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84 新しい商品候補

 子供達を冒険者として護衛任務に送り出す段取りを整えた後、俺は一旦北の拠点に戻る事にする。


 護衛任務の結果は気になるけど、早く次の塩を輸送しないと資金が枯渇しちゃうからね。


 実際シーラからお金を借りているから、すでに枯渇状態みたいなものだけど……。


 そんな訳で、後の事をメルツとメーアとエリスにお願いし、万一に備えて三人に一本ずつエルフの村製の傷薬を渡しておく。


『上級傷薬ではないけど、高い効果がある』と説明しておいたけど、実際どのくらいの効果があるかは、試した事がないのでよく分からない。


 エルフの村の人が『腕の欠損くらいなら回復する』と言っていたけど、それはエルフに使った場合の話で、人間への効果は未知数なのである。


 さすがに効かないって事はないと思うので、なるべくよく効いて欲しいなと思うばかりだ。


 怪我なんてしないのが一番だけどね……。



 という訳で、俺とシーラは中州の拠点に戻り。中州の拠点管理者として残ってもらうクレアさん他二人を残して、北の拠点を目指す。


 前回中州に残ると言った人達も心の整理がついたのか、北の拠点に行くと言ってくれたので、残留メンバーはクレアさんに選んでもらった。


 ティアナさんが建物の改修とかをやってくれたので、前より快適に暮らせると思う。



 山越えは順調に進み、今回は荷物もないので三日で大山脈を踏破できた。


 最初に山を越えた時は五日かかったので、体力の回復が感じられるね。


 北の拠点に戻った後は、とりあえずティアナさんに塩の輸送をお願いする。


 アルパの街へ塩を運ぶのに、毎回全員で移動するのは大変だし塩の生産も止まってしまうので、普段はティアナさんに中州の拠点まで運んでもらい、たまに俺とシーラが行ってアルパの街まで運ぶ計画だ。


 北の拠点には最低一人は護衛がいるので、普段はシーラ。俺とシーラが街に行く間はティアナさんにお願いする。


 ティアナさんには中洲に行った時にエリスと会えるようにする予定だけど、調整が必要なのでしばらく待ってもらうとして、『山越え一人で大丈夫ですか?』と訊いてみたら、『誰に言ってるの? 鳥に「空飛べますか?」って訊くようなもんだよ』と言われてしまった。


 なるほど人間には危険極まりない大山脈だけど、エルフにとっては日常生活の場だもんね。


 エルフの村を追放されて以来、10年くらい一人で生活していた訳だし、そりゃ余裕だろう。


 むしろ護衛対象の俺達がいない分、自由に行動できてペースが速いくらいだ。


 ……という訳で塩の輸送は任せて、北の拠点ではいつも通りの塩生産に当たってもらう。


 みんな俺の指導がなくても作業をこなせるようになっているので、俺はシーラと二人で拠点の周りを見て回る生活だ。


 目的の一つは、瘴気しょうきが消えた事で狂暴な魔獣が戻ってきていないかの確認。


 そしてもう一つは、新しい商材探しである。


 塩は有力な商材だけど、あればあるだけ無限に売れるという品ではない。


 人口一人当たり一日5グラムか10グラムか、多分その辺が限界だろう。


 将来的に販売地域を広げるにしても、海が近い所では売れないだろうし、この先北の拠点の人数が増えたら、生産過剰になってしまうかもしれない。


 なので何かないかと探し、山に詳しいティアナさんにも訊いてみたが、今の所成果はかんばしくない。


 エルフは元々、必要な草木や果物、動物以外は採取しないので、宝石や金属の鉱山なんて知らないのだそうだ。


 まぁ、知っていても奪い取る形になったら揉めそうだから、それはそれで問題だけどね。


 ――逆に考えれば、鉱山を発見できれば利益を独占できる訳だけど……素人が適当に山を歩いて発見できるほど都合よくはないよね。


 将来的に帝国と戦う時に備えて、火薬があればいいなと思って材料探しもしてみたが、硝石はおろか硫黄もない。


 この大山脈は火山ではないみたいだね……まぁ仮に硫黄があっても、硝石とかよく知らないから探せないけどさ。


 そんな事を考えながら、晴れた日は当てもなく山を散策し、たまにシーラが動物の気配を察したら、狩りをして食材を確保するという生活を送っている。


 狂暴な魔獣はまだ戻ってきていないようで、平和な生活だ……。




 そんなある日。山の中を歩いていたら、ふっと見覚えがある枯葉が落ちているのに気が付いた。


 モミジの葉を大きくしたような感じで、どこで見たんだったかな……と記憶を辿っていたら、しばらくしてピンと来た。これ、カナダの国旗に描かれているやつだ。


 小学生の頃、意味もなく国旗とか首都の名前とか覚えていた記憶が蘇ってくる。


 ……そしてその葉っぱは、たしかカエデの葉。それもサトウカエデと言って、樹液からメープルシロップが採れる木のはずだ。


 多分似た種類がいっぱいあるから、今俺が持っているのがサトウカエデの葉かどうかは分からないけど、似た種類ならそれなりに樹液が採れるのではないだろうか?


 ダメで元々なのでとりあえずやってみようと思い立ち。シーラから短刀を借りて木の幹を傷つけてみると、みるみるうちに透明な液体が染み出してくる。


 指ですくってめてみると、ほのかに甘い気が……しないでもない。


 毒だったら嫌なので一旦吐き出し、傷をつけた所を見ると、わりと多量に樹液が滲み出てきている。


 ……これを集めて煮詰めて濃縮すると、メープルシロップになるという事でいいのだろうか?


 そしてメープルシロップができたら、商品になるだろうか?


「ねぇシーラ、甘い食べ物ってなにがある? お菓子とかじゃなくて、食材で」


「……ハチミツや、干した果物などでしょうか」


 なるほど。皇帝だった頃の俺の記憶でも砂糖を見た覚えはないし、貴族の令嬢だったシーラも知らないとなると、この世界の甘味はハチミツとドライフルーツだけだろうか?


 ハチミツと若干被る気はしないでもないが、メープルシロップ、売れるかもしれない。



 その日は一旦拠点に戻り、塩の輸送から帰ってきたティアナさんに訊いてみると、『甘い物といえば干した果物だね。樹液? そりゃ甘いかもしれないけど、カブトムシじゃあるまいしそんなもの舐めないよ』と言われた。


 どうやらエルフにとっても未利用であるらしく、手探りになってしまうが、本当にメープルシロップならお金になる気がする。


 元の世界でも昔は、『コショウ一粒は金一粒、砂糖一袋は銀一袋』なんて言われた事もあったと聞く。


 オーバーな表現だろうとは思うけど、ともかく貴重な物だった事は間違いない。商売の臭いがする。




 ……そんな訳で、塩の在庫はかなり貯まっているので、翌日は塩の生産をお休みして、みんなでメープルシロップを採りに行く事にした。


 ティアナさんからノミとハンマーを借りて、樹液を採る用のといを作ってもらい、いつもは海水を汲んでいるバケツを持って、全員で山に向かう。



 メープルシロップ、商品になるといいなぁ……。




帝国暦165年4月25日


現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・-332万ダルナ (手持ち68万とシーラに400万借金)

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 661万ダルナ@月末清算


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×6(-3)


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

ティアナ(エリスの協力者)

クレア(協力者・中州の拠点管理担当)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当)

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