18.初・デート
「そうですね。数回しか会った(見た?)ことがないのに、「好きだ」という方がおかしいですよ。お嬢様の見た目しか見てないんですよ。そりゃあお嬢様は麗しいですよ?どんな華もお嬢様の前では枯れてしまいます。そう思えば、ダガーズ様の対応は非常に誠実ですね!私は好感が持てます」
まあ、私は見た目だけで『好き』とか言われたくないから、ダガーズ様の対応は非常に有難いです。
「今度の週末にピクニックの予定なんですけれど、私はどのような準備をすればいいかしら?」
「週末ですもの。お嬢様はピクニックに持って行くお弁当を用意するのがいいと思いますわ!」
「……ダガーズ様がお弁当を持ってくるかもしれない…」
いつも一人ランチタイムを過ごすダガーズ様が脳裏に浮かびます。
「ダガーズ様は騎士ですもの。たくさんお召し上がりますよ!お嬢様が作ったって何にも問題ないですよ!ところで、どこへ行くのですか?」
―――行き先を決めていませんでした……。
「へっ?どこにいくのか決めていないんですか?どういうことでしょう?ダガーズ様がサプライズをなさるつもりでしょうか?私にはわかりかねます」
私もわからないです。雨天でも関係がないところでしょうか?
ピクニックと言うからには屋外?
天候はその日にならないと分からないですからね。
「私にできることは、今週末に向けて肌のコンディションを整える事と天候の様子を窺う事です!どちらも全力で取り組みましょう!」
「ダガーズも果報者だよなぁ、コリーナ嬢みたいな美人に一目惚れされるんだから」
「あら、皇帝に似ているから男前なんですよ。加えて騎士ですもの。体もガッシリとしているでしょう?コリーナちゃんの心を鷲掴み!」
「ダガーズは今週末にコリーナ嬢をピクニックに誘ったらしい」
「まぁ、初デート?コリーナちゃん、上手く行くといいわねぇ~。そしたら……コリーナちゃんが義妹?きゃー!可愛い妹~‼」
「―――義妹だからな」
皇帝夫妻がこんな風に話しているとも知らずに週末を迎えた。
天候は―――大荒れ。
「コリーナ嬢、今日のピクニックは中止しましょうか?」
なんてもったいないことを!これが惚れられているという余裕なんですか?
「いいえ、どこかで必ず!」
王宮の中庭―――雨風に晒されてしまう。
王立図書館なんか飲食禁止。
かといって、皇城の場所によってはダガーズ様が幼少の頃より慣れ親しんだ場所。
一体どうすればいいのでしょう?
「コリーナ嬢、温室に行きませんか?温室なら、飲食自由ですし。ああ、野菜の種みたいなものは落とさないように指導はありますけど、その程度です。他の食べ物については言ってしまえば、肥料になりますからね」
私達ふたりは王立の温室へと行きました。
「はぁ~、あったか~い。そして珍しい花がいっぱいね。こんなことなら花言葉とか勉強すれば良かったわ」
「コリーナ嬢は向上心もお持ちのようだ。花を見て『キレイ』では終わらないのですね」
普通の令嬢は花言葉も知っているものだと思っていたのですけれど違うのかしら?
「あ、私は差し出がましいのですが、ランチにお弁当を作ってきました。全部私のお手製です!ダガーズ様もお弁当を持参でしょうか?」
「持っていないが何故?」
「普段、いつも弁当持参で生活をなさっているからです。私はダガーズ様とランチをとりたかったのですが、ダガーズ様はいつも弁当を持参なさっていて……」
「ああ、前日の夜の残り物を箱に詰めてもらったやつのこと?弁当というのか?主食が足りないよね。主菜はあれども主食はないんだよ……」
「えーっと作ってらっしゃるのは?」
「俺が入ってる寮の料理担当の方。見た目はごつくて、何人か素手で殺してそうだけど、作る料理は繊細でスゴク美味しいんだ」
「それは私も食べてみたいです!」
「今日、弁当を持って来てるから、それとコリーナ嬢が作ったやつを交換しよう!あ、俺の方には主食を提供してほしいよ。何しろ昨晩の残りものだからなぁ」
「まぁ」
なんだかんだイイ感じでピクニック(のようなもの)はできた。―――と思うのです。
よかったね、コリーナちゃん。今後の約束もできたし。




