表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/260

92 不動産取引

 アルパの街における拠点を拡大するべく。俺は塩を売った大金を持ち、サポート役の商会の人を伴って、お隣の買収に向かう。


 商会の前で冒険者の子達と別れ、俺とシーラ、商会の人の三人で意気揚々と……どこに行けばいいんだろうね?


 不動産屋? この世界にあるの? お隣に直接乗り込む? でも最近人いるの見た事ないよね?


 ……一歩目で早速つまずいた俺は五秒ほど途方にくれた後、商会の人に声をかける。


「あの、物件を買うのってどうしたらいいんですかね?」


 初歩の初歩の質問である。


(コイツそんな事も知らずに元気よく店を出たのか……)というちょっと冷たい目をしながら、商会の人が答えてくれる。


「商業地であれば商業ギルドの管轄ですから、まずはそこへ行って状況を確認するのがよろしいかと」


 おおなるほど、商業ギルドか! ……どこにあるんだろう?


「ねぇシーラ、商業ギルドの場所知ってる?」


「はい、ご案内します」


 商会の人の(コイツ大丈夫か?)という視線を感じつつ、シーラの案内で西の方へ歩く。この街は基本、西に行くほど色々高級な地区だから、商業ギルドはいい場所にあるのだろう。


 ちなみに冒険者ギルドはやや東寄りである。集まる人の層を考えると、自然とそうなるんだろうね……。



 そんな事を考えている間に、街でもかなり西寄り。旧領主館の近くまでやってきた。


 旧領主館には帝国から派遣された役人……時代劇風に言えば代官がいて、帝国兵もいるので、正直あまり近寄りたくない場所だ。


 だけど今はそんな事を言っていられないので、なるべく目立たないように、そっと商業ギルドの門をくぐる。


 受付にいた若いお兄さんに用件を告げ。(かわいいお姉さんだと帝国兵に絡まれるからかな?)と嫌な想像をしながら少し待っていると、しばらくして個室へ案内された。


 ちょっと豪華な部屋なのは、受付でサポート役の人が商会の名前を出したからだろう。さすが街一番の商会だ。


 個室で待つことしばし。姿を現したのは、中年の眼光鋭いおじさんだった。


 商談の相手だと手強てごわそうだけど、今回は交渉要素はないと思うので、気楽に話を向ける。


「今日は建物の取得をしたいと思って来ました」


「――うかがっております、場所はどちらですか?」


 中年の男性は見た目子供の俺に対しても丁寧な態度で、テーブルの上に街の地図を広げる。プロの商人って感じがするね。


「ここの建物なのですが」


「なるほど……そこは今空いているので問題ありません。ですが先ほど『建物の取得』とおっしゃいましたが、この国の土地制度をご存知ですか?」


「あ、いえよく知りません。教えて頂けると助かります」


「では簡単に説明いたしましょう。まず、この国では一般人の土地所有は認められていません。全ては国か領主の所有であり、使用権を得て地代を払う形になります。これは帝国領となった今も変わりません」


「なるほど」


「ですから、『建物の取得』という表現は必ずしも間違いではありませんが、正確には『土地使用権の取得』となります。そこに建物が建っている場合はその使用権も得られますから、『建物の取得』とも言えますが、所有権が得られる訳ではない事はご承知置きください。建て替えや改築は自由ですけどね」


「わかりました」


「では具体的な話に入りますが、この土地ですと使用権の取得に200万ダルナ。使用料が年間300万ダルナとなります」


「使用料と別に税金がかかったりしますか?」


「決められた税金はありませんが、臨時の徴税が行われる事はありますので、備えておくのがよろしいでしょう」


 なるほど……年間300万ダルナは結構な大金だけど、家賃と税金だと思えば許容範囲だろう。臨時徴税は……まぁしょうがない。


「わかりました、ではそれでお願いします。……使用権の取得料は今ここで払えばいいですか?」


「そうして頂けると助かります。使用料も一年分をまとめて前払いして頂く決まりですので、今月分はおまけするとして、来月分以降の150万ダルナを頂きます」


 ……サポート役の商会の人がなにも言わないので、これはそういう決まりなのだろうし、金額も妥当なのだろう。


 使用権取得料と今年の使用料、合わせて350万ダルナを払うと、すぐに使用許可証的な書類を作り始めてくれる。


 来年からは冒険者養成所運営経費の一部として計上するので、エリスに伝えておかないといけないね。


 ――そんな事を考えていると、書類を作り終わった商業ギルドの人が、言いにくそうに口を開く。


「これで今日から使って頂く事が可能ですが、その……おそらく近日中に兵士を連れた役人がそちらを訪れて、あれこれと文句をつけてくると思います。100万ダルナほどを渡せばすぐに帰りますから、大人しく払う事をおすすめしておきます」


 おっと、これは穏やかではない話だ。


「それは帝国の役人と帝国兵ですか?」


「はい」


 そうか……賄賂わいろなのかタカリなのか微妙なラインだけど、ホント帝国はロクな事しないね。


 そして帝国の役人や兵士がやって来るというのは、冒険者や候補の子達の境遇を考えるに、大変よろしくない。実際もうすでに、後ろに立っているシーラさんから殺気を感じるしね……。


「俺はその時いないかもしれないので、先にお金を渡して話を通しておいてもらう事はできませんか?」


「可能ですよ。どうせ払わなければいけないのならと、そうした先例もあります」


「ではお願いします」


 そう言って、手間賃も含めて110万ダルナを追加で渡す。帝国の関係者には来て欲しくないもんね。



 それで話はまとまり、同行してくれた商会の人にはお礼として食事をごちそうし、ついでに買い物もして宿へと帰る。


 エリスとメーアとセファルさん……さん付けで呼んだら『配下になったのですから』と言われて呼び捨てにする事になったセファルに隣の建物を取得した事を伝え。対応をお願いする。


 建物はエリスの宿屋より広いけど、冒険者見習いの子達に手伝ってもらえば掃除なんかはわりとすぐ終わると思う。


 そういう作業は人数が正義だからね。あとは必要に応じて使ってもらえばいい。


 一部を商会の出張所にする事や、それに絡む業務も伝え。多分大丈夫だと思うけど、万一帝国の役人や兵士が来た時の備えもしておいてもらう。



 そうして街でやる事を終えた俺は、今回最後の目的であるメープルシロップを売るためのビンを確保するべく、クレアさんに相談をするために中州の拠点へと向かうのだった……。




帝国暦165年6月14日


現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・2037万ダルナ(-473万)追加で1600万入る予定

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 2330万ダルナ@月末清算(現在5月分まで)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×30


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

ティアナ(エリスの協力者)

クレア(協力者・中州の拠点管理担当)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ