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学園で無能扱いされた俺、鑑定不能なだけで全属性最強でした ~面倒なので黙ってたら、なぜか学園と国に監視され始めた件~  作者: 黒羽レイ


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第19話 助けは、来ないと分かった時点で判断は変わる

 迂回ルートは、

 想定よりも狭かった。


 通路幅は二人並ぶのがやっと。

 天井も低く、

 場所によっては屈まなければ通れない。


「……こんな通路、

 記録にあったか?」


 候補生の一人が、

 小声で言った。


「ないな」


 副教官が即答する。


「少なくとも、

 公式な図面には載っていない」


 空気が、

 少しだけ重くなる。


 俺は最後尾で、

 壁に残る痕を見ていた。


 ――削れている。


 それも、

 一定の高さで。


(……歩いた跡じゃない)


(通った、

 というより――)


 考えをまとめる前に、

 副教官が足を止めた。


「……通信、完全に切れた」


 端末を操作しても、

 反応はない。


「外と、

 繋がりません」


 候補生たちが、

 一斉に息を呑む。


「結界の外だぞ?」


「こんな近距離で……?」


 副教官は、

 一瞬だけ目を閉じた。


 判断を整理している。


「いいか」


 低い声。


「今の状況を確認する」


「一、

 通信不可」


「二、

 来た道は使えない」


「三、

 この施設は記録より危険」


 全員が黙って頷く。


「つまり」


 副教官は、

 はっきりと言った。


「救援を前提にした行動は取れない」


 その言葉で、

 空気が変わった。


 誰かが言った。


「……自力で戻るしかない、

 ってことですか」


「そうだ」


 副教官は、

 迷いなく答える。


「だから、

 判断を誤る余裕はない」


 その直後。


 端末が、

 短く震えた。


「……?」


 勘のいい候補生が、

 画面を覗く。


「反応が……

 一瞬だけ、外に」


 だが、

 すぐに消える。


 副教官は、

 その情報を逃さなかった。


「外で、

 こちらを観測している者がいる」


「救援ではない。

 “確認”だ」


 候補生の一人が、

 唾を飲み込む。


「……じゃあ」


「助けは、

 すぐには来ない」


 副教官は、

 現実をそのまま口にした。


 その判断は、

 冷静で、正しい。


 だが。


(……来ない、

 じゃない)


(来れない、だ)


 俺は、

 何となくそう思った。


 確証はない。

 ただ、

 空気の流れがそう告げている。


 副教官が続ける。


「これからは、

 探索ではなく撤退行動だ」


「無理に進まない。

 無理に戦わない」


「異変を感じたら、

 即止まる」


 候補生たちは、

 真剣な顔で頷いた。


 誰も反論しない。


 ――もう、

 浮かれている者はいなかった。


 通路の先で、

 かすかに風が流れた。


 逆流。


 この施設には、

 “奥”がある。


(……でも)


(進まないと、

 戻れない)


 矛盾した状況。


 副教官は、

 その矛盾を理解した上で、

 一つ決断した。


「隊列を、

 組み替える」


「感知役を前に。

 荷物は中央」


 そして。


「……ノア」


 初めて、

 俺の名前が出た。


「はい」


「お前は、

 この位置だ」


 示されたのは、

 感知役のすぐ後ろ。


 雑用の定位置じゃない。


 一瞬、

 候補生たちの視線が集まる。


「……なぜ?」


 誰かが、

 小さく呟いた。


 副教官は、

 理由を説明しなかった。


 ただ、

 こう言った。


「今は、

 それが一番安全だ」


 それだけ。


 俺は、

 言われた通り位置を変える。


(……安全、ね)


(俺が、

 そう見えるとは思えないけど)


 隊列が再編され、

 一行は、

 慎重に進み始めた。


 俺は、

 一歩一歩、

 床の感触を確かめながら歩く。


 ――不思議と、

 危険な揺れは起きない。


 理由は、分からない。


 ただ。


(……さっきから、

 通路が“静か”だ)


 あの金属片を蹴った時と、

 同じ感触。


 何かが、

 こちらの動きに

 合わせている。


 外では、

 誰かが状況を“見て”いる。


 中では、

 助けを期待しない判断が下された。


 その二つが重なった瞬間、

 この任務は完全に別物になった。


 俺は、

 無能の雑用のまま、

 その中心を歩いている。


 まだ、

 誰にも気づかれずに。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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