第2話 無能は演習に参加するな、と言われました
王立魔法学園の授業は、座学よりも実技が重視される。
特に新入生のうちは、魔法演習の評価がそのまま“将来の扱い”に直結する。
つまり――
実技=公開処刑会場、というわけだ。
「次の時間は合同魔法演習だ」
教壇に立つのは、筋肉と権威でできていそうな実技担当教師、ガルド。
声が無駄にでかい。
「クラスを三人一組に分け、基礎魔法の連携を見る」
黒板に、即席の班分けが書き出されていく。
そして。
「……ノア・エルディン」
来た。
「お前は――」
ガルドは一瞬、名簿と俺を見比べ、露骨に顔をしかめた。
「……鑑定不能の、無能だったな」
教室のあちこちでクスクスと笑いが起きる。
はいはい、いつもの。
「本来なら演習に参加させる価値もないが……」
ちらり、とガルドの視線がレオンに向いた。
「アルフェルド。お前の班に入れ」
――おや?
レオンが一瞬、嫌そうな顔をしたが、すぐに口角を上げた。
「構いませんよ。
ただし、足を引っ張らないことが条件ですが」
取り巻きがどっと笑う。
(あー、なるほど)
これはあれだ。
「無能を抱えた自分でも勝てる」という演出用。
俺は内心で拍手した。
(演出に余念がない。優等生の鑑だな)
演習場。
広いフィールドに、魔力で生成された木製ゴーレムが配置されている。
「目標はあの訓練用ゴーレムだ。
班で連携し、制圧しろ」
ガルドが腕を組む。
「ノア。お前は後方待機だ。
下手に動かれても邪魔なだけだからな」
「了解です」
即答すると、また笑いが起きた。
レオンが振り返り、わざと聞こえるように言う。
「聞いたか?
無能は何もしないのが一番だそうだ」
「さすがレオン様!」
「的確な判断!」
うん。
実に分かりやすい。
演習開始。
「行くぞ!」
レオンが火球を放ち、ゴーレムの腕を吹き飛ばす。
確かに実力はある。SSランクは伊達じゃない。
だが。
「押し切る! 最大出力だ!」
「ちょ、ちょっと待って――」
取り巻きの一人が制止する前に、
レオンはさらに魔力を込めた。
――嫌な予感。
次の瞬間。
ゴーレムが、残った腕で地面を叩いた。
魔力反応。
暴走。
「なっ……!?」
ゴーレムが想定外の速度で突進する。
取り巻きが悲鳴を上げ、足をもつらせた。
(あーあ)
完全に判断ミスだ。
俺は小さく息を吐き、指先だけ動かした。
――ほんの少し、風と土を混ぜる。
目立たない。
誰にも気づかれない程度に。
次の瞬間、ゴーレムの足元がわずかに崩れ、体勢を崩す。
その隙に、取り巻きは転がるように逃げた。
ゴーレムはバランスを失い、そのまま自壊。
――演習終了。
一瞬の静寂。
「……今のは」
ガルドが顎に手を当てる。
「アルフェルドの火力が高すぎたが……
結果的に、制圧成功だな」
レオンは一瞬、きょとんとしたが、すぐに胸を張った。
「当然です」
……うん。
(今の、八割事故なんだけどな)
演習後。
「おい、ノア」
レオンが俺を呼び止めた。
「さっき、何かしたか?」
「何も」
「……そうか」
疑ってはいるが、証拠はない。
それどころか――
「まあいい。
無能が何もできないのは、分かっている」
そう言い残し、去っていった。
俺は肩をすくめる。
(理解が早くて助かる)
ただ一つだけ。
演習場の端で、ガルドがこちらをじっと見ていた。
……あ。
(これ、気づかれたかもしれないな)
まあ、いい。
どうせ――
(気づいたところで、
“無能がやった”とは思わない)
評価というのは、
そういうものだ。
俺は静かに、次の授業へ向かった。
無能として。
――今日も平和で、面倒くさくない学園生活だった。
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