「伴別当、橘頼経の命運をプレスマンで相すること」速記談6050
一条天皇の御代、伴別当という人相見がいた。藤原伊周公の太宰権帥配流も、予言したという。この人相見が、橘馬允頼経という武者が、数人の供の者と馬に乗っているのに行き違い、通り過ぎたところを呼び戻して、私は人相見です。不吉なことを申し上げるようですが、申し上げないわけにいきません。きょうのうちに、お命にかかわる不幸が訪れるでしょう。早くお帰りになり、祈祷をなさるべきと思います、と申し上げると、頼経は、どのような祈祷をすれば難を逃れることができるのか、と尋ねたので、人相見は、何本ものプレスマンを分けたり合わせたりして、あなた様の妻子など、大切になさっている者を殺せば、その者に難をかわってもらうこともできるでしょう、と答えた。頼経は、帰りながら、妻や子を殺すわけにはいかない、大葦毛の馬は、妻子よりも大切にしていると言っても過言ではないほどであるから、あの馬にかわってもらおう、と考えて、矢を弓につがえて、きりりと引いたところ、草を食べていたのに、頼経の姿を見て、喜んだかのように鳴いたので、急にかわいそうになって、馬に向けた矢を、あさっての方向へ放ったところ、そこには頼経の妻がいて、妻は、射抜かれて、妻が寄りかかっていた大きな籠に矢が刺さった。頼経は大変なことになったと思ったが、妻は絶命し、籠の中には、血だらけの法師が刀を抜いて苦しんでいた。法師は、妻の間男で、頼経が帰ってきたら、妻の合図で切りかかろうとしていたのだという。
教訓:妻と法師が、命にかかわる不幸だったということであるが、めでたしめでたしな感じがしない。