中途半端な気持ち
遠藤と向かい合った状態。遠藤は、俺の返答を待っている。
正直、今好きな人はいない。だから、付き合っても別に支障はない。部内で彼女いないの、俺だけだし。……でも、本当にそれでいいのか? 俺は自分に嘘を言うことになるんだぞ? それに、それは遠藤にだって失礼だろ。だけど、その言葉が言葉として口から出ない。
「……俺は」
中学時代の武藤先生は言った。「言葉に困ったらまずは主語を言え。本文を考えるのは後ででいい」。俺はその武藤先生の言葉を信じ、主語を言った。
「遠藤のことは、正直、好きじゃない」
俺がそういった瞬間、遠藤の顔が強張った。武藤先生はこう続けた。「だけど、女性と話すときは言葉を考えろ」と。つーか先生。そうゆうのは早めに言ってよ……。
「でも」
俺は続ける。小学校時代の河合先生は言ったんだ。「もし悪いことを言ったら、『でも』『しかし』って反対語をつけよう」って。
「お前の性格とか、顔がってわけじゃない。まだ、自分の気持ちが中途半端だからさ。こんな気持ちのまま、返事はしたくない」
俺の思いつく言葉は決して良い言葉じゃないのは分かってる。だからこそ、伝わる想いってのがあるんだと思う。
「そっか。残念だけど、ありがとう。中途半端な気持ちでOK貰っても傷つくだけだから。私村井くんのそういう所が好きだよ」
遠藤はそう言うと再び笑った。
「今日、帰り大丈夫か? さっきのことあるし、送っていくよ」
俺は、遠藤に言った。告白を断ったからじゃなくて、自然に出た言葉。そのほうが気持ちは伝わるのかな?
「だ、大丈夫だよ。それに、約束あるんでしょ? そっち行かないと。今日は、ありがとうね」
遠藤はそれだけ言うと、保健室を出た。
テスト前なので、少し短かったと思います。
次話は大丈夫だと思いますので、よろしくお願いします