとこ来るの初めてなんだよね」

「へぇ。意外だね」

「うぅ~! 全然興味なし!?」

チーちゃんは駄々をこねる子供みたいだったので、先に歩く。

「あっ、待ってよぉ」

チーちゃんは走って俺と肩を並べる。まだ若干チーちゃんの方がでかいな。

「まずはどこいくの?」

何となくきいてみる。

「う~~~~~~~ん……トシに任せる!!」

「任せるって……じゃぁ、最初はゲーセンで良くね?」

「OK!」

凄く発音の良い英語でチーちゃんが返したのをきいてから、俺はゲーセンを探した。正直、ここに来ることはあんまりないので、位置がよく分からなかった。 ようやく見つけたところで、チーちゃんは一目散にユーフォーキャッチャーに向って走っていった。

「どんだけハシャグんだよ」

俺はそう愚痴をこぼしながらもチーちゃんに着いていく。

「これ!」

俺が追いつくと、チーちゃんはひとつのゲームを指差して俺をにらんだ。正直怖い。ゲームの景品は最近良く見るアニメの財布だった。

「財布が欲しいの?」

「うん!」

子供かよ……。俺はそう思いながら、100円を取り出す。

「多分、こうゆうので200円じゃないから取りづらいよ?」

「いい!」

1言で返すチーちゃんには何も逆らえない。 「いくよ」

俺はボタンを押す。機械音が鳴っているとは思うが周りの音楽でかき消されている。たまに思うんだけど、ゲーセンの音楽って取りにくくする役割があるんじゃね?

「……あれ?」

持ち上がらないと思っていた財布は、普通に持ち上がった。それで、そのまま取り出し口に運ばれた。

「やったじゃん!? トシは凄い!」

横でチーちゃんが喜んで財布を取っていた。

奇跡の100円ゲットを見たことで満足したのか、チーちゃんは自分の金は一切使わないでゲーセンを後にした。 それで、今はショッピング中。

「ねぇねぇ、どっちが似合う?」

秋服を交互に合わせて俺に聞いてくるチーちゃん。でもこう時って結局、チーちゃんの好みで決まるんでしょ? でも答えないと不機嫌になりそうだしなぁ。

「俺はそっちの茶色が良いと思うよ」

「でもね」

ほらきた。

「私はこっちの紅葉色がいいと思うんだぁ。でも、トシがこっちって言うならこっちで決まり!」冗談だろ? チーちゃんは俺が選んだのを選ぶのかよ……。改めてチーちゃんの謎ができたな。

「お待たせ~」

チーちゃんは笑顔で買い物袋を下げていた。

「トシは何か欲しいのないの?」

「ん? 大丈夫。金もないし」

「はぁぁぁぁ」

俺の言葉に、チーちゃんはため息をわざと俺に聞こえるようにはいた。

「私はこれでも働いてるんだよ? お金のことは大丈夫! 今日は私がプレゼントしてあげるって」

「本当!? ありがとう、チーちゃん!」

俺はそう発言してから、自分の馬鹿さを実感した。ここは公共の場なのを忘れて……。

「ふふっ。真っ赤になってるトシも可愛いなぁ。もぉっ! 食べちゃうぞ」

「チーちゃんが言うと、本気に聞こえる」

「本気だもん」

「だもんって……」

俺は少しあっけに取られながらも、自分の行きたかった本屋に向った。

 「何か欲しいものでもあったにの?」

「うん」

本屋に着くと、俺はまず漫画コーナーに向って新刊が出ていないことを確認すると、小説のコーナーに移動した。本命はこっち。

「俺の好きな作家さんの新刊が発売なんだ♪」

「なんか、今日一番の笑顔……」

チーちゃんの発言を無視して、俺は新刊こーナーに向った。そこには、大々的に本の宣伝がしてあった。『大事な人に、伝えたい言葉、ありますか? 締切りがッ! 好評発売中!!!』。俺はその本を手にすると、チーちゃんの所に向った。

「お願いします」

「へぇ。トシもこの人の本読むんだ。恋愛系には全く興味ないと思ってた」

「俺はこの人の書くサスペンスものの方が好きなんだけどね。だからこの本は買わないと思ってた。だから本当に助かります」

俺は改めてチーちゃんにお礼を言った。チーちゃんは少し嬉しそうにしてレジに向った。

「はい」

「ありがとう」

俺はチーちゃんから本を貰う。

「じゃぁ、行こうか」

「うん」

チーちゃんの空気が一瞬だけ変わった気がする。何か、いつも以上に真面目な雰囲気が。俺はケータイの時計を見た。『11時43分』結構な時間ここにいたことになるが、俺は疑問に思った。

「でも、5時からでしょ?」

「うん。だから、その前にお昼ご飯と、席取り」

「ふ~ん。そんなに人気なんだね」

「当たり前だよ。あの帝國大学の試合だからね。満場御礼は覚悟だね。ご飯は、何がいい?」

チーちゃんの問いかけに、俺は間を入れずに返した。

「ここで食べるの?」

このショッピングモールに、チーちゃんの好きな食べ物店はない。とういうよりも、食べ物店が異様に少ない。俺は近くのファーストフード店でいい。というと、チーちゃんも賛成した。

「じゃぁ、そろそろ移動しないと。いくよ」

チーちゃんは、車の鍵を見せつけた。あぁ、書き忘れていたけど、チーちゃんはキチンと車を持っている。

 数十分後。(きちんとご飯も食べた)近くの国営体育館に着くと、そこは熱気であふれていた。会場の外からでも分かる。中ではとても熱い試合が行われている。

「いこうか」

「うん」

俺とチーちゃんは正面玄関から中に入った。

「凄ぇ……」

言葉も出ないという言葉があるけど、正に今の俺はそうゆう状態だった。高校と大学ってだけで、これだけ違うのかよ……。

「ほら、始まるよ」

チーちゃんは首で2つの台をさした。そこには選手とあの帝國大学監督の桐谷さんがいた。選手達のゼッケンには『帝國大学』と書かれていた。

「あれがAチーム?」

俺があえてAといったのは、まだ時間じゃないことがあった。でも、チーちゃんの口からは、信じられない言葉が出た。

「ううん。あれはもうSチーム。私としたことが……まさかこんなにも早くSチームに回ってくるなんて」

「もう、Sチーム? だってまだ時間じゃ」

俺がそこまで言うと同時にチーちゃんが止めた。

「帝國大学のほかのチームが早く試合に片をつけたってことよ」

「マジかよ……」

試合が早く終わって試合の流れ縮まることはよくあるけど、時間単位で縮まることはほとんどない。とゆよりも、俺はそんな大会見たこと無い。

{ただいまより。第24回全国大学卓球大会協会大会決勝を始めます。帝國大学対大月巳(おおつきみ)大学の試合です。静かにしてください}

アナウンスが入ったが、その前にもう皆静かにしていた。

「チーちゃん、大月巳大学って、全国何位?」

「しらない。だって、きいたことないもん」

へぇ。そう言おうとしたんだ。俺は。でも、チーちゃんの言葉に反応して、いえなかった。

「ほら、あれが、人間の卓球に見える?」

「え?」

後は言葉は要らない。だって、魅入っていたんだから。帝國大学の卓球を『ロボット卓球』って現す人がいるけど、正にその通りだった。冷静沈着で、ネットにかかったボールも無表情で拾う。相手がどんなに声を張り上げても、動揺することなく試合を運ぶ。相手の大月巳大学の選手は合計で、『2点』しか取れていなかった。そう、3試合、2シングルス1ダブルスで……。それでも、チーちゃんの反応は凄いものだった。

「帝國大学に2点って凄いよ」

俺は、チーちゃんがなんであんな手紙を書いたのか分かった。帝國大学の試合を見たひとには、感情がなくなる。チーちゃんの表情も、無表情だった。

「トシ、試合しても、あぁはなっちゃダメよ」

チーちゃんの視線の先には、さきほど帝國大学に完敗した選手と監督がいた。

「うそ、だろ……」

大月巳大学の選手と監督は、無表情で無表情だった。何も感じないロボットになったかのように。

「行こっ、トシ。こんな試合、目の毒」

「えっ」

チーちゃんはこのとき初めて俺の手を無理やり引っ張った。

「……」

「……」

車に乗っている間、チーちゃんと俺は何も話せ状態だったのは、書くまでもないと思う。あそこまで完璧な試合をみせられて、体が熱くならないのは初めてだ。

「……っあ」

俺は気づいて、無理矢理作った。

「チーちゃん」

「何?」

ニコッ。自分の笑顔にそうゆう擬音語をつけるのはどうかと思ったが、それよりも約束が第一だ。俺は今日一番の笑顔をチーちゃんに見せた。

「……トシ、りがとうね」

「大丈夫だよ。俺は、俺たちは、あんなロボットに……。卓球を楽しんでいない連中には負けない」

俺は抱きかかってきたチーちゃんに優しく呟いた。その時のチーちゃんは少し涙ぐんでいて、結構ドキドキした。

「チーちゃん……」

チーちゃんは目を閉じてを俺を見てきた。何を伝えたいのかは分かる。が。

「信号、変わってる」

「うわぁぁぁ!」

チーちゃんは、今運転中だということを忘れていたのだろうか? まぁ、それがチーちゃんっぽいけど。 因みに、チーちゃんは途中で何度も、

「トシのKY」

とブツブツ言っていた。そのたびに、俺は寝た振りをしていた。そして、自分で墓穴をほったことに気づく。

「トシ、着いたよ」

家についても、それを続けなくてはいけないのが辛い。普通ならばそこで寝かせておくのだが、チーちゃんは違う。

「もぉ……」

そういって、唇を俺の頬につけた。

「次は、目を開けてるときね……」

チーちゃんは1人言のように呟いた。やべぇ。バレてるな、こりゃぁ。

 俺は、今日は風呂に1人で入れるように神に祈った。

 負けない。俺は、帝國大学には……!

 余談:俺はこのときのチーちゃんのキスが初めて頬にされたキスだった。え? 唇ではあるかって? そりゃぁ、中学の時に彼女とはしたような、しないような、な? まぁ、ファーストキスは、チー○ゃんだったけど。

今回は、どうだったでしょうか? チーちゃんとトシのキスシーンが無理矢理って……といった感じが僕自身はするんですが、約束(?)もしましたしね。

では、次話をお楽しみにぃ~!

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