第13話 任務に選ばれた者たちは、まだ何も知らない
学園外任務の候補に選ばれた生徒たちは、
正直に言って――浮かれていた。
「実戦扱いだぞ?」
「しかも危険度は低い」
「失敗しても評価は下がらないらしい」
そんな言葉が、演習場のあちこちで飛び交っている。
ガルドは腕を組み、
その様子を黙って見ていた。
(……軽い)
それが、率直な感想だった。
任務内容は、
学園近郊の旧監視施設周辺の調査。
魔獣の動きが不安定になっているという報告があり、
念のための確認――という名目だ。
候補生の一人が、得意げに言う。
「どうせ、雑魚しかいないだろ」
「訓練より楽かもな」
笑い声。
だが。
「質問があります」
一人の生徒が、手を挙げた。
「監視施設が“旧”ということは、
現在は使われていないのですよね」
「そうだ」
答えたのは、同行予定の副教官だった。
「では、
結界や警報は?」
「――機能していない」
一瞬、空気が止まる。
「だが、危険度は低――」
「本当に?」
その生徒は、食い下がった。
「監視施設が放棄される理由は、
ほとんどが二つです」
「管理コストか、
想定外の事象か」
ざわり、と小さく空気が揺れた。
別の候補生が笑って誤魔化す。
「考えすぎだって」
「俺たちが行く前に、
教官が確認してるだろ」
副教官は、否定しなかった。
――肯定もしなかった。
その日の午後。
候補生たちは、任務用の簡易装備の確認を行っていた。
魔力通信具。
簡易結界符。
携帯用の治療薬。
どれも、最低限。
「……少なくないか?」
誰かが呟く。
「予備、これだけ?」
「学園の任務だぞ?」
副教官は、少しだけ言葉を選ぶようにして答えた。
「これは“調査”だ。
戦闘を想定していない」
その言葉に、
納得した者と、しきれない者がいた。
夕方。
候補生の一人が、
旧監視施設の資料を見つけてきた。
「……おい」
声が低い。
「これ、五年前の記録なんだけど」
皆が集まる。
「原因不明の魔力乱流」
「施設機能停止」
「調査班、撤退」
短い報告。
だが。
「……死者、なし?」
そう書かれていた。
副教官は、資料を閉じる。
「それ以上の情報はない」
「……撤退理由は?」
「記録されていない」
沈黙。
さっきまでの浮かれた空気は、
もう残っていなかった。
誰かが、ぽつりと言う。
「……これ、
思ってたより“外”じゃないか」
学園の外。
管理されていない場所。
想定外が起きても、
すぐに助けは来ない。
副教官は、静かに言った。
「だからこそ、
調査が必要だ」
その言葉は、
励ましではなかった。
事実の確認だった。
候補生たちは、
初めて理解し始める。
――任務とは、
評価を上げる舞台ではない。
生きて帰るための、
判断の連続なのだと。
その頃。
学園の別の一室で、
教師たちは別の話をしていた。
「候補生だけでは、
不安要素が多い」
「だが、
上級生を入れるほどではない」
短い沈黙。
「……補助要員を付けるか」
「雑用として、
自然な形で」
誰の名前かは、
誰も口にしなかった。
だが。
全員が、
同じ生徒を思い浮かべていた。
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