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73 移住者

 アルパの街に戻った俺達は、予定より一日早く。ティアナさんとエリスの元へ向かう。


 俺の姿を見たティアナさんは(なにしに来た、まだ一日あるだろう、もしかしてもうエリスを連れて帰るつもりか、許さんぞ)みたいな視線を向けてきたが、『ちょっと相談があって来ただけです』と言うと、警戒を解いてくれた。


 エリスガチ勢過ぎてちょっと怖い。


「相談なんですけど、人間の女性を最大30人。北の拠点まで連れて行きたいと言ったら可能ですかね?

 身体能力は俺くらいで考えてください、戦闘能力はありません」


「……アルサル君、ハーレムでも作るの?」


 ――口に水でも含んでいたら盛大に吹く所だった。変な事言わないで欲しい、俺はシーラ一筋なのに。


「作りませんよ、塩作りを手伝ってもらうんです。全員女性なのは、たまたまそうなっただけです」


「たまたま30人全員ねぇ……まぁいいけど、ちゃんと指示に従って動いてくれるなら問題ないよ」


 ……なんか信用されてない感じがするけど、今は置いておこう。


「じゃあ正確な人数は未定ですけど、予定しておいてください。

 拠点に着いたら食べ物や住む所で色々お願いをする事になると思いますので、そっちも」


「うん、了解」


「お願いします」


 そう短く話をして、嬉しそうにエリス達の元へ戻っていくティアナさんと別れ。俺達は森と草原の境界まで戻って、西へ向かう。


 クレアさん達を街に連れて行く訳にはいかないので、北へのルートはここを通る事になると思う。その下見だ。


 ……数時間歩くと川にぶつかり、川沿いに下っていくと見た事のある中州なかすが見えてきた。


 シーラの知識も借りて簡単な地図を作り、今日はそのまま南下して、街道経由で街に戻る。


 川はそこそこ流れがあったものの、滝とかの障害はなかったので船を使った荷物輸送もできそうだ。


 中州か川の上流に拠点を作って、北の拠点から街に塩を運ぶ中継地にするのもアリかも知れない。


 中継地までなら、信用できる人を置いておけばエルフのティアナさん単独で荷物を運んでもらう事も可能だからね。


 ……そんな事を考えながら街に戻り。一泊すると、今度こそエリスを迎えに行く日だ。


 またティアナさんに嫌な顔をされるかなと思ったが、約束の期日に帰してくれる事に関しては納得済らしく、寂しそうな表情こそされたが、特に抵抗なくエリスと父親を連れ帰る事ができた。


 エリスにも簡単に事情を話し、メルツ達野外実習組が帰ってくるのを待って、メルツとも話をしておく。


 中州の拠点に食料や日用品を届けるのはシーラが雇った冒険者がやってくれているらしいが、シーラが北の拠点に通うようになってからはメルツに雇用を委託しているのだそうだ。


 その辺の調整をし、資金はシーラが冒険者をやっていた頃に稼いだお金から出していたのを、俺の出資に変更する。


 シーラは自分がやった事だから自分が出すと言ったけど、帝国への反抗計画に組み込んでしまった以上、俺が出すのがすじだと思う。


 何人が北の拠点に来てくれて、何人が残るかは分からないけど、今はある程度食料が自給できているので、仮に全員残っても輸送費込みで月120万ダルナあれば足りるのだそうだ。


 ……遺憾ながら今の手持ちは100万ダルナしかなかったので、エリスにお願いして冒険者養成所の運営資金から出してもらう事にする。


 こちらは資金に余裕があるので、多分大丈夫だろう。


 ちょっと情けない事になってしまったが、まぁ結果オーライだ。


 それにしても、食料生産が軌道に乗る前は結構な出費だっただろうに、シーラ冒険者としてどれだけ稼いでたんだろうね?


 そのまま冒険者をやっていた方が資金を稼げたとかにならないよう、塩の大規模生産頑張ろう。


 そう決意を新たに、街での段取りを終えた俺達は北に向かい、その日のうちにティアナさんと合流した。


 今日はもう遅いのでティアナさんの仮住まいで一泊させてもらい、中州の拠点へは明日行く事にする。丁度約束の三日目だ。


 エリスとエリス父が昨日まで使っていたのだろう寝床をいとおしそうにで、綺麗に整えるティアナさんを見ながら、俺とシーラは枯葉を敷いた仮の寝床で一夜を過ごす。


 さすがに家族の空間に入り込むのは無粋ぶすいだからね。




 ――そして翌日。ティアナさんを加えた俺達三人は西へと進み、川沿いに中洲の拠点を目指す。


 シーラによるとこの辺りに来る人間はめったにいないらしいけど、念の為ティアナさんには森の中で待機してもらい、俺とシーラの二人だけで川沿いを下っていく。


 隠してある小舟で川を渡ると、日程を伝えていたおかげか、クレアさんが出迎えに来てくれていた。


「お久しぶりです……移住希望の方はいましたか?」


「はい、すでに用意を整えて待機しています」


 おお、すごく段取りがいい。やはりできる人だ。


「何人くらい来てくれそうですか?」


「私を含めて21人。4人は残るそうです」


 お、結構な人数だ。将来的にここを街と北の拠点をつなぐ中継地にするなら何人か残ってもらった方がいいので、理想に近い。


 ……そしてちょっと嫌な考えが頭をよぎるが、シーラはオークとゴブリンの巣穴に囚われていた女性の数を『30人ほど』と言っていた。


 今ここにいるのは、移住してくれる21人と残る4人で25人……あまり深くは考えないようにしよう。


「参考までに、残る人達の理由を訊いてもいいですか?」


「全員、故郷に未練があるようです。家族が……幼い子供がいた子達ばかりですから、少しでも故郷に近いこの場所から離れて、遠い北の地に行くのは抵抗があるようです」


「なるほど……」


 俺が信用されてないとかじゃないのは良かったけど、重たい話だ。


 移住してくれる人の中にも家族や子供と離れ離れになっている人が何人もいるはずなので、この先なるべく幸せな人生を送れるよう、俺の責任は重大だ。



 そう張り切って村まで進み。住民のみなさんと顔を合わせた俺は、全員の目が光りなく淀み、顔色も悪くせているのを見て、(そうか、まずは立ち直らせる所からか……)と、現実の厳しさを前に考えを改めさせられるのだった……。




現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・100万ダルナ

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 2287万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×9


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

ティアナ(エリスの協力者)

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