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学園で無能扱いされた俺、鑑定不能なだけで全属性最強でした ~面倒なので黙ってたら、なぜか学園と国に監視され始めた件~  作者: 黒羽レイ
第1部 基準にならなかった男

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第51話 置けない場所

 同時多発――という言葉を、俺は報告書の中でしか見たことがなかった。


 それが実際に起きたのは、夜明け前だった。


『境界域A、異常兆候』

 続けて、

『境界域C、同種反応』

 さらに、

『境界域D、観測不能事象』


 管制室の空気が、目に見えて固くなる。


 隊長が端末を睨んだまま言った。


「三点か」


 誰も、すぐに返事ができなかった。

 三点同時は、対応手順が存在していても、現実には対応しきれない。


 俺は、端末の地図を見つめる。

 点が三つ。

 距離は離れている。


(……同時には無理だ)


 それは、当たり前の事実だった。

 それでも、胸の奥が少しだけ沈む。


 調停局の男が、短く指示した。


「作戦会議。すぐに」


 小会議室。

 集まったのは最小限の人数だった。


 調停局の男。

 管理担当の女性。

 騎士団の作戦統括官――見慣れない男が一人。

 そして隊長。


 男は名乗った。


「アレク・ヴァルド」

「作戦統括を担当する」


 声は淡々としている。

 感情が見えない。


 彼は地図を机に広げ、三つの地点を指した。


「Aは都市近接」

「Cは街道沿い」

「Dは観測点そのものが乱れている」


「優先順位を決める必要がある」


 隊長が言う。


「Dが最優先だ」

「観測不能は、広がる」


 管理担当の女性が続ける。


「ただし、Dは距離がある」

「到着までに時間がかかる」


 アレクは頷くだけだった。


「問題はそこではない」


 彼の視線が、初めて俺に向く。


「ノア・エルディンをどこに置くか」


 言葉は、事務的だ。

 でも、その一文で部屋の温度が変わった。


 俺は、何も言わない。


 言えば、それだけで関与になる。

 決める立場に近づく。


 調停局の男が先に釘を刺した。


「彼に判断を求めるな」

「条件は維持する」


 アレクは、首を縦に振った。


「理解している」

「だから、提案する」


 彼は三つの案を並べた。


「案一:Aに固定」

「都市被害を最小化する」

「CとDは通常戦力で対応」


「案二:Dに投入」

「未知の拡大を止める」

「AとCは被害許容」


「案三:機動運用」

「状況に応じて移動」

「ただし、間に合わない可能性が高い」


 どれも、嫌な案だった。


 つまり、どれを選んでも外れる場所が出る。


 隊長が低く言う。


「……詰みだな」


 アレクは、淡々と返す。


「詰みではない」

「被害が出るだけだ」


 正しい。

 だからこそ、残酷だった。


 管理担当の女性が、俺の方を見た。


 出ろ、とは言わない。

 ただ、確認してくる目だ。


 俺は、静かに言った。


「俺は、判断しません」


 それだけ。


 調停局の男が頷く。


「それでいい」


 アレクは、一瞬だけ目を細めた。


「なら、現場判断で決める」


 彼は地図を指で叩いた。


「Aに置く」

「都市近接の被害は政治的に許容できない」


 即決だった。

 迷いがない。


 隊長が言う。


「Dは?」


「通常戦力で遅延させる」

「Cも同様」


 管理担当の女性が顔をしかめる。


「それで、間に合う?」


「間に合わない可能性はある」


 アレクは事実だけを言う。


「だが、Aを捨てる判断は国家にできない」


 会議は終わった。

 結論は出た。


 出発準備。

 俺はAへ向かう隊列に組み込まれる。


 馬車の中。

 隊長が、ぽつりと呟いた。


「……お前がいると、決めやすい」

「それが、怖いな」


 俺は、返事をしなかった。


 境界域A。

 空気は乱れている。

 だが、まだ制御できる範囲だ。


 現場は慌ただしく動く。

 俺は中央に立つ。


 数分後、魔力の流れが安定した。


「収束、確認!」


 声が上がる。


 交戦は最小。

 被害は抑えられた。


 その瞬間、管制から第二報が入った。


『境界域D、拡大』

『観測点の結界が破断』


 隊長の顔色が変わる。


 誰も俺を見ない。

 だが、空気が答えを持っていた。


 ――置けない場所が、確かにある。


 俺がどこにいても、

 世界はすでに「外れる地点」を作り始めていた。


 それでも俺は、まだ動かない。


 動けば、世界はもっと安易に俺を使う。


 その確信だけが、

 胸の奥で冷たく固まっていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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