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転生チュートリアル:俺は菌糸体になった

ニュース速報が、いつもの単調な日常を突き破った。


「…先ほど入った情報です。世界的なIT企業『ゼニ

ス・イグナイト』の創設者である、桐生きりゅう戒人かいと容疑者が、大規模な人体実験の疑いで逮捕されました。容疑者は、脳の神経細胞をネットワーク上に転送し、仮想空間で人間の意識を永続的に生存させるという、倫理的に重大な問題を抱える実験を秘密裏に行っていた模様です。

この実験には、すでに数十人が犠牲になっている模様。

ーーっつ、!!そして速報です。怪しい虫を見ると転生してしまうようです。そして転生した体は永久凍土としてその場に残る。と桐生容疑者は聴取室で話したそうです」


俺は、スマホの画面に表示されたニュース記事を何度も読み返した。記事には、容疑者が不敵な笑みを浮かべた写真が添えられている。

俺の人生は、この男が作り出したゲームで、とっくに詰んでいた。そうこの会社はゲームを作っている。このゲームで仕事も恋愛もうまくいかず、ただただ平凡に、惰性で生きてきた。そんな自分を変えたくて、何度も挑戦しては失敗し、そのたびに自信を失っていった。


いつの間にか、俺の心は、桐生カイトが実験で作り出そうとしたという、中身のない“意識”と変わらない。だから現実で死んでしまっても構わないと思っていた。


その日の夜。

いつもと同じ無機質な部屋のベッドで、窓を開け俺は眠りについた。寝てる時とてもいい匂いがした。とても心地よく、意識が飛びそうな良い匂いが。

次に目覚めた時、俺は自分が何者であるかすら分からなくなっていた。

視界は真っ暗で、耳に入るのは水の滴る音だけ。温度としては少し寒いくらい。手も足も、体の感覚が何もない。しかし、明確な意識だけは存在していた。まるで、暗闇の中にポツンと浮かぶ光の粒になったかのようだ。

「……何、だ?」

声を出そうとしても、音は出ない。ただ、思考だけが脳裏に響く。僕は混乱した。何が起きた?自分は誰?どうしてこんな場所に?


すると、頭の中に直接、誰かの声が響いた。

《ようこそ、被験体1232。貴方は今、**『異世界帰還』**と呼ばれる、倫理規程外の現象によるゲームによって、この世界に転生しました。このゲームはクリアすることによって解放されます。》

その言葉に、僕の思考はフリーズした。

《貴方の体は前世で永久凍土されています、貴方の意識は**『純粋な知性体』として、この世界に再構築されました。貴方には二つの能力が与えられています。一つは、周囲のエネルギーを「解析」し、己の力へと変えること。もう一つは、生命の危機に瀕した際、この空間に強制的に帰還する「知性回帰」**です。》

「知性回帰……?」

まるでゲームのチュートリアルだ。

俺の記憶の奥底で、何かがざわついた。

「地球の世界の僕ってどういうやつだっけ?てか地球ってなんだっけ?」

《貴方の目的はただ一つ。この世界を救うこと。そうしなければ、貴方の意識は永遠に消滅します。

さあ、ゲームの始まりです。

まず貴方の物語は、この洞窟からスタートです。》

遠くで、小さな光が瞬いた。それは、僕が今、知性体として存在する、ただ一つの根拠だった。僕は、その光に向かって、本能的に思考の力を向けた。

光に触れた瞬間、僕の体が構築されていく。それは、温かい土の感触と、柔らかな光の感触が混ざり合った、不思議な感覚だった。

やがて、俺はゆっくりと目を開けた。

視界に映ったのは、青く光る苔に覆われた洞窟の壁。そして、俺の手だ。それは人間の手ではなかった。壁と同じように、淡く光を放つ、**菌糸体きんしたい**のような、半透明の腕だった。

僕は自分の新しい体に驚きながらも、なぜか、妙な既視感を覚えた。

そのとき、ふと、桐生カイトという名前が頭に浮かんだ。そしてなぜかこの桐生にとてもイラついた。そして思う。こいつを倒せば俺は俺に戻れると。

彼は気づいていない。

自分が、

自分が、

自分が、

自分が、

自分が……

俺が、桐生カイトの実験体にされてしまったと。


そして、日本では——。

氷に閉ざされた“前世の肉体”が、眠るようにして冷たく残されていた。

それを知るものはまだ誰もいない。


ここまで読んでいただきありがとうございます!✨

第一話は「転生の導入+菌糸体の目覚め」でした。

主人公は人間じゃなく“人間に近しい菌糸体”という、ちょっと変わった存在として物語を歩んでいきます。

これからどんなスキルを得て、どうやってこのゲームをクリアするのか”ぜひ見守ってください!


もし「続きが気になる!」と思っていただけたら、

ブックマークや評価⭐️を入れていただけると、とても励みになります!

感想もぜひお待ちしています!


次回は「初めてのスキル獲得」から始まります。

どうぞお楽しみに!


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