表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園で無能扱いされた俺、鑑定不能なだけで全属性最強でした ~面倒なので黙ってたら、なぜか学園と国に監視され始めた件~  作者: 黒羽レイ
第1部 基準にならなかった男

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/87

第42話 行けなかった場所

 境界域Bの報告書は、

 数字だけを見れば軽いものだった。


 死者ゼロ。

 重傷者なし。

 住居損壊、数件。


 それだけなら、

 いつもの範囲だ。


 だが、

 添付された聞き取り記録が

 俺の目を止めた。


「あの人が来ると聞いていた」


「だから、

少し様子を見ても大丈夫だと

思ってしまった」


 報告書を、

 一度閉じる。


(……俺、

 名前出てたのか)


 正式な発表は、

 一切されていない。


 だが、

 現場では違ったらしい。


 翌日。


 管理担当の女性が、

 珍しく資料を持ってきた。


「……B地点の、

 住民対応の記録よ」


「見ても、

 大丈夫ですか」


 気遣いは、

 正直ありがたい。


「……見ます」


 資料には、

 現場の声がまとめられていた。


「ノア様が来ると

聞いていた」


「来なかった理由は、

何だったのか」


「来てくれていたら、

家は守れたのでは」


 責める言葉ではない。


 問いかけだ。


 だからこそ、

 胸に残る。


「……誰が、

 そう言ったんですか」


 彼女は、

 少しだけ間を置いて答えた。


「地方自治体の、

 連絡網ね」


「“同行予定”という言葉が、

 独り歩きした」


 悪意はない。


 ただの、

 善意の連鎖。


 それが、

 一番厄介だ。


「国家は、

 どう対応してるんですか」


「謝罪と補償」


「それ以上でも、

 それ以下でもない」


 きっぱりした答えだった。


 正しい。


 だが。


(……俺の名前、

 もう“安心材料”に

 なってるな)


 午後。


 訓練場の外で、

 作業員たちの会話が聞こえた。


「今回は、

 運が悪かったな」


「ああ。

 ノアが来るって話、

 あったのに」


「同時だったらしい」


 言葉は、

 淡々としている。


 誰も、

 俺を責めていない。


 それでも。


 来るはずだった

 という前提だけが、

 残る。


 部屋に戻り、

 窓の外を見る。


 境界域Bの方向。


 距離は、

 そう遠くない。


(……行けなかった)


 事実だ。


 選ばなかったわけでも、

 拒否したわけでもない。


 ただ、

 物理的に無理だった。


 それなのに。


 「行かなかった」

 という言葉に、

 すり替わり始めている。


 夕方。


 管理担当の女性が、

 ぽつりと言った。


「あなた、

 現地に行く必要はないわ」


「……分かってます」


「これは、

 あなたの責任じゃない」


 何度も、

 聞いた言葉だ。


 それでも。


「でも」


 俺は、

 静かに続けた。


「“来なかった理由”を

 説明できるの、

 俺しかいない気がします」


 彼女は、

 即答しなかった。


 それが、

 答えだった。


 夜。


 再び、

 報告書を開く。


 最後の一文。


「今後は、

同様の誤解を防ぐため、

情報管理の徹底を行う」


 正しい対応だ。


 だが。


 一度広がった名前は、

 簡単には戻らない。


 俺は、

 報告書を閉じる。


 行けなかった場所が、

 少しずつ

 増えていく予感がした。


 それが、

 一番の問題だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ