5.騎士様と令嬢
「コリーナちゃん~!荷物のお片付けも終わったのね?よかったわ。えーっと、色々と皇城内を案内するわね?というか、ここまでよく迷わずに来れたわね!流石だわ」
「第3騎士団所属のダガーズと仰る騎士様にここまで案内していただきました。着いてすぐにどこかへ行ってしまったので、ろくにお礼も言えてないのですが……」
「コリーナ嬢、我が国に第3騎士団というのは存在していない。ダガーズだったね?あの、イタズラもの。―――かなり年が離れている私の弟だ」
「「ええぇ??」」
さすがに驚きました。何時でも淑女の仮面を被っているようにと心掛けていたのですが、流石に大声を出してしまいました。お恥ずかしい限りです。
「家名がなく平民という挨拶でしたけど?」
「家名…国名が家名か?明らかに平民じゃないぞ?王家だ。あぁ、騎士の格好をしているからな。今は騎士団で剣術を磨いているところだ」
王弟でしょうか?一芸がないと寄生してるみたいに国民に見られますからね。剣術を磨いているのでしょうね。
「彼に無礼を働いていなくてよかったです」
「私はあいつがコリーナ嬢に無礼を働いてなくて良かったと思うよ」
それから、ルナと一緒にシーラ様に皇城を案内してもらっていた。誰かとすれ違う度にシーラ様が「私の姪のコリーナちゃんよ~。美人でしょ~?これからしばらく皇城で暮らすことになったの。よろしくね~!」と言って回っているのです。
誰彼かまわずに言っているので、高位貴族の令嬢にも顔バレしたわけで……。学園に通う前から彼女たちに目を付けられたのです。彼女たちはなぜ皇城にいるのでしょう?
「皇城にいる貴族令嬢の目的~?多分ね、彼女たちの目的は近衛騎士との縁じゃないかしら?運(?)がよければダガーズ様♡ みたいなね」
邪な目的。でも、それ以外に目的はないかなぁ?皇城にある図書室の利用とかも考えられますけれども?
しかしながら、すれ違った令嬢は皆様ドレスアップなさっていたので、とても本を読むようには見えませんでしたね。どちらかと言うと、これから誰かのお茶会に参加―――という方が説得力があります。
「残念よね~。騎士様達は今の時間なら鍛錬中かしら?皇城の敷地内にある別棟の闘技場で」
―――本当に廊下で偶然の出会いを画策している令嬢達が不憫です。
「闘技場は関係者以外立ち入り禁止なのですか?」
「変にスパイとか入られると面倒だから、基本的には皇帝の許可が必要よ。でも、私とかコリーナちゃんなら顔パスで行けそうだけど?」
行きませんよ。
「あ、ダガーズ様にはこの間のお礼を申し上げたいですね」
「では、案内がてら闘技場の方に行きましょうか!」
シーラ様は楽しそうです。
「ここが、闘技場よ~」
見るからにそうでしょうね。遠目でも闘技場だなってわかります。闘技場って何で遠目でも分かるようなフォルムの外観なんでしょう?
「何故、貴族令嬢様達は『闘技場の外で待ってる』みたいなことはしないのでしょうか?」
「え~だって、ずっと立ってるのは疲れるし。日に当たって日焼けでもしたら大変!『屋内で運命的な出会い』の方が都合がいいんでしょう?いろいろ」
なるほどねぇ。まぁわかりますけど、そのようなことをして家に来る縁談話を断っていましたら、気づいたら独り身で婚期を逃すって事もあり得えますのに。彼女たちの婚期は大丈夫でしょうか?騎士様が責任を取ってくれるわけではないのに……。
コリーナちゃんはなんか余裕だなぁ。