2-2 【告白の先に、背徳】
「海道君!ちょっと良いかな。。」
いつもは、特に話かけて来ない人からの急な問いかけに正直少し戸惑いを見せる海道。
「吉村さんだよね...?あまり話す機会がないからびっくりしちゃった。でも話は、いつも希から聞いてるよ。」
そう。海道は希の彼氏である。
「あの、あのね。私から話があるの。」
「うん。どうしたの?...できれば希から変に誤解されたくないから長くなるのは嫌なんだけどいい。?」
そう言うと、少しかったるそうに話を聞こうとする彼の顔を見れば結果は聞かずとも分かったようなものだが紬は続けた。
「簡潔に言うとね。私、海道君の事が好きなんだ。」
結果が見えているだけあって案外、あっさりと言えて少し自分に驚いた。
「んで、俺にどうして欲しいの?」
「今は、希と付き合っているの分かってるから、どうして欲しいとかは無いんだけどね。。その。」
「んーと。今、俺に告白する事で、自分の気持ちに終止符を打とうかと??」
「うん、そんな所。巻き込んでごめんなさい。」
「ふーん、、」
海道は、クスっと笑いとんでもない事を口にした。
「こんな事で、気持ちの整理って付くもんなの?これ、俺の連絡先。今度の休みに一度出かけない?一度、思いっきり遊んで、楽しんで。良い思い出にすれば諦めって付くんじゃないかな。」
そう言って、電話番号の画面を紬に見せて一度ワンギリをかけさせお互いに連絡先を登録した。すると、紬は不安そうな顔をする。
「いいの?それで、もし希にバレたらやばいんじゃないの?」
紬としては、希が大事な友達である以上、中途半端な事をして裏切るような事は、したくない。しかし、紬も思春期、真っ只中の女の子。正直に言えば、目の前の相手は、好きな男の子。このチャンスに飛び込まない理由など、何一つとして無い。
「本当にごめんなんだけど、ちゃんと諦める。ちゃんと諦めるから一度だけお願いします。」
「それじゃあ、決まりね。次の土曜日、駅に朝の9時でも良いかな?それと、SNSの交換はトラブルになりそうだから、したくないんだけど。メッセージとか通知で読めちゃうし」
「うん、わかった。SNSは聞かないよ。諦める相手の連絡先を聞いた所でってのもあるし。本当にありがとう。それと、ごめんね。」
「困った時は、お互い様だから。それに、希の友達なんだから悩みは、無視できないし。それじゃぁ。。今日はこんな所?」
「うん。じゃあ土曜朝9時に駅前で。」
「じゃあ戻るね。吉村さん、またね」
紬は、手を振り解散した後に希の所に戻った。
「紬の好きな彼、何て言ってたの??」
希は興味津々に前のめりになって聞いてきた。
紬は正直、なんと説明をしたら良いか困った顔をした。諦めるためのデートをしてくれる事となったと言えば、場所や時間を聞いて偶然を装いながら、こっそりと後を追っかけてくるに違いない。
「ふられっちゃったんだ。まぁ彼女いるから当たり前ではあるよね。」
「そっかぁ。」
希は背中を押しただけに、少しだけ罪悪感で複雑だった。
「それじゃぁ、今日は放課後、カラオケ行こう!そんでマグロ行ってモール行ってアイス食べながら帰宅!!」
「放課後にそんなに詰め込めるかなぁ」
「行くの!!!」
希は瞳を潤ませながら目を見つめ力強く誘ってくれた。
”希の友達想いな所が本当に好きだ。”
そう思ったと、同時に紬は心底消えたい気持ちに襲われたが、【海道君とのデートの日】、という背徳的な楽しみが紬の心を救った。