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ケンチとマーちゃん──転生して25年、やっとアイテムボックスが使えるようになったんだが、中に『変なトカゲ』が住んでいて俺に色々と頼んでくる  作者: お前の水夫
第1章 トカゲさんと探索

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第9話 ひのきの棒パワード

「マーちゃん! クソッ、退け、ゴルァァァァ!!」


 コボルトどもは俺の方にも10匹ほど押しかけてきた。


 マーちゃんのところに行きたいが、目の前の原始人をどうにかするのが先だ。俺は腰の曲刀を抜くや、近寄ってきたヤツの首を3つほどなで斬りにした。


 これは切り札の1個目を出さないとしのげそうにない。


 俺は大きく踏み出すと空中を(▪▪▪)走って身体を地面と水平に傾けながら、後続のコボルトをさらに3匹片付け、押し寄せて来ている連中の後ろへ抜けた。


 今のは『空歩の術』だが、これがスタミナを意外と食う。


 こっちの魔法は全部そうだが、スタミナを消費して使うわけだ。精神力が減るのはつらい思いをしたときと、大きい怪我けがや病気をやったときだけだ。


 最初のコボルトども10匹を殺しきったところで、ようやく周りの様子をうかがうことが出来た。


 黒クモさん達は、近寄ってきたコボルトどもを150センチメートルもありそうな六角ろっかく棍棒こんぼうでブチのめし、さらには隠し腕らしき物を出して、連中の一部を生け捕りにしているようだった。

 クモのあごにしか見えないパーツは、折りたたまれた腕だったらしい。そこから針やら電撃をヤツらに食らわしていた。

   

 ぶっ倒れたヤツが、空気に溶けるように消えているところを見ると、アイテムボックスの中にあるフロアに収納してるんじゃないかと思う。アレには、魔法の気配を感じるから『転送の術』ってやつじゃないだろうか。


 入り口担当の俺と、距離が離れているのに何て器用な真似まねをしてるんだ……。


「マーちゃん、そっちはどうなってんだ?」


 声をかけるのは俺が危険かもしれないが、普段からお世話になっている立場だ。マーちゃんの現状を把握しておかないといけない。


「ケンチ、無事だったか。流石さすがだ。私は自分のコミュニケーション能力というものがそれほど大したことがない、という事実に打ちのめされているところなのだ」


 実際、マーちゃんは今でも物理的に打ちのめされている真っ最中だった。10匹のコボルトどもは、先ほどから延々(えんえん)とマーちゃんに棍棒を叩きつけていた。

 自分たち以外の連中が、とっくの昔にられるか捕まるかしたというのに、奴らは口からヨダレをき散らしながらこちらを見ることもしなかった。


 袋叩ふくろだたきの目にあっているはずのマーちゃんについては、心配する必要が無さそうでとりあえず安心した。


 コボルトどもの棍棒こんぼうは、マーちゃんの身体に届いていなかったのだ。


 魔法の気配がするから『障壁しょうへきの術』であるとか『防盾ぼうじゅんの術』を使ってるんじゃないだろうか。このトカゲ姉さんの防御力は、俺が考えていたよりもずっと強固なものなのだろう。


「私はこれでも色々な世界を見てきた。イヌ科やネコ科に近い知的生命というのも観察したことがある。もしもだ、コボルト語が彼らの言語体系に近いものであれば上手く行くのではないかと思ったのだ」


 「ルールルルルル」ってのは絶対に違うだろ、と思いながら俺はマーちゃんの言い分を聞いていた。


 知識があるということは、時に人を尊大そんだいにするものだが、マーちゃんは相手をいきなり『ぶっ殺す』という選択をしたくなかったんじゃないだろうか。


 ロボットさん達を見ていれば分かるが、マーちゃんは冷酷れいこくな判断を下すことはある。しかし選択肢せんたくしが他にもある場合は、平和的な手段から試していくということなんだろう。


「あれはイヌ語のワードだと思うんだが、それを念話で話した瞬間に彼らがおこり出してしまってな。何とか近そうな言葉が見つかったので、挨拶あいさつをしてみたらさらに収拾しゅうしゅうがつかなくなってしまったのだ」


 マーちゃんは『ある国に旅行に行ったときに言ってはいけない言葉』というやつをすごい確率で引いたらしい。奴らが爆発したきっかけは、よりにもよってマーちゃんだった。


「マーちゃん、不幸な行き違いがあったのは残念だと俺も思うぜ。ただ、こっちの国じゃ奴らは人間の敵ってことになってる。本当は森に入らなきゃまず会うことはねえんだけどな。いい加減そいつらをどうするか決めてくんねえかな?」


 俺がそう声をかけると、マーちゃんは目をつぶって首をかしげ考えこんでしまった。マーちゃんには、ちゃんとまぶたがある。


 ちなみにコボルトどもはどうなっていたかと言うと、7匹ほどがゼーゼー言いながら地面に座りこみ、残り3匹はヘロヘロだがまだ頑張っていた。


 3匹の方はよく見ると木じゃなくて鉄の棒を振ってる。きっとリーダー格なんだろう。


「ここは仕方がない。ひのきの棒パワードなのだ……。黒クモさん、言いたくはないがコボルトたちを大人しくさせてほしい」


 マーちゃんがとうとう黒クモさん達に命令を下した。


 『ひのきの棒パワード』というのは、例の150センチメートルもある六角棍棒ろっかくこんぼうじゃないだろうか。風呂場みたいな良い香りがすると思うんだが、あいにくと今は血まみれだった。


 黒クモさん達は5秒ほどでコボルトどもをブチのめして、さっさと転送してしまった。あの広大なフロアの何処どこかに収容施設でもあるんだろう。


 そう言えば、俺のアイテムボックスには生き物を入れる事が出来る。俺も入って寝ているのに今ごろになって思いいたってしまった。









※お読みいただきましてありがとうございます。




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