2.コリーナの決心
帰宅後、夕食の席でお父様とお話をした。
「先日は王太子に婚約破棄を宣言されて申し訳ありませんでした」
「いやいや、あれが人間のミテクレだけで人を判断していることがわかったからいいじゃないか!お前は眉目秀麗で才女の自慢の娘だというのになぁ。あとから、すいませんでしたとか言ってももう嫁にやらんぞ! ハハハッ」
いつものことですが、豪快ですね……。
「それでですね。婚約も破棄されたことですし、今日は眼鏡を外して学校に行ったんです。三つ編みのままですよ?それでも、手のひらを返したように令息たちからの扱いが変わって正直不愉快でした。何より、学園の先生の態度まで変わったんですよ?信じられない!」
「それほどお前が魅力的だという事だな。しかしまぁ、面倒な事だ。お前は不愉快なんだろう?いっその事、隣国のリーク帝国にでも留学するか?お前の学力なら余裕だろ?それにお前は王太子教育で他国の語学も堪能だ」
「構いませんか?お父様にもなかなか会えないのですが?お父様は一人になってしまいますよ?」
私は食堂にドーンと壁一面にいろんなポーズをとったお母様を描いた肖像画を見ながら言った。
「私にはこのお前の亡き母の肖像画がある」
たまに話しかけていることを私は知っている。―――多分邸の人間はみんな知ってる。
「では、早速明日からは留学の支度をしますね!留学にはルナを連れて行きますよ。向こうにホウジョウ家のタウンハウスはありましたっけ?」
「確か、国が違うからなぁ……。お前の叔母にあたるリーク帝国に嫁いだ妹のシーラに速達で手紙を送ろう。手を貸してくれるはずだ」
叔母さまはリーク帝国の皇妃……。敷居が高い感じがするけど、公爵家の女の子だったらそんな感じかな?
あら、私も公爵家の女の子だわ。
それで、あの王太子妃になるところだったのか……。あの方は人を見た目で判断するからいつか痛い目に遭うわね。というか、国として大丈夫かしら?心配だわ。お父様達家臣たちが頑張っているんでしょうけど、それにも限度があるでしょうし。
~数日後
「お嬢様!待望のシーラ様からのお返事です!」
その手紙には、『リーク帝国に来るの?きゃ~!!可愛いコリーナちゃんに会える!ああ、もう美人さんなのかしら?成長したものね。タウンハウス?そんな他人行儀なこと言ったらオバサン悲しい!泣いちゃうかもよ?是非是非王宮で寝泊まりしてちょうだい!不自由はさせないわよ!』と叔母様の筆跡で記してありました。筆跡まで可愛らしい方なのですね……。
「……ルナ、どう思う?」
「シーラ様に悪気はないんですよ?それはわかるんですけど、王宮から学園に通ったとなると当然注目されるでしょうね」
「そうよね。それにね?留学したら眼鏡も三つ編みもやめて、素の自分で行こうと思ってたの。それだけで注目なのに、王宮から……」
「セキュリティの面では抜群ですね。お嬢様の容姿だと、普通の家なら無理矢理襲われかねませんよ」
「そっかぁ。王宮暮らしかぁ。お父様に相談しましょう。なんでもお父様に相談するのってお父様依存症みたいね?」
「依存症というより、ファザコンかと……あっ、聞き流してください!」
しっかり聞いたわよ!『ファザコン』ねぇ。確かにね。まぁお母様がいない分お父様に頼っちゃってるのかしら?
シーラ様可愛い‼ それとは対照的に侍女のルナはいつも冷静ですね。あ、コリーナちゃんが詰られた時は怒ってましたね。