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86 冒険者養成所二期生募集計画

 馬車四台と俺達は夕暮れ頃に川に到着し、その日はそこで一泊する事にする。


 この川をさかのぼった所に中洲の拠点があるけど、馬車は道以外を進めないからね。


 シーラと冒険者の子数人が狩りに出て、他の子が手際よく夜営の用意を整えてくれる。


 手慣れたもので、もうすっかり一人前の冒険者だね。実に頼もしい。


 安心しながらその日の夜は馬車の荷台で眠りにつき。翌朝早速、シーラが冒険者の子達から力に自信がある子を五人。それとメルツを連れて、中州の拠点へ塩を取りに行ってくれる。


 俺と冒険者の子二人、それとメーアは残って馬車の番と、朝食作りだ。


 塩300キロは七人でも一回では運べないので、二往復。一回目と二回目の間に朝食を食べて、お昼前には馬車四台に積載が完了した。


 商隊の護衛任務のついでに、表向き何事も経験だからと言って。


 実際には商隊の人達の印象を良くして仲良くなるために、荷物の積み下ろしも手伝っているそうで、種類の違う馬車四台に適切に荷物を分散積載する手際は大したものだった。


 これなら、復讐を遂げた後の第二の人生も商隊員としてやっていけるだろう。


 俺が馬車に乗るスペースはなくなったので、いつも通り歩きながら。ちょっと嬉しい気持ちで街へと向かう……。



 アルパの街に着いたら、冒険者カードがあっても馬車が街に入るには税金がかかるそうで、一頭立ての馬車は銀貨三枚、二頭立ては銀貨五枚で、合計16枚を払い。そのまま商会へと向かう。


 前庭に馬車を乗り入れると、働いていた商会の人達が冒険者の子達に『よう!』とか『今日は休みじゃなかったのか?』とか、親しげに声をかけてくれる。


 関係が良好そうでなによりだ。


 塩を店内に運び入れてもらう間に俺とシーラはいつもの店員さんを探し、塩100袋を持ってきた事を告げると、なぜか顔色が変わった。


 次々に積み上げられていく袋をしばらく呆然と見つめ、他の店員さんが中を確認している間に『少し失礼します』と言ってどこかへ行ってしまった。


 お茶を出してもらえたので、シーラと二人テーブルでのんびり過ごし。商会の人達と礼儀正しく話をしている冒険者の子達を見るが、やはりまだ人と話す時は少し固い気がする。


 商会の人達も家族をなくした元孤児だと知っているので、つとめて明るく接してくれているようだけど、冒険者の子達が礼儀正しいというのは、見方を変えれば壁があるという事でもある。


 あくまで一定の距離感を保って対応している様子を見て、家族を失った心の傷は深いんだなと改めて悲しい思いに浸っていると、いつもの店員さんが小走りで戻ってきた。


「あの……塩の買取についてなのですが、全部で3120万ダルナになります。ですがその……今すぐご用意できる金貨が28枚しかなく、残りは銀貨でもよろしいでしょうか?」


 ああなるほど、手持ち資金の確認に行っていたのか。


 ……確かに3100万ダルナは大金だけど、街最大の商会ならそのくらいの手持ち資金はあっても良さそうなものだけどね?


 帝国に占領されたせいで商売がしにくくなったり、税金も上がったらしいから余裕がないのだろうか?


 そんな考えが頭をよぎるが、とりあえず今はお金がもらえるのならそれでいい。


『問題ありませんよ、よろしくお願いします』と返事をすると、店員さんはホッとした表情をしてお金を取りに向かってくれた。



 ……そんな訳で、金貨が28枚と銀貨320枚を手にした俺は、馬車の返却を冒険者の子達に任せて、エリスの宿屋へと向かう。


 エリスの手持ち資金もかなりギリギリなはずなので、早く届けてあげないとね……とその前に、シーラへの借金返済か。


「シーラ、これ借りてたお金。ありがとう」


「差し上げてもよろしかったのですが」


「そこは一応きちんとしとこう……また借りる可能性もあるかもしれないし」


「わかりました」


 そんなやり取りを経て400万ダルナを返済し、残りは以前からの手持ちと併せて2772万ダルナ。以前の教訓からちょっと多めの、金貨3枚と銀貨10枚310万ダルナを手元に残し、後は活動資金にする。


 エリスに渡す分と、メルツに渡す冒険者見習いの二期生を集める費用。馬や教材は使い回せるとしても、個人装備の武器やよろいは新しいのを用意しないといけないので、その費用も。


 軍隊を組織するというのは本当に手間とお金がかかる事なのだと、改めて実感させられる……。



 宿でエリスにも加わってもらって、シーラ・メルツ・メーア・エリスで会議を開き、新しい人員を集める費用や装備の調達費もエリスがまとめて管理してくれるとの事だったので、お金はまとめてエリスに預ける事にした。


 俺はこっちにいない時が多いので、正直とても助かる。エリスはホントに頼りになるね。


 人数が増えた場合の費用は装備も含めて見当がつくけど、人集めにかかる費用は未知数なので、その辺はエリスとメルツで相談してもらう事にする。


 孤児院にいる子なら引き取るに当たって孤児院に寄付をした方がいいだろうし、路地裏でホームレスをしているような子でも、残していく仲間が心残りな場合なんかは、その子達もまとめて引き取ってアルパの街の孤児院に預かってもらう事になるだろうから、それはそれでお金がかかる。


 他には、よくない里親の元にいる場合なんかも、引き取るのにお金がかかりそうだ。


 交渉はメルツに任せておけばいいとして、帝国に対する強い復讐心を持った子の見分けは、エリスの提案でララクに同行してもらう事になった。


 エリスの見立てによるとララクの観察眼は鋭く、同じ境遇にある子を。家族の敵討かたきうちを胸に秘める子を的確に感じ取るだろうとの事だった。


 それが本当なら一番観察眼が鋭いのはエリスな気がするが、それはまぁ置いておいて、ララクを同行者にする方向で話を進める事にする。


 商隊の護衛が一組だけ六人になってしまうけど、大きな問題はないそうだし、本人も嫌とは言わないだろうとの事だ。


 なにしろ、帝国軍の隊列に向かって石を投げた子だからね……帝国に対する復讐心は人一倍だろう。



 そんなこんなで話は迅速にまとまり、可能な限りのお金をエリスに預けた俺は、また北の拠点に戻る事にする。


 その前にエリスと日程を調整し、六日後から六日おきに一泊、中州の拠点に泊まりに行ってもらう事にする。


 ティアナさんは塩20袋。ざっくり60キロを担いで四日半で北の拠点と中州を往復できるとの事だったので、一泊二日エリスと一緒に過ごせるようにするためだ。


 往復の護衛はメルツにお願いし、その合間に人探しをやってもらう事になる。


 行動を共にするララクにも一緒に護衛をやってもらい、中州への物資補給も兼ねてもらう事になった。


 ――そうなると、今まで補給をお願いしていた人の仕事がなくなる訳だけど……。


 オークとゴブリンにさらわれたクレアさん達にあまり偏見を持たず、仕事とはいえ接触を続けてくれた人だ。


 なんだかいい協力者になってもらえる気がするので、北の拠点に帰る前に一度会ってみたい。


 最初に仕事を依頼したシーラに紹介をお願いし、俺達はその日の夕方、冒険者ギルド近くの酒場へと向かうのだった……。




帝国暦165年5月16日


現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・310万ダルナ(-16万 +3120万 シーラに借金返済-400万 エリスに2462万)

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 2720万ダルナ(+2462万)@月末清算


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×6


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

ティアナ(エリスの協力者)

クレア(協力者・中州の拠点管理担当)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当)

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