第37話 それは協力だったが、主導権は最初からなかった
翌日。
俺は再び、
小会議室に呼ばれていた。
昨日と同じ顔ぶれ。
だが、
今日は説明役が一人多い。
騎士団の士官が、
地図を机に広げる。
「これが、
条件付き協力案だ」
地図の上には、
街道、拠点、任務範囲。
見覚えのある場所ばかりだ。
「同行任務は、
これまで通り続ける」
「配置も、
現行のまま」
つまり――
外さない。
「ただし」
士官は、
淡々と続ける。
「指揮権は与えない」
「作戦立案にも関与しない」
「発言権は、
求められた場合のみ」
研究院の女性が、
補足する。
「自主判断での行動は、
原則禁止」
「異変を感じても、
勝手に動かないで」
俺は、
思わず苦笑した。
「……俺、
そんなこと
したことあります?」
「ない」
即答だった。
だからこそ、
釘を刺している。
「責任は?」
聞くと、
調停局の男が答える。
「負わない」
はっきりと。
「結果責任は、
全て現場指揮官と
国家が持つ」
その言葉に、
少し驚く。
「……それ、
国家的に
大丈夫なんですか」
男は、
乾いた笑みを浮かべた。
「大丈夫ではない」
「だが、
現実的だ」
説明は続く。
「任務外での自由行動は、
制限される」
「だが、
隔離はしない」
「外部との接触も、
必要最低限は認める」
つまり。
使う。
だが、
信用はしない。
俺は、
しばらく黙り込む。
昨日見た、
隔離区画が頭をよぎる。
何も起こらない部屋。
終わらない時間。
それに比べれば。
(……こっちは、
少なくとも
外に出られる)
管理担当の女性が、
小さく言った。
「あなたにとっては、
こっちの方が
“生きてる感じ”はあると思う」
否定できない。
「ただし」
調停局の男が、
最後に言う。
「これは、
協力ではあるが」
「対等ではない」
「君は、
決定権を持たない存在だ」
俺は、
ゆっくり頷いた。
「……分かりました」
すぐに選ばない。
だが、
天秤は傾いた。
会議室を出る。
廊下を歩きながら、
思う。
(主導権は、
いらない)
(責任も、
負いたくない)
(……でも)
(何も起こらない場所で
時間が止まるよりは)
(まだ、
マシだ)
部屋に戻ると、
窓の外で
風が吹いていた。
穏やかだが、
動いている。
俺は、
その風を見て
決めかけている自分に気づく。
――これは、
妥協だ。
でも。
妥協できる余地があるだけ、
まだ救いだった。
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