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雨のあとには  作者: 斗口なな
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蒼空は自分のイライラを自傷することにより心の平穏を少し取り戻した。


「駄目だなぁ。今のままじゃ。。」


蒼空は、しっかりとした一家の大黒柱となるべく丁寧に段階を踏んで結婚をする事にこだわるがゆえに、紬の、人生観?考え方?を変える為には、どうすべきかを1人で悶々と考えながら朝を迎えた。食卓にはいつも電話の時に使っている小さなメモ用紙に、「行ってくるね。朝ごはん温めて食べてね!」の一言が書いてあった。朝は早いのに、ごはんを作ってから出勤をする姿を想像して蒼空の心が温かくなった。


「まずは、ちゃんと2人で将来について話をしないとなぁ。それで、今の考えの甘さを少しだけでも分かって貰えればいいな。。」


温かいスープを飲みながら今日の仕事の予定を立てる。本当に贅沢である。


「さてと」


紬の優しさを感じ、よりいっそう気合も入り、首を左右にひねって首筋を伸ばしリラックスしてから書斎で仕事を始めた。



ーー ピンポーン ーー

仕事もはかどり、丁度お昼に差し掛かる頃、インターホンのチャイムが鳴る。


「はい...」                 

「こんにちは~。あの、紬んの中学校の時の同級生の希です。」

「のぞみ...さん? ちょっと待ってください。今出ます」


蒼空は玄関に向かう途中に、過去に紬から中学時代の話をちらっと聞いた覚えはあるが余り覚えていなかった。


「すいませんおまたせしました。紬いま留守にしてて。今日はどうしたんスか」


扉を開けるとオフショルダーにスカートの、この後デートにでも行くのかというような服装のロングヘアーの女性が待っていた。



「えっと。中学時代のメンツで同窓会やるって話が出たんでその案内ついでに顔でも見ようかと思って来たんですけど...仕事みたいですね」

「そうなんだよね。紬は隔週で土曜日仕事入ってるんだよね。連絡してから来れば次は確実に会えると思うよ?」

「出来たら、それが一番良いんですけど。携帯の引継ぎを失敗しちゃったみたいで。紬んの連絡先が消えちゃったと言うか。。」


ある程度、社会人を経験してしまったから、なのか。蒼空は心の中で少し引っかかった。


「それなら、紬の番号教えるけど?」

「いや、大丈夫です!さすがに本人の許可なしに勝手に聞くわけには、、。」


もともと知っているのなら別に問題ないだろうと思ったが、理詰めをして気まずくなるのは避けたい蒼空は、この後どうしたものかと困った表情をする。


「あの、提案なんですけど。連絡先を私に教えても良いか聞いてみてオッケーだったら紬んの連絡先を私に教えてください。」

「んーと、俺が希さんに連絡するっていっても、、ん?どーいう、、」

「私、蒼空さんのネコスタのアカウントを蒼空さんの後輩経由で知ってるんで、、んんと。フォローしました!」


ネコスタは今、老若男女ではやっているSNSだ。蒼空は、あまりの手際の良さに見た目通りのコミュ強な人なんだなと少しビビったがコミュ障特有の、何でもない表情を作った。


「分かったよ。聞いてみるね。今日は紬不在で悪かったね」

「いえ!紬んによろしくお伝えください!またっ」


軽く手を振り希を見送り再び仕事スイッチを入れる為にシャワーを浴びコーヒーを飲みながらスマホでメールのチェックをしていると、ネコスタのDM通知が来て希だと、すぐに分かった。


【先ほどは、急にお邪魔してしまい、すみませんでした(汗)ちなみに紬んは何時頃、家に帰って来るか分かりますか?】

【定時は17時なんだけど、いつも17時30分には家のソファーには座ってるかな。俺はいつもその時間帯に風呂に入ってて出たら、リビングで待ってる感じ】

【そうなんですね!家に帰ってすぐに夕ご飯の準備かぁ。良い奥さんになれますね!】

【うちは、いつも交代制だよ。今日は俺が作るんだよね】

【あら。稼いでご飯も作れるなんて何て優良物件!】

【なんだよそれ(笑)】

【蒼空さん、またあとでね(笑)】


一通り仕事を終わらせ、お風呂も沸かし最後の任務である晩御飯づくりに取り掛かる。

今日は、握り寿司を握り、日本酒でも飲みながらゆっくり食べ少しづつ話を進める作戦にした。


すし酢の香りと新鮮な刺身の輝きに心を弾ませながら大皿に盛り付け日本酒と御猪口を食卓に置き、お風呂に向かった。


「蒼空~!!ただいま!!!」


脱衣所の扉を少し開け、声をかけた


「おかえりー!今日はお寿司だよー。あと10分したら出るからー」

「まじ!?やった!ゆっくりはいってあったまって!」

「さんきゅー」


シャワーの音にかき消されないように、お互いに声を張ったからなのか、2人の気分が乗ってくる。

ちなみに、早めにお風呂に入る蒼空とは対照的に紬は寝る前に、お風呂に入る派だ。そのほうが確実に寝やすい為、紬はいつもそうしている。


紬は豪華な食卓を眺め感動した後に、カバンをテレビ台の前に置きソファーに座った。

いつも帰ってからソファーに座って蒼空を待ってる間に頭のスイッチを仕事からプライベートに切り替える。



”てれれれれれ↓てれれれれれ↑。。。てれれれれれ↓てれれれれれ↑”



ん?蒼空のネコスタの着信なってる。蒼空ってネコスタで電話するっけ...?

そんな事を思いながら画面を覗くと、【tachibana₋nozomi】からの着信だった。

一度鳴りやみ、スマホを手に取り興味本位で開いてみると、DMのやり取りが出てきた。


「なにこれ、、、」


再び着信が鳴り、紬は思考のスピードより速く、反射的に電話に出る。


「お湯加減は、どうですか~!直接聞いた方が早いなって思って、かけちゃいました。」




「希、、、何、、??どういうこと。?」




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