第28話 彼が離れた瞬間、状況は少しだけ狂った
二度目の同行任務は、
初回よりも人数が多かった。
隊長は前回と同じ。
だが、
補助要員が二人増えている。
「今回は、
旧街道の分岐点まで行く」
隊長が地図を示す。
「距離は短い。
危険度も低い」
「ただし――」
一瞬、言葉を切る。
「前回が、
静かすぎた」
誰も否定しなかった。
馬車が進む。
空気は、
前回と同じ。
落ち着いている。
整っている。
(……やっぱり、
似てるな)
俺は、
窓の外を見ながら思う。
しばらくして、
分岐点に到着した。
「ここで、
記録班と補助一名が残る」
隊長の指示。
「本隊は、
少し先まで確認する」
俺は、
名前を呼ばれなかった。
だが。
「……ノア」
隊長が、
少し迷ってから言う。
「お前は、
ここに残れ」
「え?」
一瞬、
言葉が出た。
「問題ない」
隊長は、
淡々と言う。
「ここは安全だ」
「本隊は、
すぐ戻る」
判断としては、
普通だ。
俺がいなくても、
任務は成立する。
「分かりました」
そう答え、
馬車を降りる。
本隊が、
遠ざかっていく。
静かだ。
だが。
(……空気、
変わったな)
ほんのわずか。
魔力の流れが、
乱れた。
記録担当も、
首を傾げる。
「……風、
強くなりました?」
「いや」
俺は、
否定した。
「風じゃないです」
「……?」
言葉を続ける前に。
遠くで、
低い音がした。
――ドン。
地響き。
「……今の、
何だ?」
次の瞬間。
通信具が、
短く鳴る。
『魔獣、確認!
小型だが数が多い!』
隊長の声。
記録担当が、
顔を青くする。
「……前回は、
一体もいなかったのに」
俺は、
無意識に前を見る。
(……ああ)
(離れた、
からか)
だが、
それを口にする理由はない。
『応戦する!
だが、
少し手間取る!』
通信が切れる。
分岐点に残されたのは、
俺と記録担当だけ。
魔獣は、
こちらには来ない。
だが、
確実に“起きている”。
数分後。
本隊が、
戻ってきた。
全員、
軽傷もない。
だが、
疲労の色は濃い。
「……っは」
隊長が、
息を整えながら言う。
「増えたな」
「え?」
「魔獣だ」
「俺たちが離れた瞬間、
湧いた」
誰も、
すぐには言葉を継げない。
隊長は、
俺を見る。
探るような視線。
だが、
問いは出なかった。
「撤退する」
即断。
「今日は、
これで終わりだ」
帰路。
空気は、
前回よりも重かった。
管理施設に戻ると、
隊長が記録担当に指示する。
「発生タイミングを、
正確に書け」
「……はい」
そして、
俺にだけ、
一言。
「ノア」
「はい」
「……今日は、
悪かったな」
「いえ」
何が、
悪かったのか。
俺には、
分からない。
だが。
その夜。
俺が部屋に戻ると、
扉の前に
人影があった。
昨日の女性だ。
「……少し、
話がある」
その声音で、
察しはついた。
これは、
偶然では済まされない。
そう判断した者が、
ついに出た。
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