第12話 選ばれる側と、最初から数に入っていない側
学園外任務の話題は、思った以上に早く広がった。
朝の教室。
授業前だというのに、あちこちで声が上がっている。
「外の魔獣調査らしいぞ」
「危険度は低めだけど、実戦扱いだって」
「功績が残れば、推薦状も出るらしい」
――完全に、お祭りだ。
(へえ)
机に頬杖をつきながら、そんな感想を抱く。
危険度が低い。
実戦扱い。
推薦状。
どれも、俺には関係ない単語ばかりだ。
候補生として名前が挙がっているのは、
自然と決まっている。
成績上位。
魔力量が高い。
教師受けがいい。
つまり――
レオンだった場所に、別の誰かが座っている。
(椅子って、
空くとすぐ埋まるんだな)
レオンの名前は、もうほとんど出ない。
話題に出るとしても、
「最近、大人しいよな」
「評価落としたらしい」
そんな程度だ。
任務候補生の一人が、声を張り上げる。
「実戦だぞ?
無能が混ざったら、迷惑だろ」
笑い声が起きる。
俺の方を見る者もいたが、
すぐに興味を失った。
――最初から、数に入っていない。
(それでいい)
無能扱いは、楽だ。
期待されない。
比較されない。
失敗しても、誰も驚かない。
実技の時間。
候補生たちは、明らかに気合が入っていた。
動きが大きい。
声が大きい。
成功すれば、必要以上に目立とうとする。
(……空回ってるな)
ガルドは、表情を変えずに見ている。
「張り切るのは構わん」
淡々とした声。
「だが、
任務は見せ場ではない」
何人かの顔が曇った。
俺は、いつも通り基礎区画で訓練する。
派手なことはしない。
失敗もしない。
ただ、
“そこにいる”だけ。
昼休み。
例の平民の生徒が、また隣に座った。
「完全に、空気違うな」
「そうですね」
「任務、行きたいか?」
少し迷ってから、答える。
「……行ったら、
面倒そうです」
彼は吹き出した。
「それ、正解だと思う」
一拍置いて、少し真面目な顔になる。
「でもさ」
「?」
「選ばれるって、
必ずしも得じゃない」
その言葉に、少しだけ引っかかりを覚える。
「どういう意味ですか」
「さあ」
彼は肩をすくめた。
「俺も、なんとなくそう思っただけ」
放課後。
掲示板の前に、また人だかりができていた。
「学園外任務・候補者仮決定」
名前が並ぶ。
当然、俺の名前はない。
その下に、小さく一文。
「※補助・雑務要員は別途選定」
……ふうん。
(雑用枠、か)
視線を外し、歩き出す。
その背後で。
「雑用って、誰だよ」
「どうせ無能だろ」
笑い声。
俺は、振り返らない。
振り返る必要もない。
無能は、
そういう役割だ。
ただ。
事務棟の二階。
窓際で、
誰かがこちらを見ていた。
候補生を見る目ではない。
評価する目でもない。
――確認する目。
(……気のせい、か)
そう思うことにして、
俺はそのまま学園を後にした。
選ばれる側と、
最初から数に入っていない側。
今の俺は、
後者でいい。
そのはずだった。
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