12.コリーナ嬢の欲
「いつも思うのですが、お嬢様は無欲でいらっしゃる……」
「そうかなぁ?私にだって欲は存在しているわよ!そうねぇ?王宮生活において、明日の朝食はなんだろう?いつも美味しいわよね、楽しみだわ~。という食欲」
「……」
なんだかルナが思っていた答えとは違っていた様子。
よく聞くと、権力とか金銭欲といったものだそうだけど……。
権力は、実家が公爵家だし叔母様はリーク帝国の皇妃でいらっしゃいますし。
金銭欲に関しましても、公爵家で特にこれ以上の金銭は求めていませんし?
私は向上心が足りていないのでしょうか?
もっと権力を、お金を!と欲を求めていった方がいいのでしょうか?
「お嬢様……。そうではなくてですね、何かを成し遂げた結果が権力だったり、金銭だったりすることはままあるのです。そのことに何も言う事はありませんが、目的と手段が違うとおかしくなるので心に留めて下さい。権力を振りかざすとか、お金をばらまいて言う事を醜聞を揉み消すとかそういうことはおやめください」
それはいけないわね。
やってはならないことだし、なんだか醜いわ。
「今回はですね、お嬢様の意見だったはずの意見を学園長の名前で発表することになったのです。権力欲の強い方だと『これは自分が言った意見であって、学園長独自の意見ではない』と主張するでしょうね」
「そうね、それは理解できるのよ。でもルナ、会議の場にも参加しないただの小娘の意見だとその意見も軽視されてしまいかねないわ。私としては、学園長の名前で出すのがベストな選択だったと思うのよ。たとえそれが事実とは違うものだとしても―――」
「そうですね、お嬢様の意見が軽視されるのは私としても本意ではありません。意見が通る事が重要ですから、今回はやはり学園長の名前で会議に出したことは良い選択だったと思います。この件については陛下も思う所がおありのようでしたから、お嬢様が文でも書くのが最良かと思います。朝食の場で議論をするのはおかしいですからね。さ、お嬢様湯浴みをして就寝の時間です。何か気を落ち着かせるお茶でも用意いたします。その間に、湯浴みをしてください」
ルナのおかげで、その日はゆっくりと睡眠することができた。
「お嬢様、朝ですよ。今日も学園に行かなくてはなりません。さあ起きて支度を致しましょう」
***
~ルナ視点
わかりました。お嬢様の致命的弱点。それは、年頃の令嬢としてはかなり珍しく―――恋愛に関しては全くのド素人―――なのです。
純潔を守る事は貴族として、大事ですけれどもそれとは別に欲がない。令嬢と恋バナだとか誰が素敵だとかそんなお話をされているのを耳にした事も目にした事もありません!
これは、ホウジョウ家としてどうなのでしょう?お嬢様は次女だから問題ないのでしょうか?そうではなく、まさかの行き遅れ……。そんなことはあるとは思いませんが、お嬢様にいつ春が訪れるのでしょう?お嬢様なら、「冬の後に決まってるじゃない!」とか言いそうです。
まさかの弱点発覚です!




