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ずっと依存し続ければ良いのに

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

何かから離れる時って、何時も同じなんです。

雪が溶ける様に、消えて無くなるんです。

「私以外の事を考えて、大人になる儀式、したでしょう」

涼しい風が吹き抜けるその場所に腰掛けていると、不意に顎下と頭を手で固定される。視線の先には綺麗な顔の方がいて、怪しげに此方を見据えていた。

「ううん。大人になる儀式だけじゃない。自立、しようとしてるでしょう? 」

「してますよ。そんなに悪いことでしょうか?

……最近、ずっと考えているんです。もしも突然、両親が居なくなったら? 会社が倒産したら? 貴方様に見捨てられたら?」

飼い猫と言うのは、ずっと子猫気分のままらしい。人間という親に飼われるから、縄張りから追い出される事も、食いっぱぐれる事もないから、ずっと甘えん坊なんだそうだ。

じゃあ、飼い主が死んだら? 捨てられたら? 喧嘩の仕方も、狩りの仕方を知らない。だから路頭に迷うだけ。そんな飼い猫と、今の私が重なった。ずっとずっとずっと、私は依存し続けている。両親に、会社に、神様に。だから、何時関係が切れても良いように、地に足を付けなくては。

「お金を……稼がなくては……。そうすればきっと、大体の事は何とか……」

現実的な言葉が思わず口をついて出た。その私の発言を、余りにも冷ややかな顔でお受けになられる。そしてそのまま、私の目尻を親指でグリグリと回される。

「目を失ってる。だから私にとっては物凄く悪いこと」

その痛いところを突かれた。思わず口を噤む。

昔はよく此処に来ていた。休みの度に此処を訪れて、自分から抱き着いて頬を擦り寄せていた。でも最近になって、とんとご無沙汰になった。呼ばれないと来なくなった。

基本的に、神様の寵愛というのは極端なものである。好きも嫌いも、人の規格では測れない。だから勿論、この執着心も人の心で測れるものではない。

「君が自立したいのは、捨てられるのが怖いから? でも先に捨てたのは君の方じゃないか」

「……っ」

『違う』と否定出来れば、どれだけ良かっただろう。けれどもそれは余りにも地に足が着きすぎた、冷たい現実だった。

「もう忘れてしまっただろうけれど、お金を稼ぐ理由を君はこう答えたんだ。『此処に来続ける為』。あの頃は無邪気な子供のそれだった。それなのに今は……」

もう一度、顎下と頭上に掌が乗り、上を向いたまま無理矢理固定させられる。それから静かに顔をお近付けになられて、こう仰った。

「ずっと依存し続ければ良いのに」

ブームが過ぎ去る時って、何時も同じなんですよ。

雪解けの様に、溶けて無くなるんです。

後に残るのは淡い記憶だけなんです。


予期不安を覚えて、より確固たる物を求めていたら、大切なものまで忘れてしまった話。


これは私の勝手な考えなんですが、神様にとっての氏子というのは、子供も同然なのではないかと。

でも物の考え方、感性が余りにも違い過ぎるから、人間視点で言うと、子供というよりも飼い主と猫に近い気がします。

だから出て行くこと、離れることを拒む様な気が。


最近はとんと、目を失ってしまいました。

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