チーちゃんの優しさ
今回は10話と同じ時間に書いたので、短めです。
チーちゃんとの電話を終えてから3時間後。やっとチーちゃんが帰ってきた。
「何だよ、話って?」
「これ!!」
チーちゃんは玄関先でノートを5冊見せてきた。全て俺のノートだ。
「あっ」
「『あっ』じゃないよ! 今日の練習が終わったときノートは取りにいくように言ったでしょ?!」
「う……ん」
俺は不味いことをしたと覚悟した。
「トシの隣の席の遠藤さん? だっけ。が! ずっとトシのこと待ってたのよ」
「いや、だって、ノートは席に置いてあると思うってチーちゃん言ってたじゃん。だから、明日の朝でもいいなぁって思ったの」
「でも、遠藤さんは待ってたんだよ? 明日になったら謝りなさいよ」
「うん、分かった」
俺は眠気が限界だったのもあってか、とりあえず頷いた。
「おやすみ」
チーちゃんはそのまま寝室に向った。
「おやすみって、お風呂は? 飯は? 俺もまだなんだけど」
「そのくらい自分でできないの?」
チーちゃんは俺の返答を待たずに寝てしまった。
「チーちゃんも俺と同じか」
俺は少し寝たから機嫌は直ったが、チーちゃんは遅くまで仕事(?)をしてたんだから機嫌が悪いんだと思う。
俺は玄関に置かれたノートを取ると部屋に戻った。
ノートを開くとそこにはビッシリと綺麗な字で板書されていた。
「凄っ。遠藤が字上手いのは知ってたけど……ここまでかよ」
それにプラスとして『一口メモ』として先生の言った小さなアドバイスまで書いていた。正直、このノートがあれば授業は無くていいってレベルだ。
「ん?」
今日の7時間目の授業だった『国語』のノートに小さな可愛らしい紙がはさんであった。
『村井くんへ 今日は練習お疲れ様。私も、ノートとるの頑張ったよ♪ 力になれたかなぁ? 明日も練習頑張ってね。 遠藤 』
その手紙を読んだら、なんでチーちゃんがあそこまで怒ったのか分かる気がしてきた。遠藤は、俺のことを本当に待ってたんだ。それなのに……。
「明日、謝んないとな」
俺はそう言うと、ベットに潜った。
俺にとって、チーちゃんの優しさと遠藤の健気さが分かった日だった。