10.弁当騒動
その日より、毎週末私の料理が皇帝夫妻の胃袋に入る事となった。
包丁も使えるようになり、ルナには「お嬢様は料理も上手なんですね!」と言われた。
―――上手というか出来るようにしたんだけど。
「ねぇ、ルナ?明日から学園には‘お弁当’というものを持って行こうと思うの」
「オベントウ?」
「ランチに食べるのよ。少量ずつ弁当箱というものに入れて持って行くというように何かの文献で読んだわ」
「お嬢様は博識でいらっしゃるのね」
「お弁当に入れる料理だって自分で作ればいいし。ランチでカフェを利用していると、いろんな視線が来て、食事がしにくいのよ」
相席希望の人が殺到するし、なんだか睨んでくる視線を感じるし。―――とにかく一人で食べたいのよ!
―――しかしながら、私のこの『お弁当を持参する』という行動は学園にお弁当ブームを巻き起こすこととなりました。
「コリーナ=ホウショウ。学園長がお呼びです」
ふぇ?私は平穏に学園生活を送りたいのですが、何か問題が?
「失礼します、学園長。コリーナ=ホウショウです。私が何かしたでしょうか?」
初老、よりちょっと若い男性が学園長のようです。
「あー、君は優秀で何かをしたというわけじゃないんだがね?」
この時点で私は安心した。
「君が始めた『弁当を持参する』という行動なんだが―――カフェの収支が上手くいかなくてなぁ」
昼食分の収益がマルっと無くなったみたいな感じですしね。
「私はどうしたらいいでしょう?えーと、弁当を持参するようになったきっかけは『静かに食事をしたかった』なんですけどね。こんなことになるとは」
弁当を持って令息が近づいて来たりするのよね。
「ではこういうのはどうだろうか?コリーナ嬢が生徒会メンバーになることが前提なんだが……」
成績的にはOKでしょう。
「コリーナ嬢は優秀ですし、生徒会としては大歓迎だ(多分)」
「つまり、生徒会室で弁当を食べるという事ですか?」
「それなら、知ってる人間だけが入ってこれる空間だからコリーナ嬢の迷惑にならないだろうと私は思う」
「その生徒会メンバーなのですが、反・現皇帝派閥の人間がいると聞いています。その中での活動は上手くいかないでしょう」
「成績だけなら文句はないのだけれどなぁ」
「それだと、カフェの使用者が増えるとは言い難いかと思います。弁当で持ち歩きが不可能なものを‘売り’にするのです。例えば、飲み物ですとか。試験前は無理かもですけどデザートですとか?」
「ふむふむ。そうだなぁ、カフェ自体の使用率を上げることが目標だからな。よし、コリーナ嬢の意見も参考に会議を開き、今後に繋げよう!」
「お役に立てればと思います。ではこれで失礼いたします」
長かった……。
学園も経営が大変なんですね。結局はお金…




